51話:歌と僕と絆と
きっと、ソラの歌と僕の歌は
決定的に何かが違っていたのだろうと
アルの様子をみて容易に想像できた。
何かに別れを告げる様に目を閉じたアルは
目を開けた時には、いつも通りに戻っていた。
「そんなにソラをなでまわさないでよ。」
といって、レオを止めに入る。
ケチケチすんなよ~というレオの言葉を無視して
アルが僕の方を見た。
「ソラ、良かったら家族の前でまた歌を歌ってくれないかな?」
まるで、それが何かの呪文を解く鍵になるような
そんな響きがある言葉だった。
「分かった。機会があったら歌うよ。」
俺の事は無視か~というレオの言葉を無視して
僕は答えた。
忘れていたが、ここは僕の家の庭である。
そして、早朝に大きな声で歌った僕の声は
思ったよりも響いていたらしい。
その証拠に、妹が家から飛び出してきた。
「ソラ兄さん、また歌を歌うようになっ…」
久しぶりに自分から話しかけてくれた妹に
やっと仲直りの兆しが見えたと思った瞬間
僕の顔を見て、妹は一時停止した。
どうしたのか分からずに、首をかしげると
それに合わせるかのように、妹も首をかしげる。
目を何度もこすった妹は、もう一度僕を見て
「いやぁああああぁぁぁぁぁ!!!」
と、僕の歌声よりも大きな声で叫んで気絶した。
急いでアルが駆けつけて、
そのまま地面にぶつかる前に妹を支える。
それを見ていたレオが一言
「想像以上に、激しい反応だな。」
と呟いていたのが聞こえた。
そういえば、僕は怪我をしていたんだっけ。
歌を歌っていて気付かなかったが
僕の頬は傷口が開いて血が垂れていたようだ。
妹の叫び声を聞いて、両親が飛び出てきたことや
何事かと近所の人たちが出てきたのは言うまでもない。
この時、僕は妹の事を気にしていて忘れていた。
僕に、いやソラに、傷をつけて怒り狂うのは妹だけでなく
もう2人いることを。




