二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 08 - ゴア規制
二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 08 - ゴア規制
ただ、君たち全員が勘違いしていると思うけど、今まで見てきたことはすべて、勇者を正の側面からのみ捉えたものなんだ。この世の物事はすべて正と負、その両面が混在している。
君たちは知らないだろうけど、魔界にも正の側面は存在しているんだよ。それは、魔物にだって言えることなんだけどね。同じように、勇者にも負の側面は存在している。
ただし、これは人間界にとっても魔界にとっても非常に根深く複雑かつデリケートな問題なので、さすがに会員限定にならないと出来ないな。ただ、君たち全員にわかるよう、きちんと話すから安心していてくれ。
BANになるんじゃないかって心配してくれてる君。そこら辺りはうまくやるから、まかせといてくれ。俺だって、伊達に魔王やってないしね」
ここまで話たとき、音声が切れて魔王バランとカメラの向こう側にいるスタッフとのやりとりがしばらく続いた。
話していた内容が内容だっただけに、荒れたコメントが一斉に流れ始める。
「すまんすまん。別に殺し屋が来たとか、運営がクレームつけにきたとかいうわけではないから、安心してくれ。
実は最近、勇者が襲撃してきたんだ。その時の様子を設置していたカメラが捉えていて、チャンネル配信内で公開しようってことになったんだけど、運営に見て貰ったら、そのまま使うとさすがに問題になるってことで、ゴア制限をかけることになったんだ。
そのための動画編集が長引いちゃって、たった今、完成したファイルが送られてきたって報告がスタッフから入ったんだよ。さすがにここの視聴者は厳しいねぇ。
ゴア制限って言葉が出た瞬間に、アンチコメントの嵐だよ。運営くたばれっていうのが、ほとんどテンプレ化した書き込みになってるね。魔王の癖に、日和ってんじゃねぇよって言われても、BANされたらそこで終わりだよ? って話してたら、動画出せそうだね。もう切り替えられる? いけるの? ……そんじゃ、画面切り替えるよ」
魔王バランが言った直後、画面が真っ暗になる。
「あー真っ暗、真っ暗、暗黒の世界……画面何も映ってないよ? どうなってんの?」
魔王バランの声は聞こえるが、映像は何もこない。
画面は暗黒配信をお知らせするようなコメントで埋め尽くされている。




