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32話:死ぬ価値
死ぬ価値って何だろう。
私は彼に言われた言葉を反芻してみる。
私は、一度死んだのに。
私は彼から、目をそらさずに見続ける。
彼の目は髪と同じ黒色だ。
その黒は、淡いとか少し茶色が混ざる等なく
純粋の黒だった。
彼は背負っていた鞘に、
大きな剣を
白い美しい狼を殺した剣をおさめた。
私に背を向けると彼は、
死んだ狼の前にしゃがむ。
その瞬間、彼も死んだ狼も
私の目の前から消えた。
まるで、何もなかった様に
風が木々を揺らし、音を奏でる。
しかし、私に飛び散っていた狼の血が、
今まで起きた事が夢じゃないのを証明している様だった。
その時、私の足の力が緩み
かくん、っと膝が折れた。
どうやら今頃、腰が抜けたようだ。
どうしよう、と考えていた時
遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。




