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我こそはモン娘テイマー也  作者: hoikun
四章 知るモンスターテイマー
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76話 魔法馬鹿

「なんなら、魔法を教えようか? 授業料は免除でいいよ。」


 俺らの見学を担当するネイヘルが、そんな事を言う。

 ゾクッと言い得ぬ恐怖を感じた。

 その理由を、俺達はすぐに理解することになる。


「エルフって、魔法が得意な種族なんだよね。でも俺らがエルフに出会える確率ってすっごく低いの。それこそ一生に一回とかじゃなくて、孫の代まで寿命を使ったって出会える可能性は低いわけ。そんな存在が今目の前に居るのね? しかも事情があって魔法が使えないんだって? 凄いよね? 凄いんだよ? もしかしたら俺は初めてエルフに魔法を教えた人族になるかも知れないってことも凄いし、エルフの魔法に対する知識の吸収力なんてのも目のあたりに出来るわけ。もしかしたらすぐに俺の事なんて超えてしまうかもしれないよね。更にその過程で魔法についてのレポートなんてもんを書いてもらえたら、人族とまた違った魔法への見解が得られるわけよ。そうなれば人族の魔法使い達だって飛躍的にレベルが上る可能性もあるわけね? つまりは、今後もっと凄い魔法が見られる可能性が高いってことだよねぇー!」


 俺とリーニャはあんぐりと口を開けたまま、機関銃のように放たれるネイヘルの言葉を聞いていた。

 ネイヘルは後半になるに連れて声のトーンが上がっていき、最後には歓喜に打ち震えるかの如く目を輝かせ、椅子から立ち上がり叫んでいた。

 そう、ネイヘルは所謂いわゆる魔法馬鹿なのであった。

 ネイヘルは魔法にしか興味がないが故に、人型を見たところでそれ程動揺しなかったみたいだった。


「おっとすまない、取り乱してしまったね。」


 俺達の様子を見て素に戻ったのか、先程のテンションが嘘だったかのように大人しく椅子に座りなおす。

 一つ咳払いをすると、話の続きを始めた。


「それで、どうだい? 魔法を学んでみる気はないかい? 学費は俺の懐から出すよ。それ程の価値があると思っているからね。」


 彼の情熱には多少……いや結構引くところだが、魔法を無料で教わることが出来るならなんともありがたい話だ。

 ただ、学ぶと言うからには学校に通い、授業を受けなければならない筈。

 今すぐには出来ない話だ。


 ニーアを送り届けて、こっちに戻ってきてからなら俺は問題ないけど、リーニャがどう言うかだな。

 と言うか、リーニャなら断りそうだ。リーニャが本当に行きたいかどうかは分からないが、もし行きたいのなら俺が後押しをしないとダメだろう。


 リーニャは黙って考え込む。いや、断る言葉を探してるのかもしれない。

 俺は取り敢えず、リーニャに前向きに検討しても良いと遠回しに伝える為の質問をすることにした。


「魔法を学ぶって事は、入学するって事ですよね? 入学したら卒業まではどのくらいの期間が必要ですか?」


 俺の質問を聞いて、ちょっと! とでも言いそうな表情でこちらを見るリーニャ。

 ネイヘルは手応えがあると思ったのか、すぐに返答をした。


「卒業は俺達が決めるのではなくて、本人が決める事なんだよ。どれだけの魔法を覚えたいか、それに対してどれだけ魔法を覚えたかで、学園を去るか去らないかを決めるんだ。だからそうだね、結局は本人の習熟速度にもよるけど、参考に魔法使い以外では最短一年でEランクの魔物を魔法のみで討伐出来るレベルになった人が居たね。」


 最短一年でEランクと戦えるレベルの魔法か。リーニャはエルフだから一年でもっと伸びそうだ。


「授業はどのくらいのペースでありますか?」


「そうだね、基本的には五日間出てきてもらって、二日は休日という形でやってるよ。一日の授業量でいえば、朝の半から昼の半までってところかな。」


 そう言ってネイヘルは、腕にしていた時計の朝と昼の丁度真ん中と、昼と夜の丁度真ん中を指した。

 うーん、時間に直すと、九時から十五時ってところか?


「もし希望があれば、個別のカリキュラムを組む事も出来るよ。世の中には忙しい人も沢山いるからね。十日に一日しか授業を受けない人とかも居るんだ。そういう人達には大体専用の教師を付けているよ。」


「へぇ、そんなことも出来るんですか。」


 そこまで柔軟に人を受け入れられるのか。凄いな。

 それなら依頼をこなしつつ、合間合間に授業を受けて魔法を覚えることも出来るか。

 ネイヘルはもうひと押しだと思ったのか、喜びを隠せない表情で言葉を続ける。


「なんなら、どの属性魔法が得意か適性検査だけでもしてみないかい? それならほんの少しの時間で済むよ。」


 おっ、適性検査なんてものがあるのか。

 リーニャの方をちらっと見たら、リーニャは頷き返してきた。


「よし、決まりだね。じゃあ準備するから待ってて。」


「分かりました。」


 ネイヘルは立ち上がると、部屋から出て行った。

 しばらくして、リーニャが小声で俺に話しかけてくる。


「私、入学するとは言ってないんだけど。」


「うん、でも入学したいでしょ?」


「し……したいけど……ユウスケに迷惑がかかるでしょ?」


「迷惑なんてかからないよ。リーニャのやりたいことならやった方がいい。数年くらいならクリシュナードに住んでもいいし。」


「数年くらいならって……」


 呆れたような視線を俺に向けてきた後、「ま、ユウスケだし。」とか良く分からない納得の仕方をするリーニャに、俺もちょっと抗議をしようかと思ったところでネイヘルが帰ってきた。


