52話:蛇に見込まれた僕
蛇に見込まれた蛙。
という言葉が頭によぎる。
ソラは色々な本から知識を得ていて、物知りだなぁと
まるで他人事のように思ってしまう。
この状況を意識したくないあまり
僕の思考は何とか他の事へと頭を回転させている。
しかし、いくら現実逃避をしても現状は変わらない。
そう、目の前にいる鬼の形相の双子がいる現状は変わらないのである。
「ソラ?ちゃんと人と話す時には目を合わせようね?」
声だけ聞くと、優しげなシアンの声も
今はその奥に秘められている怒りを、ヒシヒシと感じてしまう。
もちろん、シアンの顔は普段通り微笑んでいる。
しかし、この怒りのオーラは隠せていない。
まだ、体全体で怒っていると分かるユアンの方が安全な気がする。
「不注意以外の何物でもないだろ?筋トレなんかするからだ。」
どちらにしても、怒りを含む双子の言葉に僕は答えられない。
そもそも、こんな事になったのは父のせいだったりする。
モデルの仕事として来ていた双子に
僕が朝にトレーニングを始めた事や、怪我をした事を話したのだ。
妹もそうだが、この双子も
僕が、ソラが変わった事に対して、受け入れられていない。
これでも大分、最初よりかは話してくれるようになったが…
初めて会った時の動揺はすごかった。
双子は『ソラ』が『僕』であると感じた瞬間、
絶望や悲しみが どう表現すらば良いのか行き場をなくしており
見ている僕が、とても切ない気持になった。
この双子はきっと、『ソラ』にただならぬ思いを抱いていたのだろう。
でも、もう僕はソラの真似をするのはやめた。
その方が彼らにとっても良いと僕は思う。
彼らは僕に、ソラの面影を探し、期待し、絶望する。
そのまま期待を持たせるのは、僕には荷が重い。
まだ意識を双子に集中していなかった僕は
ユアンが手を伸ばし、僕の頬に触れるまで気付かなかった。
ひんやりと、少し冷たい手が僕の頬の傷に触れる。
深い深い緑の目と、僕の目が合う。
キレイだなぁ。
「 森みたいだね 」
その言葉を言った時の泣きたい様な
笑いたい様な
そんな2人の顔を見て
僕はこんなに人に愛されている『ソラ』に
何故だか 嫉妬に似た気持ちを感じた。




