マリーの事情
マリーが紅茶と一口サイズのサンドウィッチを持ってきてくれた。
サンドウィッチを一口齧るが、味がしない……。
一口食べてサンドウィッチを置いた私を見て、マリーが紅茶をいれながら話しかける。
「アイリス様はあそこにいた子供たちを見たんですよねぇ~」
マリーに手渡された紅茶を受け取りながら、こくりと頷く。
「きっとびっくりされましたわよねぇ~私も初めてあの部屋に入ったときは、殺されるぅ~。ヘンタイ貴族の奴隷にされるぅ~って思いましたわぁ~」
初めて入った時って……どういうこと……?
驚きで目を見開く私に向かって、マリーはにっこりと笑いかける。
「アイリス様が見た子供たちと同じように、実は私も旦那様に拾われたんですわぁ~」
「えっ……? 」
マリーは驚く私をニコニコとした顔で見つめる。
「私は孤児院にも入れなかった最下層の貧民街の子供なんですのぉ~」
「……そんな。なんで孤児院に入れなかったの……?」
「孤児院に入るには、周りの大人が孤児だって国に証明する必要がありますのぉ~でも、貧民街の大人は自分たちが生きることに必死だから、子供たちを孤児院に送る手続きなんてやってくれないですわぁ~そんなことをやる暇があれば、自分たちが生きるために何かする……ってやつですわぁ~」
過去を思いだしているのか、マリーは悲し気なほほ笑みを浮かべている。
「でも……それなら......貧民街の外の人に助けを求めれば……」
マリーは首を横に振った。
「臭い汚いどんな病気をもっているかもわからない貧民街と関わりを持ちたい外の人なんていませんわぁ~それに、もし誰か一人でも助けたら、他の人も他の人もって……どんどん雪だるま式に助けて助けてってなるでしょうしねぇ〜まぁ、今まで貧民街以外の平民はもちろん貴族なんて絶対に貧民街に近寄ってきたことなんてなかったんですわぁ~貧民街は国に見捨てられた土地だったんですのぉ~」
「そんな......」
「貧民街の子供達のほとんどは物心つく前に死んでしまいますわぁ〜親が死んでしまったり、親に捨てられたり、病気になっても医者にかかることができなくてぇ〜とか死んでしまう理由は様々なんですけどなぇ〜それでも生き残った子供は同じ貧民街子供たちと身を寄せ合って暮らしていましたわぁ~もちろん私も運良く生き残ることができた貧民街の子供のうちの1人ですわぁ〜」
マリーは少し自慢げな表情をするも、すぐに顔を曇らせた。
「運良く生き残っても、物心ついてからお世話してくれてた子達は、私たちを生かすためにだいぶ無理をしてたみたいでみんな死んじゃったんですよぉ〜」
のんびりしたマリーの口調とは対照的に、マリーの手は力が入っているようで、拳を握りしめている。
私はマリーに辛いならもう喋らなくていいと言いたかった。
でも、マリーは辛い思い出を思い出しても、私に伝えたいことがあるのだろう。
きっとその覚悟を思いを踏みにじることはしてはいけないと、何度も口に出してしまいそうな言葉をしまいこみ、その代わりに握りしめたマリーの拳にそっと手を添える。
マリーはハッとした表情をした後、泣きそうな顔で笑ったあと、ぼそりと呟いた。
「旦那様の婚約者になられたのがアイリス様で良かったですわぁ〜」
呟いた言葉は聞こえなかった。
でも嫌がっているわけではなさそうなので、そのままマリーの手を掴んでいると、マリーが私の手を掴見返し、私の目を見て言った。
「私が貧民街の子供の中で1番年上になった時、平民でさえ近寄らなかった見捨てられた貧民街に旦那様が現れたんですわぁ〜」
いつも読んでくださってる方、ありがとうございます!
しばらく投稿が滞ってしまい、ごめんなさい......!
こちらの事情で来週まで毎日投稿ができなそうです。
投稿遅くなりますが、この後も引き続き読んでいただけると嬉しいです!




