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クラスメイトは異世界王女  作者: くまひこ
第1章 亜人解放戦争

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第9話 帝国総督府の戦い(前編)

 さやかとの通信を終えた俺は、ドルマン王家墓所の地下にある兵士詰所で出撃の時を待つレジスタンスのリーダー・ハウルに自衛隊側の戦況を伝えた。


「我々の主力部隊は奇襲作戦に成功し、帝国軍ドルマン前線基地は大破してその機能を喪失。現在は残敵掃討作戦に移行中です。その生き残った帝国兵のうち、基地幹部と思しき集団を帝国総督府に誘導することにも成功した模様」


 それを聞いたハウルは、しばらく言葉が出てこなくなるほど驚いた。


「・・・本当なのかそれは。作戦が開始されたと先ほど報告を受けたばかりなのに、もうあの巨大基地を陥落させてしまったのか。・・・だとしたら我々もすぐ作戦を開始しなければならんな!」


「その方がいいと思います。さやかによると、レジスタンス各部隊の奇襲も成功したようで、街の各所から次々と火の手が上がっている様子。また輸送船に侵入した敦史たちも拉致女性の救出に成功し、今は港に駐留する帝国軍との戦闘に突入しています」


「各地の戦況をそこまで詳細に把握しているとは、恐るべきは魔族の魔法か」


「我々は魔族ではなく普通の人間で、これは魔法ではなく科学。それに俺がここに帯同しているのも、まさに全ての戦況をハウルさんに知らせるためですから」


「そうだった・・・助力に感謝する」


 ハウルは恐怖に顔を強張らせながらも、ここに待機する全てのレジスタンス兵士に向けて号令を発した。


「帝国総督府への攻撃を開始する。全員突撃せよ!」




            ◇




 地下の隠し通路を、レジスタンス兵士たちが列をなして進軍していく。


 その目的地は1階大ホール、地下の兵士詰所・武器庫、そして上階の総督府幹部居室の3か所となるが、最も多くの兵力が投入されるのが1階大ホールだ。


 それはこの場所がもっとも広く、総督府つまり旧王城ではこのホールが政治の中心で人が集まるように導線が設計されているため、必然的に両軍の兵力がぶつかり合う主戦場となるからである。


 そして俺たち3人は調整役を果たすために、司令塔であるハウルやその幹部たちと行動を共にしている。そのハウルたちが向かった先こそ、主戦場となる一階大ホールの最奥、王家の玉座があった場所だった。


 この玉座の背後の壁面に、帝国軍も気づくことのできなかった隠し通路の出口があったのだ。




 一階大ホールに一番最後に到着すると、戦いは既に混戦状態になっており、両軍が入り乱れての激しい戦闘が繰り広げられていた。


 剣と剣がぶつかり合い、生身の人間が血しぶきを上げて床に倒れてのたうち回る。


 その圧倒的な現実感に俺は軽いめまいを感じながらも、背後にいる二人に大声で指示を出した。


「俺たちはここに戦いに来たわけではない! だからアリスレーゼは絶対に俺の前に出るな。そして彼女の背後はヒッグスが守れ!」


「承知いたしました、瑞貴」


「御意!」


 だがアリスレーゼは、俺への返事とは裏腹に静かな闘志を燃やしていた。


 悲鳴と怒号が飛び交うこの戦場で、小声で呟くその言葉を俺は聞き逃さなかった。


「あの憎っくきグランディア帝国に、ようやく一矢報いる時が来ました。お父様、お母様・・・あなたたちの娘は必ずお二人の仇を取ってご覧に入れます」


「アリスレーゼ・・・」


 そっと後ろを振り返ると、彼女にしては珍しく帝国への憎悪を顕わにしており、その後ろのヒッグスまでもが獰猛な笑みを浮かべて、その目は帝国軍を真っ直ぐ捉えていた。


 俺自身、何の罪もない多くの日本人を惨殺した帝国に対して憎しみを感じてはいたが、この二人の場合は肉親が殺された上に祖国まで滅ぼされたのだ。


 それだけ帝国に深い怨みがあるのだろう。


「アリスレーゼとヒッグス・・・気持ちは分かるが、あまり入れ込み過ぎるな。何度も言うようだが今回の俺たちの役目は戦闘ではなく、全体の調整役なんだ」




 だがその言葉をあざ笑うかのように、俺たちの目の前に新たな敵が登場する。


 大ホール上部の巨大なステンドグラスが外から破られると、空中を浮遊しながら7人の魔導師が侵入し、レジスタンス兵士たちに魔法攻撃を開始したのだ。


 魔導師たちは強固なバリアーで地上からの攻撃を弾き返しつつ、空中から一方的に魔法攻撃を繰り出す。そんな彼らに対しレジスタンス兵士は、一方的に虐殺されるただの「的」でしかなかった。


