9話:布は舞い、お菓子は転がる
家から父上のお店までは
15分程度の距離にある。
私は、昼間から夕方に移行する時の
空や風、風景を楽しみながら向かった。
村の商店街よりも
少し手前にあるレンガのお店。
母上の趣味で花がお店の周りに植えられており、
情景に色を添えている。
お店に着いた私は、
裏にある木で造られた職員専用の扉から
お店の中に入った。
「あら?ソラ君こんにちは。」
店のスタッフの女性から声をかけられる。
何度か私も父上にモデルの餌食にされているため
店のスタッフとも顔見知りなのだ。
「父上に頼まれた布などを持ってきたんですけど…」
手に持っているお菓子と布が入った籠を持ち上げる。
「あぁ、ありがとう。きっと、さっき言ってた布だわ。
店長(お父さん)は奥の部屋にいるわよ。
ゆっくりしていってね。」
と、女性スタッフにウィンク付きで言われ
私は苦笑いしながら、
「ありがとうございます」と返した。
奥の部屋はモデルの撮影ルームである。
ざわざわと、部屋から人の声やざわめきが聞こえる。
普段は撮影中、静寂した雰囲気で行われる。
そのため、今回の異様な雰囲気に、私はすぐに気付いた。
…なにか、撮影のトラブルでも起きたのだろか。
そのように考えながら、私は
部屋のドアノブに手を触れようとした。
その瞬間、
内側から扉が開き、
中から勢いよく飛び出してきた
2つの影と私は激突した。
舞っている布と、
ばらつき転がるお菓子。
後ろに倒れながら、
私の視界は濃緑色が一面に広がっていた。




