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第59話 宇宙の塵屑と地上の塵屑




「……あれっ?」


 白い光が消えた。

 と思ったら、次に織斗が目にしたのは夜の公園だった。

 きらきらと宙に舞う粒子、封印術を使用したあとの光だ。


「俺、いま……夢?」

「織斗、もしかして、あっちの世界に行ってた?」


 胸ポケットの中から、姫未が見上げてくる。織斗が首を傾げると、姫未も同様に、可愛らしい小さな首を傾げた。


「辺り一面真っ白の場所、もしかしてそこに行ってた?」

「え? あぁ……夢かと思った」

「夢じゃないわよ。あれは……」


 しかし姫未の声を遮るように、結奈が織斗の背中を叩く。


「おっつかれさまー、お兄ちゃん! 何が起こってるか全然わかんなかったけど、かっこ良かったよ!」


 ニコニコと笑みを浮かべる結奈、その肩にはミニサイズのブラック。

 彼らの背後には広と、その身体を支えるあやめ。咲は広に一声かけたあと、織斗に歩み寄った。


「織斗くん、大丈夫だった?」

「俺は大丈夫。ありがとうな、咲」

「私は遠くから糸操ってただけだから」

「でも俺の頼み聞いてくれたじゃん。糸の動きも完璧だったし、カードの向きもぴったりだった」

「あれくらいはできるよ。織斗くん声大きいから、私のところまでちゃんと届いたし」


 ふふっといつもの感じで笑う咲を見て、織斗は安堵した。

 そして近寄ってくる、広とあやめに目を向ける。


「お疲れさまです、神木の当主……さま」

「悪かったな、織斗」


 相変わらず無愛想のあやめと、疲労を隠しているのかいつもより気を張っている広。

 長話はよくないと、織斗はふっと笑って簡素に答える。


「いいよ、別に……あ、でも、一つ言うと、やっぱ、緋末って異常じゃね?」


 織斗の言葉に息を呑む広と、ふいっと視線をそらすあやめ。

 構わず、織斗は言葉を続ける。


「当主様がどうとか、自分たち一族は特別とか。洗脳てかマインドコントロール? 異常じゃね?」

「遼馬は、京都本家の色が強くて……いや、言い訳だな」


 はぁーと、息を吐き出す広。

 あやめがキッと、織斗を睨んだ。


「緋末全体を管理しているのは父だが、東京分家は俺が家長だ。頑張らないとな……せっかく窓を、開けてくれたから」


 ちらっと咲を一瞥する広。視線の意図がわからず、咲は微笑んだまま首を傾げた。


「一つ、反論させて頂くならば」


 しかし静寂の中に響いたあやめの声に、全員がそちらに振り替える。


「平凡普通それ以前に学力も容姿も当主様には到底及ばない、取り柄があるとすれば声の大きさとおかしな厨二病発言でしょうか。いえ、それすらも寝起きの当主様には匹敵しない、例えるならば火星と地球いえ言いすぎました。土星の輪っかと海底に沈む地上の塵屑。あ、もちろん塵屑はあなたです。さて、そのようなあなたが緋末のトップである当主様に意見するなど、恐竜世界が終わったのは隕石ではなく疫病もしくは共食い、あるいは人間世界が滅ぶのは太陽の爆発などと意味不明な事を言っている今の私以上におかしなことだと思うのですが。いかがでしょうか、神木の当主」


 息継ぎの間もないほど早口なあやめの言葉。

 呆然とあやめを見つめていた織斗たちだが、しばらくして咲が「ん?」と首を傾げた。


「土星の輪っかって氷とか岩とか小さな粒子の屑だよね? 織斗くんも広も、二人とも屑ってこと?」


 そしてまた静寂。

 三分ほど無駄な時間を過ごし、梟が鳴き始めたところで、広が「論点が違う……」と小さく呟いて、ぶっ倒れた。




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