中3・春 『あっという間』
舞衣「うちらも来週で卒業だね」
結奈「そうだね。本当、時間が流れるのが年々早くなっていっているというか……。ぼおっとしてたら、すぐに三十歳とかになりそう」
舞衣「あはは。そんなわけないじゃん。三十歳なんてまだまだ先の先だよ」
結奈「……」
舞衣「ねえ、急に黙るのだけはやめてくれない? 怖いから」
結奈「まあでもさ、また一緒の高校に進学することができて嬉しいな。女子校だったらもっと最高だったけど」
舞衣「あんたが願書を提出日に燃やすとは思いもしなかったわ」
結奈「私もまさかまいちんが願書を二つ用意しているとは思わなかった」
舞衣「あれだけ大人しいと逆に怪しいわよ。何年幼馴染やってると思ってるわけ?」
結奈「そんな笑い話も含めてさ、本当、この三年間いろいろあったね」
舞衣「笑い話……。まあでも、一年の時なんてさ昨日のことみたい」
結奈「一年と言えば、あの高木くんがまさか三年になってあんな風になるとは思わなかったよ」
舞衣「そうね。まさか三年になってあんなキャラチェンするとはね」
結奈「ね。まさかあの大人しい高木くんがわがまま女装ビッチキャラになってるなんて誰にも予想できないよ」
舞衣「私達より可愛いから逆に腹立つのよね」
結奈「ホントそれ」
舞衣「でも、ちょっと気になることがあるんだけどさ」
結奈「何?」
舞衣「高木くんは男だから、わがまま女装ヤリチンって言ったほうが正しくない?」
結奈「それはちょっと、下品すぎない?」
舞衣「ヤリチンって単語が?」
結奈「いや、男ってところが。それにビッチの反対語がヤリチンっておかしいよ」
舞衣「じゃあ、反対語は何?」
結奈「うーんと、ドンファンとか?」
舞衣「じゃあ、わがまま女装ドンファンになるってこと?」
結奈「わがまま女装ドンファンってことになるね」
舞衣「……」
結奈「……」
結奈「ちょうどいい感じでエロくない?」
舞衣「すごいわかる」
ガラガラ
先生「あら、まだ教室に残ってるの? そろそろ帰りなさい」
舞衣「え、もうこんな時間だっけ」
結奈「はーい、もう出ます」
先生「元気で仲良しなのもいいけど……高校生になったら、さっきみたいに下品な話はもうちょっと声を潜めてやりなさいよ」
舞衣「はいはーい。さようなら、先生」
結奈「さよなら」
先生「はいはい。さようなら」
舞衣「……」
結奈「……」
舞衣「あ、帰りにマクド寄ってかない? チョコパイの新作出たらしいよ」
結奈「チョコパイって甘すぎて苦手なんだよね」
舞衣「わかってないわね。チョコパイのいいところはね、あの塩分の強いジャンクフードと相まって、一種のハーモニーを奏でるところなのよ。で、それでねそれでね……」