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(お嬢様+サイボーグヴァンパイア+天才女子高生)÷妹=新世界誕生  作者: 釧路太郎
引きこもりからの脱却

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第七話 新生活応援キャンペーン

 今まで働いたことが無かった俺でもこの寮がおかしいという事は理解出来る。

 部屋数も俺の実家よりも多いのだが、その一つ一つも凄く広くなっているのだ。一番大きい部屋は俺の実家の敷地がすっぽり入ってしまうのではないかと思ってしまうくらい広くて窓も大きく開放感が凄いことになっていた。


「あの、なんでこんなに広くて開放的な部屋があるのかな?」

「ココは憩いの場だからね。お兄さんが何かお店をやりたいって言うんだったら自由に使っていいからね。必要なものがあったら何でも言ってくれていいんだけど、全部無料でやってもらわないと駄目だからね。お金やモノを貰ったりしたらダメだからね」

「それってどういう事?」


「だって、お兄さんの仕事はこの学校の生徒に奉仕する事でもあるんだからね。それに対して更に対価を要求するってのはダメだと思うんだ。対価を支払う価値があるくらい特別なことをしてくれるって言うんだったら別だと思うんだけど、お兄さんはそんな特別なことなんてしてくれたりしないようね?」


「まあ、ずっと引きこもっていた俺にそんな技術なんてないからな。話を聞くくらいしか出来ないと思うし」

「そうだよね。お兄さんに出来ることを出来る範囲でやってくれたらいいからね。私もお兄さんが無理せずに出来ることをやってくれた方が嬉しいからね」


 どの部屋も大きい窓がついているので開放感が凄かった。さすがに風呂とトイレは換気用の小さな窓で曇りガラスになっているのだけど、それ以外の部屋は採光用にしては大きすぎると思えるような窓になっていた。


「新学期が始まるまでまだ少し時間もあることだし、お兄さんの部屋を決めるのはゆっくりでいいからね。どの部屋を選んでも大丈夫だけど、さすがにお風呂とかトイレで暮らそうなんて思わないよね?」

「そこは住む場所ではないでしょ。俺だってそれくらいはわかってるよ」


「それなら良かった。じゃあ、私はいったん自分の部屋に戻ってるね。何か必要なものがあったら各部屋に置いてあるノートパソコンから連絡してくれていいよ。通販とかも出来るようにしてあるんで遠慮せずに何でも頼んじゃっていいからね」


 遠慮せずに何でも頼んでいいと言われても欲しいものなんて特にないんだよな。とりあえず、この家がどんな間取りなのか確認するためにも全部の部屋を見て回ることにした。


 廊下を端から端まで歩くだけでもいい運動になってしまうくらいの長さがあり、廊下の左右にはそれぞれ部屋があるのだが広さはそれぞれ異なっている。


 俺が暮らしていた部屋よりも広い部屋しかないのでどこを選んだとしても今までのような生活と少し違った形にはなりそうだ。実家も特別狭いという感じはしなかったけれど、さすがにこの家と比べるのは比較対象としておかしいと感じてしまった。


 あの少女が言っていたように生徒さんたちのために何か店的なものを始めるのもいいかもしれないなと思っていたけれど、料理も何も出来ない俺に飲食店は無理だと思うし雑貨屋なんてのも向いてないだろう。商品が無料だとしても気に入ってもらえるようなものを俺が選ぶことなんて出来やしないだろうな。


 それにしても、各部屋の扉に鍵がないのはまだ納得できるのだけど、なんで玄関扉にも鍵がついていないのだろう。ココに入ってきた時も玄関の鍵を開けた形跡はなかったと思うし、扉を開けてみても鍵らしきものは全く見当たらなかった。


「お兄さんはもう住む部屋決めることが出来たかな?」


 俺は驚いて後ろを振り返ったのだが、そこに立っていたのは笑顔を浮かべた私服姿のシスターだった。年齢がわからないので小さな子供のように見えてしまうのだが、女児服を着ている姿も不思議と違和感がなかった。シスターの服も違和感がなかったと思うのだが、今の服装の方が似合っているという事もあって今にして思うとシスターの服は少し違和感があるように思えていた。


「あれ、私の声が聞こえてないのかな?」

「ごめん、後ろに誰かいると思ってなかったから驚いちゃってたよ。部屋はまだ決めてないんだけど、一番小さい部屋にしようかなって思ってるんだ。小さいって言っても俺が住んでいた部屋よりも広いんだけどね」


「驚かせちゃってごめんね。お兄さんが夢中になってドアを見てたから何してるのか気になって声かけちゃったんだ。小さい部屋なんて選ばないで大きいところを使えばいいのに。この家はお兄さんのためにうまなちゃんのパパが作ってくれたんだから好きなところを使っていいんだよ。でも、お兄さんのために作るんだったらお兄さんの好きな感じの間取りにしてもらえばよかったのにね。お兄さん的にもその方が良かったって思うよね」


 俺の好きな間取りで作ってもらえるというのは魅力的だと思うけれど、隙に作っていいと言われたところで俺が思い描くことが出来るのは実家のような家しかないので面白いものは出来ないな。そもそも、面白い家というのが何なのかわからないけれど、住み慣れた実家の間取りが一番しっくりくるというのは間違いではないと思う。


「それとは別に気になってることがあるんだけど、この家って玄関に鍵がついてないみたいなんだけどオートロックなのかな?」


「この家は学校の敷地内にあるから鍵なんてかけなくても大丈夫なんだよ。ほら、警備員さんたちがずっと巡回してくれているから泥棒とかの心配はないんだ。お兄さんに相談に乗ってもらう時のことも考えると家に鍵がついていない方が良いと思うってうまなちゃんが押し切っていたんだけど、その事を聞いたみんなもうまなちゃんの意見に同意はしていたよ」


「さすがにそれはおかしいと思うけど」

「大丈夫だって。お兄さんの命を狙うような人なんてこの学校にはいないからね」


 俺が気にしているのは命を狙われる心配ではなく、毎日ちゃんと眠ることが出来るのだろうかという事だ。俺は小さな物音でも起きてしまうようなタイプなので寝ているときに誰かが入ってきてしまうと飛び起きてしまうような気がしているのだ。


「お兄さんが心配しているようなことなんて何も起きないからね。だって、ココは学校なんだよ」


 シスターの言っている事と俺が思っていることは一緒ではないと思うのだが、それをココで言い合ったところでどうしようもないと思う。


 俺が言いたいことはそういう事ではないという事だけでも伝えた方がいいのかもしれないけど、玄関ではないところから出入りを出来るような家では玄関に鍵をつけたところで焼け石に水なのではないかと思ってしまったのだった。

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