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20、ヒロイン、覚醒①

人気ひとけのない高架下の舗道を歩いていると声をかけられた。

「あれ、牧野じゃん。不登校中の横山までいる」

 面白いものでも見つけたような底意地の悪い口調には聞きおぼえがあった。そちらに目をやると、クラスの不良三人娘、猫藤、犬塚、牛島がいた。高架下は、橋脚があるだけの殺風景な空間で、三十メートルほど先にいた奴等が近づいてくる。派手なスウェットやジャージを着ていて、ニヤニヤ笑っている。背後には黒い鬼オーラが三体浮かんでいる。鈴ちゃんが青ざめているのがわかった。グリップをきつく握りしめて緊張している。背後の女の子の顔がひび割れていく。見ているだけでかわいそうだ。反面、人を傷つけておいて反省もせず、勝ち誇っているヤンキーに対しての怒りがふつふつと湧き上がってくる。

「お前らみたいないい子ちゃんが、夜中に外を出歩いてちゃ駄目だろ」

「横山、お前、出歩けるんなら学校来いよ」

 ゲラゲラ笑っている奴等、見てるだけで腹が立つ。スタンドを起こして、自転車を止めると、四、五歩前に進んで腕を組む。奴らを見据みすえながら、こう言い放った。

「派手なだけのダッセェ服着たお前らなんかに、好き勝手に言われる筋合いねえんだよ。バーカ!」

 一瞬立ち止まったが、言われたことを理解した途端、

「てめえ!」

 と三人ともブチ切れた。瞬間湯沸かし器のような性格を、地で行くヤンキーが突進してくる。背後の鬼オーラと体が重なって、頭からオーラの角を生やしたまま、まさに鬼の形相で睨んでいる。

「リカコちゃん……」

 少し離れたところで鈴ちゃんが不安そうに呟く。それでも私は平気だった。この自信はどこからきているのか、フッフッフッフッフッ、もちろん元・白ヘビであり、現在の相棒、白龍からであった。あの凶悪オーラを喰いちぎり退治した白龍なら、三人娘の鬼オーラなんか、いとも容易たやすく喰い散らかして不良娘どもを倒してくれるだろう。ハッハッハッハッハッ、楽勝である……の、はずだった。

 リーダー格の猫藤は途中から歩き出して様子見ようすみをしていたが、残りの二人は突っ走り続ける。三十メートルあった距離は二十五メートル、二十メートルとあっという間に縮んでいく。もしもーし、私は白龍に心の中で呼びかけたが、当の白龍は周辺の空中をゆったりと泳いでいる。不良娘の鬼オーラを攻撃する意志すらも感じられない……マジっすか? とんだ大誤算! そうこうしているうちに、一番手の犬塚が突進してきた勢いのまま右ストレートで顔面を殴りにきた、ありったけの増悪をこめて。今までの私なら、殴られる恐怖心から反射的に目をつむり、両腕で顔をガードしながら真後ろによけていただろう。目を瞑っているので、敵がガードしている顔を避けて腹部を殴ってきても対応できない。そしてパンチの軌道上の真後ろによけるので、殴られることは避けられない。いけないと頭では分かっているが、格闘技素人なので体はそのように動いてしまう。ところが私は、目を開けたままファイディングポーズをとり、犬塚の右ストレートを見極みきわめてくぐると、左フックを犬塚の腹部にめりこませた。ダメージに耐えられない犬塚の体が沈んでいき、その顔面を右フックで打ちぬくと、横に吹っとんだ犬塚がそのまま路上に倒れ込む。


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