二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 06 - 勇者の限界
二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 06 - 勇者の限界
もちろん敵国との戦争は別だけど、そんなの今度は勇者の力でどうにかできる範疇を超えている。後は天変地異ってところだけど、それこそ国家の仕事だ。洪水とか嵐による高波のように、一度に数千人規模で死人を出すような災害を防ぐためには治水事業をやるしかない。
地震だと現在の建築物に耐震性をもたせなきゃならないし、疫病対策は医師の数を確保して感染が広がらないように防疫対策を徹底する。
他にもまだまだあるけど、どれか一つであっても、勇者の力では解決することなんて不可能だよね。必然的に、イメージが悪くて強そうな、その実実害のない敵を見つけてきて斃すことが勇者の仕事になってしまうんだ」
そう言い切った瞬間に、一斉にコメントが荒れ始めた。
魔王バランはそのコメントを見ながら、ストローで飲み物を吸い上げて口の中を潤した。
「いくらなんでも言いすぎ、そういうことか、はぁ?、勇者の悪口はそこまでだ、魔王だから勇者を貶めたいんじゃないのか? 勇者って悪いやつだな……相当コメント荒れちゃったね。
どうやら、賛否両論ってところだね。まぁ、この展開は俺も予想してたんだよね。実際のところ、それでいいと思ってるんだ。なぜかって言うと、俺が魔王だからなんだよね。
できるかぎり客観性を大切にして話しているつもりなんだけど、それでも俺が魔王である限り当事者としての主観を完全に排除することなんて不可能だからさ。だから、最終的な判断は、この配信が終わったときに、君たちが一人一人自分自身でやってくれ。
俺には、この辺りの客観性が限界だ。……無責任だって言ってる君、そもそも俺に責任とれると思ってる? そういうとこだぞって、言われても事実なんだからしかたないじゃん。
開き直られましてもって、なんか俺が悪いことした? そんなこといいから話先にすすめろやって……君冷静だねぇ。まぁ、そうだね」
ここで魔王バランはカメラの後ろにいるスタッフから話しかけられた。
マイクを切った状態で、いくつか言葉を交わした後すぐにもどってくる。
「ごめんごめん、この後のことで、ちょっと報告が入ったんだ。教えてって来てるけど、話には順序ってものがあるからね。それに、限定配信になってからやるつもりだから、今は聞かないで。
今日の限定はけっこう、ヤバイところまで掘り下げるつもりだからさ。それ以上のことは察してくれ。




