二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 02 - 勇者の立ち位置
二章 魔王さまによる勇者解説『勇者の真実と闇』 - 02 - 勇者の立ち位置
……で、このフリップを見て欲しいんだけど。勇者を中心にして、左側が勇者サイド。右側が勇者と敵対するサイドになってるんだ。これを見てもらうと分かるけど、左側の勇者サイドは殆ど仲間同士として繋がってるんだ。
そして、右側の敵対サイドなんだけど、もうまったくのバラバラ。個々の戦闘値は高くても戦力としてはなんとも悲惨な状況だね。ただここで注目して貰いたいのは、中央に書いてある勇者の存在なんだ」
そう話しながら、魔王バランは中央に書かれている勇者の文字を右手を使って隠してしまう。
「こうしてみるとわかりやすいと思うけど、この構図というのは勇者がいなくても成立するんだよね。フリップに書いてる場所の問題だろってコメントした君。ではこうしたらどうかな?」
そう言いながら、魔王バランは手を動かして右側を隠してみる。
それは、勇者と敵対するサイドだった。
「これだと、明らかに、一つ成立しなくなるものがでてくるよね? さらに、こうしたらどうかな?」
魔王バランは手を動かして、右側ではなく左側を隠す。
それは、勇者の仲間サイドであった。
「これでも、同じく一つ成立しなくなるものが出てくるでしょ? まぁ俺がわざわざ言うまでもないんだけど、それは勇者だよね」
魔王バランが指摘する少し前から、あっとか、おっとか、そういった感じのコメントが一斉に流れてき始める。
「さすがにこのチャンネルに張り付いてる視聴者は感がいいね。そのとおり、勇者というのは、敵と味方、その双方が存在しなければ成立しえない職業なんだ。だから、冒険者に勇者なんて職業が存在しなのも同じ理由からなんだよね。
そもそも、必要のない職業だとも言えるよね。でも、勇者という存在は確かにいる。ということは、どこかに勇者を必要としている存在がいるということなんだ。
では、その存在とは何か……ということを考える前に、少し視点を変えてみようか。物事を分析するためには、多角的な視点から光を当てるほうがいいからね」
そう言いながら、魔王バランはまたフリップを別の物に取り替える。
その瞬間に、大量のコメントが一斉に流れてくる。
「さかさ、さかさ、さかさ……ごめん、ごめん。フリップ反対に立ててた」
魔王バランは今立てたばかりのフリップを急いで上下を回転して立て直す。




