34話:月日は流れ
この世界でも学校はあり、7歳から入学することが出来る。
しかし、日本の様に義務教育ではなく、
家の事情や本人の意思で通わなくても良いとされている。
丘に行けなくなった私は、あの狼や青年の事が気になり
よく本を読むようになった。
彼や狼の事が書かれた本は、まだ見つからないが
この世界について、知る事の楽しみを知った。
「僕は、学校では習わないもっと深い事を知りたい。」
両親に7歳の時、私が言った言葉だ。
もちろん、両親は学校に通うと思っていたので驚いたが
ソラの好きなようにして良いよ、と言ってくれた。
嬉しさと一緒に、何か胸の奥がツクツクと痛んだ。
村の図書館で本を読んだり、時々家族や双子に歌を披露したり
父の洋服のモデルで少しずつ、お小遣いを貯めたりしている内に、
月日は経ち、私は12歳になっていた。
「ソラ兄さんって、すごいのね!」
家族皆で夕飯を食べている時に、妹のティアが言った。
「どうして?」
何がすごいのか、分からずに尋ねる。
「だって、ソラ兄さんは学校にも行ってないし、
本ばかり読んで外にもあまり出ないでしょう?
それなのに、私の友達が皆ソラ兄さんの事知ってたわ!」
軽く引きこもり発言をされて、少し傷つく。
「そりゃぁ、ソラは私たちの家族だし、ティアの兄さんだからでしょう?」
母上が父上にサラダのおかわりを盛りながら、答える。
「違うよ~!ソラ兄さんを見たことない子に、
すっごい美人なんだしょ?って聞かれたもん!
噂になってるんだから!」
思うが、ティアはとても可愛いし
この両親なので本人を見なくても憶測で
皆言っているのではないだろうか。
「確かに、ソラは美人だよね。」
うんうん、っとアルと両親が頷く。
あまり自分の顔を意識した事がないので、私にはイマイチ分からない。
「ソラ兄さん、私ぐらいの歳の女の子が迷子になってたの助けたでしょう?」
いきなり質問されて整理がつかなく、そんな事あったかなぁと記憶が不確かだ。
「綺麗な長いストレート髪の子よ!私の友達なの。」
「たぶん、助けた様な気がするなぁ…」
「その子が改めて兄さんにお礼言いたいんだって!明日連れて来ても良い?」
「別に、お礼言われる様な事してないのに…午後からなら構わないよ。」
午前中に図書館で3冊ぐらい本を借りてこよう。
「午後なら俺、明日レオと少し買い物あるから会えないわ。」
「そうなんだぁ。」
アルがいないのを残念がるティア。
アルの事も友達に紹介したかったのだろう。
15歳になったアルは、大人っぽくなり背も伸び始めている。
「お父さん、お母さん午後に家に呼んでも良い?」
両親は微笑んで了承した。
明日はどうやら、騒がしくなりそうだ。