「おまたせ、よいしょっと。」


 ネイヘルが手に持っていたのは、水晶のようなものと小さな魔石数個だった。


「この魔石は各属性の魔石なんだけど、これに魔力を流しながら水晶に手を触れれば、その属性の適性が分かるんだよ。属性は水晶の中に起こる現象で、素質は現象の度合いで表される。」


 そう言ってネイヘルはリーニャへ魔石を渡した。

 リーニャは緊張した面持ちで魔石へ魔力を流し、水晶へと触れる。

 触れた瞬間、水晶の中へ炎が現れた。

 それを見たネイヘルは、ほぉと感嘆の声を上げる。


「凄いね。普通のマジシャンと遜色ないくらいの反応だよ。」


 普通のマジシャンと同格と言われて、リーニャが首を傾げた。


「それ、凄いんですか……?」


「凄いよ。魔法使い以外でここまでの反応はそれ程見ないね。それこそ一年あればEランクの魔物なんて相手じゃないよ。ほら次次!」


 リーニャはネイヘルに急かされ、火の魔石を手放す。

 手放した瞬間、水晶の中に起きていた現象は消え去った。

 そのまま次の魔石を手に取る。

 何故かネイヘルが一番テンション上がってるような気もするけど、まぁいいか。


 次の魔石は水だったようで、水晶の中半分くらいに水が満たされる。


「おぉ、これも火と同程度だね。やはりエルフは魔法の素質が高いようだ。」


「これも、マジシャンと同じ……」


 水の現象を見て、リーニャは少し落ち込んでいたようだった。

 マジシャンじゃないのにマジシャンと同レベルの素質があるって、かなり凄いと思うんだけど、リーニャは納得できなかったのだろうか。

 まぁ、エルフだからもっと素質があっても良いのかもしれないけど。


 リーニャは次々と魔石を交換し、現象を見ていく。

 雷と土は少し低めだが、やはり一般の職よりかは高い素質があったようだ。

 ちなみに、氷魔法は水魔法の応用らしく、素質は水魔法のものを見ればいいらしい。

 そして風の魔石を手に取った。


「これで、最後ね。」


 リーニャは呟いて水晶に触れる。

 ネイヘルはワクワクした様子でそれを見ている。


 水晶の中には、目に見えるように少し緑がかった風が渦巻いていた。

 現象の大きさは、見た感じ火や水と同じくらいかな。


「風もこの程度……これなら私は……?」


 リーニャが何かを呟きかけたところで、異変に気づく。

 水晶の中に起きていた風の渦が、徐々に大きさを増してきていた。

 やがて風は水晶の中を埋め尽くし、水晶が小刻みに揺れ始めた。


「こ、これって……きゃっ!」


 俺やリーニャが唖然としていた中、水晶に触れていたリーニャの手をネイヘルは乱暴に引き剥がした。

 少し手をひねったのか、リーニャは手を擦りながらネイヘルに視線を向ける。


 ネイヘルは手を引き剥がした体勢のまま、驚愕の表情で固まっていた。


「……ネイヘル、さん?」


 リーニャが名前を呼ぶと、力が抜けたかのように腕をだらんと下ろした後、頬へたらりと伝った汗を拭って、リーニャに言った。


「リーニャ、だったか。君は今すぐ弓を止めて、魔法を学んだ方が良い。」


「えっ……?」


 先程の騒がしさが嘘のように静かになった応接室の中で、ネイヘルの言葉が続く。


「今まで適性検査で、水晶が壊れそうになったことはない。異常だよ。この水晶では測りきれない素質が、君にはある。」


 ネイヘルは今までの表情とは変わって、真剣な表情だった。

 それが、今さっきの現象が如何に異常だったのかを物語っていた。


「私に、風魔法の素質が……?」


「そうだね。正直、それ程の素質があってアーチャーをしているのは勿体無い。」


 ネイヘルは、リーニャの返答を待つ。

 リーニャはしばらく口を噤んでいたが、ぽつりと呟いた。


「風魔法なら、シロナちゃんが使えますから……」


 確かに、シロナが風魔法を使える。戦闘中に成長していく事を考えたら、習熟速度はシロナの方が上だろう。


「得意な属性の被りなんて些細な問題だね。デメリットなんてそんなにないよ。君は他の属性も素質が有るしね。」


 しかしそれには、ネイヘルが答えた。

 確かにそれぞれの属性に弱い魔物とかは存在するが、かと言ってその属性がなければ勝てないわけではなく、さらにリーニャは適性が高い魔法が風魔法だっただけで、属性魔法全般の素質があるわけだし、全ての魔法を学べばオールラウンドに戦うことが出来る。


 それでも、リーニャは首を振った。


「マジシャンには習熟速度で勝てませんから、戦力になるには時間が……」


「じゃあ、マジシャンになればいいよ。」


 リーニャの言葉に、ネイヘルはあっけらかんとした様子で言葉を返す。

 それに対して、リーニャは少し強い口調で言い返す。


「職業は変えられないじゃないですか。」


 この世界に来た時、俺は職業を選んだ。

 恐らく、神から素質を与えられるからだ。

 だから俺はずっとモンスターテイマーから変われないし、リーニャも最初にアーチャーになったから変われない、と。


「変えられるよ。」


 しかしそれにもネイヘルは即答した。


「だって、元々俺は戦士だったからね。」


 ネイヘルから続いて出た言葉に、俺達は驚きを隠せなかった。

ちょっと定番すぎる展開だったかなとも思いましたが、やっぱりちょっとこの展開だけは外せないかなと思って書きました。


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