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日本パンデミック  作者: ボサボサ
死の七日間
1/3

感染とくずその一

「伊藤、ちょっと来てくれ」

「なんでしょう?部長?」


騒がしい、オフィスの一室で自分の名前が呼ばれる。

これは社会に出た瞬間からの宿命だ。


自分は運が良いのだろう。地元の大学を卒業後、地元一の優良企業、黒井製薬に就職。

就職浪人、フリーター、派遣社員が当たり前のこのご時世に本当にラッキーだ。

正直、昔からフリーターや派遣社員は見下している。

夢を追っているから就職しないとか、夢を語る姿は馬鹿だと思っている。


周りに合わせていれば安心できる、流行に乗っていれば安心できる。

周りに良く思われたいからそこそこ良い大学に入った、周りに自慢したいから今の会社に就職した。


容姿もそこそこで身長も平均の170センチ。

無趣味、無個性で基本受身で流されて生きて来た。

自分の意見は言わないと言うより、考えた事がない。


「自衛隊の訓練地に荷物を届けてくれないか?」

「え、それって出張ですか?」


その言葉を聞いた時に面倒だと言う、思考回路が働く。

自分の考えは無いのだが、物事に対しての姿勢は無気力で怠惰。


「そう言う事になるな、嫌か?」

「そういうわけじゃないんですが…」

「早速、明日向ってくれ」

「え?場所は?」

「山形の山の中だ」

「え…、そんな急何ですか?」

「伊藤、はっきり言っておくぞ。この仕事を断るとお前はクビだぞ」

「えっ?!」

「これは社長命令だ。それにお前はもっと、物事に対してちゃんと向き合え」

「は、はぁ…」


ばれていた、仕事に対して全くやる気が無い事を。

上司の言う事だけを聞いていれば別に良いと思っていた、その方が考えなくて良いからだ。

とにかく怒られるのが嫌いでずっと他人に合わせてきたつけ。

それに自分はそこそこできると言う自尊心もあると言う、最悪の組み合わせ。

短所は自覚しているが、直す努力は一切しない。

この二文字が大嫌いだからだ、努力は体力の無駄で効率が悪い。


新幹線の中でSNSを見ながら心情は最悪。


「はぁ~。めんどくさ、帰りたい」


車両の中から見える、緑色の風景には一切興味が無い。


『山形、山形に到着します』


このアナウンスの声がさらに優鬱にさせる。

新幹線を降りる足どりは軽くない。

他人に混ざり、ホームを歩く。


「あ…、タクシー」


駅のホームを降りて、タクシーを拾う。


「お客さん、どちらまで?」

「あの~、この住所まで…」


運転手に住所が記載さてれいる、メモを渡す。


「ここ?お兄さん、ここ初めて?」

「出張で…」

「ここ山奥だよ」

「え…」

「んー、とりあえず途中まで行くよ」


タクシーに乗り込み、移動する。


「お兄さん。出張って言ってたけど、どこに勤めてるんだ?」

「あ~、黒井製薬です…」


何時もこの言葉を聞くと少し優越感が生まれる。

自分は他人より、良い会社に就職したと言う実感はある。

それに自分は他人より、頭が良いと思っている。


「そうなんだ~、すごいね~。羨ましいよ、俺なんて安月給でね…。

いつももかみさんに叱られてるよ。やっぱ大手企業って忙しいの?」

「まぁ~、そうですね。ほぼ、毎日残業ですよ」


本当の事を言えば、自分の仕事が遅くて定時退社なんてできない。

仕事に対してやる気が無い。


「すごいですねっ!やっぱ、給料も良いんでしょっ!」

「まぁまぁですよ、まだ入って日が浅いんで」

「え~、そうなの?就職したばかりなの?」

「はい、二年くらいですかね~」

「そうなのっ!新人さんで出張任されるなんてすごいね~」


駅から車で3時間、山道の入り口に到着。


「ここから徒歩になるね」


徒歩。

運動はとにかく嫌いでやりたくないと幼稚な思考を巡らせていたら、迷彩柄の服を着た人が二名立っていた。


これはラッキーと思い、声をかけて見る。

