二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 24 - 証言終了
二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 24 - 証言終了
「は、はい……。その後、勇者オランドと共にわたし達のパーティーはガルウィット王国で二匹、ツェック公国にもどって一匹のドラゴンを斃しました。
いずれも山奥に住むドラゴンで、人間に何か被害をもたらすような可能性はないものばかりでした。
それで最後の方になると、勇者オランドとパーティーの間で口論が絶えない状況になっていました。当然、わたしと勇者オランドの関係も冷え切っていました。
そんな中、勇者オランドとわたし達のパーティーはアイゼランド皇国政府からの招待を受けて出向くことになります。理由がさっぱり分からず、胡散臭さを感じていましたが、勇者オランドはすっかり乗り気になっていたので断れなかったのです。
そして、アイゼランド皇国の政府役人と勇者オランドが内密で会見を行い、密室の中で何かが話し合われました。
その詳しい内容を伝えてもらうことは出来ませんでした。そして、勇者オランドからではなく、アイゼランド皇国の役人から、わたし達パーティーのメンバーは勇者オランドに同行して魔界に赴き魔王を斃すように命じられます。
理由として近隣の住人が魔物の被害にあっているらしいとか、魔王が魔王軍を組織して世界征服を企んでいるようだとか曖昧なものばかりで、納得できるような理由は何一つとして提示されませんでした。
それなのに、勇者オランドは不自然なまでに乗り気になっており、アイゼランド皇国政府の主張を鵜呑みにして魔王討伐の依頼を受けてしまっていたのです。
結局わたし達パーティーは、反逆者として処断されるよりはと勇者オランドに同行して魔界へと乗り込みました。
ですが最後の最後、魔王城の前まで来たところで、どうしても納得することが出来ずに勇者オランドとは袂を分かちます。
単身乗り込んだ勇者オランドはいくら待っても帰ってくることはなく、魔王との闘いに敗れたことを悟りました。
そこで、我々のパーティーは進退極まってしまいます。反逆者として捉えられたら、極刑が待っています。このまま人間界に帰ることは自殺するようなものでした。
魔王城の前でわたし達がどうしたものかと迷っていると、魔王本人が現れます。その魔王は『もし協力してくれるなら、助けよう』と言ってわたし達に提案をしてきました。
勇者オランドと各国政府の黒い関係のこともあったので、容易には信じなかったのですが、魔王はアイゼランド皇国政府と勝手に話をつけてわたし達パーティー全員の安全を確保してしまいました。
その後どんな無理難題をふっかけられるのかと思っていたのですが、まったく魔王は何も言ってきませんでした。
半ば忘れかけていた所、先週突然チャンネル配信への出演依頼が舞い込んできました。
その依頼は、チャンネル配信で、勇者について知っていることを、何もかもすべてぶちまけて欲しいというものでした。そして、わたしは今ここでこうして話をしています」




