2話 エマの町と冒険者ギルド
前回のあらすじ
エマの街の近くに降りた俺は、おっさんにつれられて町へと向かうのであった。
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木製の住居がずらりと……とは言えないな、ぽつぽつと並び、畑を耕している人達もまたぽつぽつと見える。
中央へ進んでいくとそれなりに住居も多くなっていき、畑が少なくなっていった代わりに鉄を打つ音がする。
町の中央付近には少し大きめの建物があり、この町の中ではとびきり頑丈に見えるソレは冒険者ギルドらしい。
そう、ここはエマの町。
町の住人はそれほど多いわけではないらしく、他の町と貿易を取りエマからは主に食料を、他の町からは主に鉱物をと言った具合に物品のやり取りをしているということだ。
そして俺は今、おっさんの家にお邪魔させてもらっている。
おっさんがお古の装備をくれるらしいので、その好意に甘えることにしたのだ。
「えぇと、取り敢えず自己紹介でもしようか。」
今更だけどな、とおっさんは笑いながら言った。
「俺の名前はアルダン。前は多少冒険者として各地を転々としたもんだが、今はこの通り歳だからな。大人しく農業をしてるよ。」
「俺の名前は松井ゆ……いや、ユウスケ・マツイです。」
「ユウスケか、いかにも召喚者っぽい名前だな。」
そんな会話をしながら、おっさん改めアルダンは木箱の中身を漁っている。
「……本当に装備を貰ってもいいんですか?」
「あぁ、どうせもう冒険なんてしないしな。ココらへんの魔物相手なら、鍬や鎌で十分だ。」
農具の鍬や鎌で魔物狩れるとか、このおっさんどんだけ強いんだ。
見た目が筋骨隆々なだけあって昔は戦士とかだったんだろうけど。
「っと、あったあった! これとこれだ。」
そう言ってアルダンが取り出したのは普通に見える剣と盾だった。
「俺が冒険者時代に使ってたやつだ。まぁ後半は大斧とか使ってたんだが、今のお前にゃ重くて使いづらいだろう。」
確かに、大斧なんて持ってたら歩くのだけでもしんどそうだ。
それにタダで装備が貰えるのならこれに越したことはないしな。
「それに、この剣と盾は一応マジックアイテムってやつだ。」
「マジックアイテム? それって特殊な能力とかがあるあの?」
「あぁそうだ。この剣は上手く行けば相手を少しの間麻痺させることが出来る。確率は低いけどな。それでこの盾は持ってるだけで、受けるダメージを少し減らしてくれる。なかなかいい装備だろう?」
そう言ってアルダンは豪快に笑った。
確かに今持つには良すぎるくらいの効果だ。店で売ったっていい値段になるんじゃないだろうか。
「そんないい装備を、なんで俺に?」
「そんなもん、お前を気に入ったからだよ。あえてテイマーを選んだお前の覚悟とか、そういうのにな。」
アルダンは、何かを思うような、優しい笑顔で俺に言った。
ごめん、覚悟とかそんなん無くてモン娘欲しいだけです。
でもそんなこと言えない。
「一応胸当てとかも持ってたんだが、お前のサイズにゃ合わなそうだからな。鎧は自分で稼いで手に入れてくれな。」
しかしアルダンは凄く優しいな。凄くありがたい。なんか親父みたいな感じだ。
ここに長居するのもアレだろうし、そろそろお暇することとしよう。
恩返しには、また稼いでからくるかな。
「アルダンさん、ありがとうございます。」
「いやいや構わねぇよ。さ、冒険にいきな。まずは冒険者ギルドで身元証明書になるギルドカードを貰いに行けよ。この町は良いが、でかいところになると街に入るときに冒険者以外は税金取られるからな。」
「はい、では、お元気で。」
「おうよ。寂しくなったらまた家に来てもいいぜ。」
アルダンは笑いながらそんな事を言った。
そうして、俺はアルダンの家を出た。
~
冒険者ギルドを目の前にして、俺はあることを思い出していた。
それは前世界で読んだ小説のとあるイベント。
異世界物では定番のアレだ。
冒険者ギルドに登録しようとして、おっさんに絡まれる系のやつだ。
正直俺がクソチート野郎なら返り討ちにでもするんだろうが、あいにく俺は本体クソ雑魚なので返り討ちという選択はない。
やれるところまでやってみますとかそんな感じでのらりくらりと躱すしかないだろう。
そんな脳内シミュレーションをして俺は冒険者ギルドに入った。
拍子抜け、だった。うん。
めっちゃガランとしてる。人が居ない。
受付嬢しかいなかった。なんだコレ大丈夫か?
取り敢えず受付に向かった。
受付嬢は俺と同じくらいの歳か?さらさらと綺麗な金髪で、耳が隠れてるようなセミロングヘアだった。
見た目は清楚な感じだ。
「あら、見ない顔ね、もしかして今さっきの?」
「今さっきのって?」
「外で誰かが召喚された光を見たのだけど、そうかと思って。」
ほんと召喚モロバレじゃないですか。そんなガバガバでいいの? 女神様そういう管理で大丈夫か?
しかしここで否定しても別にメリットはないので肯定しておく。
「えぇ、まぁそれです。」
「それでは、登録からですね。すぐに出発したいでしょうから、ささっと済ませちゃいましょうか。」
このギルドの受付嬢は随分気さくな人だった。話しやすい。
「まず冒険者には、F〜Sのランクがあります。初めは採取等が主ですが、ランクが上がるに連れて、討伐や護衛などの仕事が増えていきます。ランクアップに必要な条件はランクごとに違います、最初はFですが、Fランクは依頼を10件達成すればランクアップ出来ます。」
そう言いながら受付嬢は水晶のようなものを取り出した。
「ここに手をかざしてください。すると貴方の情報が書き込まれたカードが排出されます。」
言われた通りに手をかざすと、薄く水色に光って一枚のカードが浮かび上がった。
「それでは確認をいたしますね。名前はユウスケ・マツイさん。年齢は18歳、職業はモンスターテイマーで間違いないですか?」
「間違いないです。」
受け取ったカードには今確認した情報と、ランクがFと書かれていた。
「はい、これで貴方の登録は完了です。このカードは貴方の魔力にしか反応しませんので、他人がそのカードを使って何かをする事は出来ませんのでご安心ください。もし無くしましたら再発行致しますが、その際には銅貨1枚頂きますのでご注意ください。」
銅貨1枚…そういえば金の事情も聞いておかないといけないな。
後でアルダンのところでも行ってみるか……なんて早い再会だ。
「何か依頼を受けていきますか? Eランクまでの依頼でしたらこの町にありますので、向こうのボードをご確認ください。」
受付嬢は笑顔でそういった。
でもまぁ最初は採取でいいだろ、うん。
どうせスライムとかそこら辺テイムしないといけないし。
そう思いながらボードへと近づき、依頼を見てみる。
薬草の採取、アンカ草の採取、テーナ草の採取…
「採取多いな! マジか!」
いかん、つい声が出ちゃった。しかしFランクってもしかして討伐依頼ないのか?まぁそれでもいいけど…
あ、討伐依頼ある! どれどれ…スライム5匹討伐
「スライムマジで最弱かよ!!」
声に出るだろ! せめてEランクくらいであって欲しかった!
テイムする意味あるか? このスライムはテイムする意味が?
そんで俺はこの最弱スライムちゃんをテイムするのがギリギリ……
泣けてきた。
考えてもつらさが上回るので無心になることを決意し、薬草の採取とスライムの討伐を受けることにしたのであった。