ラッキーだと言うのは運動と言う、非効率的な行動で肉体疲労を体験せずに済むからだ。


「あの…」

「そこで止まれ、身分証を提示しろ」


威圧され、一瞬びびってしまう。


「わ、私こう言う者なんですが…」


名刺を渡すと、疑いの表情で睨み付けて来る。


「少しお待ち下さい。おい、確認して来い」


もう一人いた見張りが通信機で、会話をしている。

その少し間の沈黙。


「あぁ…」

「実験体が逃げたぞっ!撃てっ!」


上の方から、銃声と何かのうめき声が聞こえて来た。


「荷物をお持ちですよね?我々が預かるので、直ぐにお引取り下さい」

「は、はい…。解りました」

「ご苦労様でした」


上司から預かっていた、スーツケースを渡しその場からささっと立ち去る。

一体、上の方で何が行われているか少し気になるが早くホテルに行きたいと言う意識が強い為、気にしない事にした。


「早かったね」

「入り口に自衛隊の人がいたんで…」

「何かの訓練でもしてんだろうな、行くかい?」

「はい、駅前のビジネスホテルまでお願いします」

「了解~」


案外、簡単に仕事が終わり、良かったと気持ちが楽になった頃。

後部座席の窓ガラスから山の方に目を向けると壁の様な物で囲われている箇所を発見してしまう。


さっきもあの辺から奇妙な銃声とうめき声が聞こえた。

仕事が終わり、余裕が出来たと言う事もあり周りに目を行くのだ。


「あの~、あの壁って元々あったんですか?」

「え?知らないな~。さっきも言ったけど、何かの訓練じゃない?この辺じゃ珍しいけど」

「そうなんですか?」


運転手の言葉に何の疑問も感じ無いが、やっぱり気になるのが人の性。


「お兄さん、山形初めてなんでしょ?だったら温泉でも入っていけば?」

「あー、明日直ぐに帰らなきゃいけないでゆっくりできないんですよ」

「そうなんだー、もったいないね。でも大手企業だと忙しいだろうしね~」

「本当そうなんですよね、はっはは」


この話は本当だ、荷物を届けたら直ぐに戻れと言うのは会社命令だ。


「お疲れ様でした」

「領収書、お願いします」


料金を支払い、領収書を受け取りホテルまで到着する。

その頃には日が落ちかけていて、帰宅するサラリーマンと学生が景色に見える。

そのままホテルに足を運び、チェックインを済ませる。


「はぁ~、やっと終わった…」


その安心感から、ベットに倒れこむ。

だが、空腹に襲われる。


「何か買いに行くか」


外食に行く元気は残っていないので、近くのコンビニへ向う。


「いらっしゃいませ…」


店内に入ると全くやる気の無い、アルバイトがレジの前に立っていた。

どうせ、就職もしないで遊んでるフリーターの負け犬だろう。


「ふ…」


その姿を鼻で笑い、馬鹿にする。

店内を適当に歩き回り、炭酸水とジュース、適当に弁当と惣菜を買う事にする。


「ありどうございました…」


会計をしていると、定員の顔が視界に入る。

やはり、顔に覇気が無いと言う顔をしている。

やっぱこいつはクズだと確信してホテルに戻る。


部屋に戻りテレビをつけ、シャワーを浴びる。


「疲れた~」


椅子に座り、買って来た炭酸水を口に入れる。


「あー、上手い」


正直、上手いと思って飲んでいるわけじゃない。

酒が嫌いなので変わりに飲んでいるだけの事だ。


炭酸水を片手に携帯でSNSを開く。


『やっと仕事終わった』

『早く、家に帰りたい』


適当に文章を打ち込んでいると奇妙な情報が回ってくる。


『日本がアメリカと手を組んで細菌兵器を作ってる』


そんな訳ないだろうと流れているテレビを見ながら、半信半疑で読んでいた。

その記事を読んでいると信憑性がありそうだ。


『アメリカ、CDCにある疾病対策センターが細菌兵器を作っている』

「は?」

『その疾病対策センターが人をゾンビに変えると言う代物』


さらに記事を読み進めていると、妙な文章を書いてある。


『さらに公式ホームページにゾンビに気をつけてと言う、知らせも掲載していた』