 阿鼻叫喚のレジスタンス兵士たちに、だが幹部たちは必死に抗戦を呼びかける。


「あれは誘きだされた魔導部隊の一部が帰って来ただけだ! 想定内の事象であり作戦には影響せん!」


「矢を集中させて敵のバリアーを打ち砕け!」


 それでも魔導師たちに傷一つ与えることができないレジスタンス兵士たちは、敵の魔法攻撃を受けて次々と倒れていった。

 

 その状況をとても見てられなかった俺は、


「前言撤回だ! あの魔導師は俺たちが倒すぞ!」


 俺がそう叫ぶと、アリスレーゼが力強く頷いた。


「ええ! わたくしたちなら必ず勝てます!」


「ああ、俺たちなら勝てるはず。だが、俺は本格的な魔導師と戦うのは今回が初めて。だからあの河川敷で戦った時のようにアリスレーゼのサポートが欲しい」


「もちろんです! では瑞貴の頭に直接指示を送りますので、わたくしの言う通りに動いてください」


「頼む! それからヒッグスはアリスレーゼを絶対に死守しろ。彼女に指一本触れさせるな!」


「承知した! 王女殿下のことはこのワシに任せて、ミズキ殿は敵を倒すことだけに専念して下され!」





 俺はハウルたち幹部を後ろに下がらせると、魔導師たちの注意を引き付けるために、頭の中に聞こえるアリスレーゼの指示通りに彼らに向けて叫んだ。


「帝国などと詐称する、盗人王国グランディアの三流魔導師ども! この王城は、我々ティアローズ王国とドルマン王国連合軍が取り返させてもらう。悔しかったらこの俺を倒してみやがれ!」


 アリスレーゼの指示とは言え、こんな幼稚な煽り文句に釣られるバカがいるのかと思っていたら、俺の方を一斉に向いた魔導師たちは、背後のアリスレーゼを見つけてその目の色を変えた。


「あれは魔界に囚われているはずのアリスレーゼ王女じゃないのか? なぜ我が総督府にいるのか分からないがこの幸運を絶対に逃す訳にはいかん! すぐに王女を保護して我らの手柄とするのだ!」


 結局煽り文句なら何でも良く、アリスレーゼは自分が囮になって魔導師の攻撃を引き付ける作戦だったのだ。


 そんな7人全員がターゲットを俺に定めると、詠唱の終わった者から魔法を撃ってきた。


(瑞貴、最初の魔法は火属性魔法のメガファイヤー。単純な火球攻撃ですが火力がケタ違いです)


(火球だな、了解!)


 アリスレーゼはマインドリーディングで魔導師たちの思考を読むとその魔法の種類を把握し、自身の豊富な魔法知識を活かして攻略方法を決定し、俺の頭の中に直接送り込んでくる。


 俺は彼女の指示に従って思念波デバイスを握り締めると、コンパクトだが強固なバリアーを展開して猛然と迫りくる火球を打ち返した。


 バリアーをテニスラケットに見立てて、真芯で捉えたその火球は俺のオーラを吸収してその火力を増し、ライナーで術者の魔導師に命中した。


「うぎゃーーーっ!」


 アリスレーゼによると、魔法を発動した直後はバリアーが一時的に弱まるらしく、その僅かなタイミングに合わせて打ち込んだ火球をもろに受けて全身を炎に包まれた魔導師は、浮力を失ってレジスタンス兵士たちの中へと真っ逆さまに落下していった。


 そして憎しみに燃えた兵士たちによって、あっという間に撲殺されてしまったが、そんなことをイチイチ気にかける間もなく、アリスレーゼの魔法の知識が俺の中に絶えず流れ込み、次の魔導師の攻撃に頭を切り替えなければならなかった。


(次は水属性のスプラッシュカッターです。そしてその後すぐに風属性のエアーブラストが続きます。気を付けて瑞貴っ!)


(ああ、任せておけ!)


