表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
26/38

第三話 術の使用なし、正々堂々真剣勝負!


 公園にある時計の針は六時三十分。

 太陽が沈みかけているがまだ明るい時間に、織斗と広は勝負を開始した。


「約束だからな広、俺が勝ったら昼はもう攻撃してくるなよ」

「家臣に説明しづらいな、それ。まあ、おまえが勝つことはないから問題ないか」


 左腕の紐めがけて手を伸ばす織斗と、余裕でそれを交わす広。

 腕の長さが違うため、がむしゃらに向かっていくだけでは織斗にとって不利だった。しかしそれがわかっていないのか、ただひたすら手を伸ばす織斗、避ける広。



 どう見ても広が優勢な戦いを、咲とあやめはブランコのところで眺めていた。


「……わざと、捕まってくれたよね?」


 戦いが始まってしばらくしたころ、咲が言った。

 あやめはチラッと咲を見たが、すぐに視線を織斗たちに戻す。


「私にとってあの方は緋真の当主です。でも、神木が敵かどうかはわからない」

「……え?」

「神木が目覚めたことで怒り狂ってる雑魚を充てがい、ただ家臣の数が減っていく。それがダメだとわかっていながら当主様は前に進まなかった。正直、勝ち負けなんてどうでもいい。この戦いの決着の末に、当主様の悩みが無くなるなら」


 じっと広を見つめるあやめ。

 咲はそれに倣い、広と織斗を見た。


「好きなんだね、緋真の当主のこと」

「その好きがライクかラブかは別として。緋真の人間で、当主様のことを好きじゃない人なんかいません。私含めみんな、当主様の幸せを最優先に考えています……気付いてもらえないだけで」


 それ以上は喋らなかった。ただ黙って二人を見守る。

 拘束具はとっくに外していたが、あやめが逃げることはなかった。





 無鉄砲に紐を取りに行く織斗。らちがあかないと思った広が手を伸ばすが、あっさりとかわされてしまった。


「悪いけどこれ、俺が勝つぞ。運動神経だけなら広より上だからな」

「動体視力いいもんな、昔から」

「どうたいしりょく? 目はいいぞ、遠くのものでもはっきり見える」

「そうじゃなくて……」

「あ、でも広が相手のときは難しい。広って背高いのに細いから、間合い取りづらいんだよな」

「間合い?」

「動きは読めるんだけど、距離感がわかんなくてさ、サッカーとかバスケの時とか、まだ大丈夫だろうと思ってたら意外と近くにいてボールとられる」

「それはな、」


 言いながら、広は織斗に近づき足を伸ばした。

 避ける織斗だが、つま先が足のすねにぶつかった。


「おまえが思ってるより、俺の足が長いってことだ」

「自分で言うな!」

「まぁ、そういうことなら、この勝負俺の勝ちだな」


 術を使っているかのような広の素早さ、織斗は紐を取られまいと左腕を背中の後ろに隠した。しかし広の狙いはそこではなく、無防備になっている織斗の右手。

 がしっと右の手首を掴まれた織斗が、呆けた声を出す、


「は? え?」


 広は掴んだ手首を引っ張り、織斗を地面に押し付けた。


「目、いいんじゃなかったのか?」


 うつ伏せ状態の織斗の左手に手を伸ばす広だが、寸でのところでかわされてしまった。

 地面を這うように、織斗が逃げ出す。


「だから、広は俺に勝てねーんだよ!」

「逆だろ、おまえは俺に勝てない」


 公園の隅にある大きな木の根元まで逃げる織斗と、ゆっくりとそれを追う広。

 織斗は木の幹に背を預けて座り、広を見上げた。

 灯りが消えた空、外灯の光が公園内を照らしていた。


「……なに笑ってる?」


 織斗の表情を見た広が呟く。織斗は笑みを抑え、人差し指で空を指さした。


「広、悪いけど今日は、俺が勝つから」

「……根拠は?」

「お前が悩んでるから」


 織斗は天に向けていた指先を、広へと移動させる。


「不機嫌オーラすごかったぞ。クラスの雰囲気めっちゃ悪いし、みんな心配してた」

「……明日から改善しよう」

「そうだな、明日の朝には友達に戻れるな」

「虚言だな。もう二度と、お前と話をすることはない」

「無理だな……」

「無理なわけない。それが普通、今までが偽りだった」

「……ケジメをつけよう、広。今まで、十年間一緒にいることが自然だった。それを急にやめろ、切り替えろって、人間には無理なんだよ」

「そうだな、ケジメをつけよう。俺が勝てば、俺とおまえは敵だ」

「俺が勝ったら昼間は今まで通りだぞ、約束しろよ」

「わかってる。ただしお前が勝てばの話で……」

「約束したな! よし、咲! 姫未!」


 織斗が叫ぶと同時、咲が指に絡めていた糸を引いた。

 プチン、と音がして広の腕に巻き付いていた紐が千切れ、地面に落ちる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