「そんなわけあるかよ」

『さらに信憑性が増す、事件が発生している。2012年。アメリカ、マイアミでホームレスの男性の顔が食いちぎられるという事件が発生。

犯人はその場で射殺。被害者は保護され、命の別状はないと言う事だが。

この事件は同年、6件発生。警察の発表では犯人が麻薬を服用した為だとはっぴょうしている』


こんなの破滅世論者達の妄想、そもそも死者が勝ってに動き回るなんてありえない。


「んなのあるわけないだろ」


馬鹿にして、食事始める。

流れて来るテレビはつまらない。


『テレビ、つまんねー』


食事中も携帯電話を手放さない。

これは一種の現代病だ。基本、20代前半の若者はこれが普通なのだ。

解っているはいるが、持っていると落ち着くのだ。


SNSでテレビの誹謗中傷をするのは流行みたいなものだ。

そもそも何かを貶すしか、自分の不満を晴らす事が出来ない。

自分の能力が低くて、人格が出来ていないのは良く解っていてるが直そうとする努力しない。


『今日の仕事楽でよかったわwww』


ひたすら、意味の無い事を書き込みをする。

これも一種の強迫概念みたいなものだ。

SNSを常に開き、誰かを繋がっていたい。

それは自分自身がとこかで孤独感を抱えているからだ。


『明日、会社に戻らないといけないからテンション下がる』


ベットで横になり、携帯をいじる。


気が付くと、意識が飛んでいた。


「はっ!今何時だっ!」


午前6時を回っていた。

横になってそのまま寝てしまったらしい。


スーツに着替えて、駅に向う。


『大変ご迷惑をおかけております、ただいま事故が発生したため運転を休止中です』


駅に到着すると、アナウンスが流れていた。


「マジかよ…」


近くの駅員に声をかける。


「あの~、何時に動くんですか?」

「すいません、ちょっとわからないんですよね…」

「そうですか…」


携帯を取り出し、上司に電話する。


『どうした?なんかあったか?』

「部長、新幹線が動かないんですよ…」

『そうか、なんなら2、3日休んでい良いぞ』

「良いんですかっ!」

『手続きしおれがしておくから、気にするな』


妙に優しさに不気味だったが休んでもいいと言うその言葉が嬉しくて、対して気にしなかった。


ホテルに再び、チャックインを済ませる。


「よっしゃっ!休みだっ!やった」


荷物を部屋に置き、観光に行く事にする。


『休みになったうぇーいっ!』


SNS上の文章も陽気になる。


確か昨日、タクシーの運転手が言っていた温泉街に行く。


観光地と言う事もあり、平日でもごったがいしている。

その中を一人で歩く。


どうやら、ここは見上げ物屋が乱列している。


「いらっしゃいませ」


木刀が目に入り、つい買ってしまう。

それと、饅頭。


適当に歩き回り、旅館に入り、温泉に入る事にする。

休日一日目は観光で終わる。


二日目の朝の事だ。

大きな物音で目が覚める。


「な、何だ?」


半分寝ぼけた状態で、カーテンを開けると外は大惨事になっていた。

車同士が衝突して、煙が出ている。


気が付けばSNSを開き、その現場の写真を撮ってアップしていた。


『事故やべー』


完全に野次馬状態。

さらに銃声も聞こえて来る。


「えっ?!銃声っ?!」


この場合、建物の中にいた方が安全なのだか、好奇心と野次馬根性で外に出る。


実際に目の当たりにするとそれは別世界だ。

焦げた匂いが充満している。

その光景に唾を飲む、まるで映画の世界にいるようだ。


人が倒れているのを発見する。


「大丈夫ですか?」


身体の手が触れた瞬間。


「あぁぁぁぁっ!」

「ちょっと、何するんですかっ!?離して下さいっ!」


突然、掴みかかって来る。

必死に振り払おうと、していると銃声が響く。


「え…」

「大丈夫かっ!」


突然、返り血が服に飛んでき来る。

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