これは誰ですか?
歩く度に白銀の艶やかな髪が美しく揺蕩う。
体から花の香りが漂い、薄緑色のドレスが優しく揺れる。
爪は花が咲くようなピンクに塗られ、華奢なブレスレットが透き通る肌の上を滑る。
頬は暖かな日差しを思わせるようなピンク色に染まり、
今まで前髪で隠されていたピンク色の瞳が鏡の中で不安げに揺れている。
「マリー、この鏡壊れているわ。知らない人がうつっているんだもの」
「あはは~壊れていませんよぉ~アイリス様ですぅ~」
「え? でも、だって、なんだか、すっごい可愛いし、とても綺麗だわ」
「だからアイリス様ですぅ~」
鏡にうつる人物をまじまじと見つめる。
確かに、自分の髪の色と同じ白銀の髪をもつ少女が目の前には立っている。
自分だということが、にわかには信じられない……。
だって今までの私とは全く違うから。
今までの私は、肌は日に当たらず、引きこもっていたせいで幽霊のように青白かったはずだし、髪の毛は自分でできる限り梳かしては梳かしてはいたけれど、どこかしこに毛玉や切れ毛があって、ぼさぼさだった。
それに両親も、妹と違って私の顔が可愛くない、醜いから見たくないと……。
そう言われたから私は前髪を伸ばした。
その内、自分でも誰からも愛される妹と違って、醜い自分の姿を見るのが嫌になった。
そうして自分の姿が見えないように部屋の鏡を布で隠していたのだ。
しかし、久しぶりに勇気を出して見た鏡の中には、皆から愛されている証のようなバラ色の頬、透き通った白い肌、艶やかで柔らかに漂う白銀の髪。
どう考えても別人だ。
自分の中で整合性をとるために、自分で考えてでた言葉が……
「マリー、あなた魔法が使えたの?」
「うふふ~、侍女冥利に尽きますわねぇ~これからは毎日魔法をかけてさしあげますわぁ~」
「魔法なら納得だわ」
変な納得している私を横に、マリーが提案をする。
「ディナーの時間まで時間があるので、お庭でティータイムでもいかがでしょうかぁ~?」
「ええ、それではお願いするわ」
「にぎやかなティータイムになると思いますわぁ~」
そう意味深に笑う侍女の後に続いて、私は部屋を出た。
*---
マリーの言う通り、とても賑やかなティータイムになった。
なぜならティータイムを初めてすぐにブラックリー公爵邸にいる動物たちが集まってきたのだ。
牛さんに羊さんにわんちゃん、お猿さんがやってきたときには驚いてしまった。
マリーは慣れっこのようで、寄ってきた動物たちに食べ物を与えている。
そして今、私の膝の上にはブラックリー公爵と同じ黒い毛並みをもち、金の瞳をした猫がいる。
引きこもってばかりで動物と関わった経験のない私は、カチコチだ。
恐る恐る、膝にいる猫の美しい毛並みをなでる。
艶々としたやわらかい毛の下に、生きている証の暖かな鼓動を感じる。
ゴロゴロと美しい黒猫から音がして、ビクリと体が震えた。
本の中で、猫は嬉しいときに喉をゴロゴロと鳴らすとあったけれど、本当かしら?
もしかしたら、本の内容が間違っていて、嫌だという合図だったらどうしよう。
私がアワアワしていたら、後ろから声がした。
「チャカが懐くなんて、珍しいこともあるもんだな」
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