15、鈴ちゃん、暴走す④
「鈴ちゃん、自転車止めて、お願いだから止めてくれる」
金色の目をこちらに向けて、私である事を認識すると、鈴ちゃんはブレーキをかけて止まってくれた。
「びっくりした。リカコちゃん、なんでいるの?」
「鈴ちゃんと話がしたくて」
鈴ちゃんは頷くと自転車から下りた。私たちは二人して自転車を押して歩きはじめる。前後に十リットルのガソリン携行缶を乗せて、二往復目の運搬をしている鈴ちゃん。ハンドルがふらつく事もなく軽々と押している。まるで重い荷物なんかないように。その体力を与えている山羊頭を見つめると、相手も私と白ヘビを見ていたが、大して興味は無さそうだった。私たちのような雑魚を相手にする気はないらしい。驚いたのは、この凶悪オーラ、身長が二メートルぐらいまで伸びている。鈴ちゃん家で見た時より二十センチは大きくなっている。体育館放火を決行する朝までに、どれだけ巨大化するのか想像すると背筋が凍りそうだ。何としても今のうちに鈴ちゃんを思いとどまらせないといけない。
「電話で話してた、体育館に火をつけるって本当?」
「うん」
「いつから計画してたの?」
「実行する気は全然なかったんだ、前にも話したと思うけど私、武器になるものを手に入れて、それを使って復讐しているところを妄想するんだけど」
私は頷く。鈴ちゃんがボーガンを自宅で射ってるのもそれだ。
「学校そのものが、私をいじめて傷つけている原因を作っているから、学校に復讐する方法を妄想してたら、学校にいる人間まとめて攻撃してやろうって思ったの。でもアメリカみたいに銃を乱射できないし、どうしようかと思ってたら、ガソリンがあるじゃんって思いついて。それでガソリン携行缶を買ったの。お父さんのバイクからバレない程度のガソリンをぬいて、携行缶の中に溜めていったんだ。その時でも本当にする気はなかったよ。妄想を楽しむためにもリアルに準備する必要があるからね。だから防火服も買ったの」
「防火服?」
「そう、ガソリンって、放火する本人も火だるまになるくらい危ないから、ネットで買ったんだ。消防士も着ている本物のヤツ。私、小学生の頃から貯めているお金が三十万円くらいあるから、それで色々買ったの。今日の夕方、リカコちゃんが不良共にひどくやられた事を聞いたら、どうしても許せない気持ちが爆発して、実行する気になったんだ」
午後十一時過ぎの夜の舗道を、女の子が二人、自転車を押して歩いている。小柄でアイドルのように可愛い女の子と、長身でモデルのように美しい女の子の会話は、恋や夢についてのキラキラしたものがお似合いのはずなんだけど。




