三章 魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう?』 - 03 - 表紙
三章 魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう?』 - 03 - 表紙
やってる本人は大真面目で書いてるんだろうけど、だからって何か役に立っているわけじゃないんだ。でも、書かれている通りにやらないと悪魔の召喚はできないんだろうって?……ぶっちゃけ、あのままやっても、まず不可能だろうね。
万が一成功したとしても、インプクラスの召喚が精一杯ってところじゃないかな? 魔法の本質を理解していないんじゃ、偶然に頼るしかないからね。というわけで、この本の表紙を見てくれる?」
そう言いながら、魔王バランは魔導書の表紙を指で軽くこすった。
すると小さくきゅっと音がする。
「分かるかな? これは、革張りなんだ。しかも、ドラゴンの皮をなめして作った特級品だ。もし売買すれば、値段的にはとんでもない物になるだろうね。だけど良く考えてみて?
本来魔法の使い方を教えることが目的の魔導書にそんな馬鹿みたいに高い表紙は必要ない。ただ必要な情報だけを書いてあれば済むことなんだよ。もちろん、原典はもっと完結で簡素な本だったんだけど、時代が進むにつれてこんな感じになっていったんだ。
くどいようだけど、こういった演出めいたものは本来魔法とは一切関係のないものなんだよね」
魔王バランはここでもう一冊別の本を出してきて横に並べて置いた。
非常にシンプルなデザインで、非常に硬質で単純な文字が印字されている。
「見てもらったら分かると思うけど、これも魔導書なんだ。魔法研究者が書いた論文を一冊の本にまとめたもので、表紙もそうだけど中も全て印刷されたものだ。
手書きの写本と違って本人が書いた原本と同じものがここにある。しかも古典魔法と違って、最新の研究に基づいた論文だから、この本の内容というのは最先端の魔法学ってことになるんだよね」
ここで魔王バランは一旦派手で高価そうな表紙の古典魔導書の写本を脇にどける。
その上で最先端の研究を書き記した魔導書の頁をパラパラとめくり、その途中を開いて画面に見せる。
そこにはシンプルな円に、寸法を書き記した表記。さらに文字は文字でも数式がびっちりと書かれていた。
文章もあることはあるが、比率で行けばせいぜい三分の一ほどでしかない。