 スプラッシュカッターは超高圧水流で金属をも切断する魔法らしいが、水の弱点は熱だ。


 俺は思念波補助デバイスで高エネルギープラズマを発生させると、その水流を瞬時に蒸発させた。そしてその時に爆発的に発生した水蒸気で、後に続く風魔法エアーブラストを対消滅させて、余剰水蒸気を思念波バリアーで魔導師たちの方に誘導した。


 すると、魔法を発動した直後の二人の魔導師がバリアーで防ぎきれずに水蒸気をまともに喰らった。


「ぎゃあーっ!」


「熱い・・・助けてくれ!」


 浮遊魔法が解けて落下していく二人の魔導師を待ち受けていたレジスタンス兵が、獲物に群がる狼のように力任せに二人を撲殺していく。


 それを目の当たりにして恐怖する残りの魔導師は、それでも俺に対する攻撃の手を緩めない。


(今度は土属性魔法メテオ。それから雷属性魔法メガサンダーが続けて来ます!)


(おう!)


 メテオは、岩盤を空中から落下させて地上の敵を押しつぶす魔法らしいが、俺たちの頭上に落下してきた岩石を俺の念動力で受け止めると、そのまま魔導師に向けて投げつけた。


 何トンにもなる重量の岩石を動かすのには相当な思念波エネルギーを使ったが、その全てが岩石の運動エネルギーへと転換され、岩石をまともに喰らったその魔導師は大ホールの壁との間で押し潰され、粉々に砕けた壁や岩石と一体となって轢死した。


 その間にも俺たちの頭上には魔法陣が出現し、それが超高電圧で帯電する。


 まさに放電現象が発生する直前に、思念波補助デバイスが金色に光り輝くと、俺たちの頭上と敵魔導師の間にプラズマの経路が出現し、避雷針が完成する。


 そして発動したメガサンダーが術者の魔導師を直撃して、一瞬で焼け焦げたあと落下していった。


「これで5人! 残りの2人はどんな魔法だ!」


 思わず大声が出てしまった俺に魔導師たちが恐怖で顔をひきつらせるが、それでも彼らは俺に魔法を放とうとしている。それほどアリスレーゼの確保は彼らにとっての至上命題なのだ。


(次の魔法は光属性魔法アンチヒーリング。直接身体に作用して生命力を奪い去るので防ぐ方法はありません。逃げるのが最善だけど、ここはバリアーで何とか耐えて下さい!)


(ええっ?! わ、わかった!)


 俺は思念波補助デバイスを強く握りしめてバリアーを最大展開した。


 だが敵の魔法が発動したはずなのに、俺の身体には何の変化も起きなかった。


(あ、あれ? 魔法は失敗したのかな)


 だが、ずっと鳴り止まなかったアリスレーゼのテレパシーが突然静まると、


「・・・瑞貴、あなたって一体何者なの?」


「アリスレーゼ?」


(・・・い、いえ何でもありません。次は闇属性魔法ディバイディング。弥生さんが得意とする時空魔法を攻撃に利用したものです。もちろんこれも防ぐ方法はございません)


(いや時空魔法なら、防ぐ方法はある!)


(瑞貴?)


 俺は父さんにもらった指輪を敵魔導師に向けて真っ直ぐに構える。そして弥生と共に異世界転移のトリガーを引いた時に頭の中に浮かんだあの呪文を唱えた。


【ラーヴェ・ドルマ・ガル・マギータ・デ・ゴモス】


 すると目の前の空間がよじれ、一瞬全ての方向感覚が失われた。だが敵の時空魔法が発動するとその次の瞬間にはすべてが正常に戻っていた。


 そして術者の魔導師がいた空間には、バラバラに切り裂かれた遺体が宙に浮かんでいたが、術者が死亡したため浮遊魔法が解けて地面に落下していった。


(瑞貴、あなたって人は・・・)


(まだ一人残っているぞアリスレーゼ! あの光魔導師はこの俺が引導を渡す!)


 俺は全身の気を高めてそれを思念波補助デバイスに集中させる。


 左手薬指の指輪がキラリと光り、何倍にも膨れ上がった膨大なオーラが自分の身体へと還流していく。


 そして、


【無属性魔法・マナキャノン】


 俺の放った魔法が一瞬で敵魔導師に到達すると、彼の展開していたバリアーをまるで紙くずのようにあっさり突き破り、魔導師の肉体を瞬時に蒸発させた。




 わずか1分にも満たない戦いで、7人の敵魔導師はこの世界から消滅した。


 その事実に衝撃を受けた帝国兵士たちは戦意を失って瓦解していき、それと対照的にレジスタンス兵士は熱狂と共に帝国軍を圧倒して行った。

 次回、後編。お楽しみに。


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