31.逃げ遅れた冒険者を救助せよ!
何事かと思い森から転がり出てきた男の方に駆け寄ったら、男の方もこっちを見つけて寄ってきた。
「シルバーウルフの群れに襲われたんだ!普段なら森の奥から出てこないのに…。最初の攻撃で足をやられた仲間がいてパーティーで撤退が出来なくなったんだ。仕方なく一番足の速い俺が助けを呼ぶために逃げ来てたんだ。頼む、俺の仲間を助けてくれ!」
まともな冒険者っぽい装備をしている男が必死の表情で助けを求めてくる。これで俺たちがGランクのコンビだと知ったらどうなるんだろう。絶望して死んじゃうんじゃなかろうか。
「シルバーウルフの群れか、厄介だな。」
それっぽく言ってみるが、シルバーウルフが何なのかわからない。多分狼系のモンスターだとは思うが。俺なら助けに行って、勝てそうになくても魔王様召喚で蹴散らせるはず。けど、魔王様はめんどくさいから呼びたくないなぁ。
「シルバーウルフって強いの?」
アリサの初心者丸出しの質問、ボロボロになった男は希望を打ち砕かれ絶望的な表情に!
「シ、シルバーウルフは単体ではEランク、群れになるとDランクのモンスターだ。悪い、俺はこれから街へ戻って助けを呼んでくる。」
俺たちでは助けられないと判断したのであろう、泣きそうになりながらも街へ向けて走り出そうとするボロボロの男。しかしここまで来るのに力をかなり使ったのだろう、ヨレヨレでまともに走れていない。
「アリサ、俺はこれから森へ入ってみる。アリサはその男にこれを飲ませて冒険者ギルドへ連れて行ってくれ。」
そう言いながら俺はアリサに中級回復ポーション(高品質)を渡す。
「わかった。ヒデキはちゃんと生きて帰ってきてね。私のヤク草持ってることを忘れないでね。」
アリサから優しい言葉をもらい俺は森の奥へと駆け出す。駆け出したはいいが、3分も進むとはっきりと踏み固められた道はなくなる。一応3方向くらいに道っぽいものは続いているが、どこに向かえばいいのかわからない。まぁ、生活に使ってる道路ってわけじゃないから、常に同じところが踏み固められて道になってるわけないよな。
「仕方ない、ここなら誰にも見られていないから大丈夫だろう。『召喚、ジェノサイドウルフのポチタロウ』」
詠唱完了直後、地面に現れた魔法陣の中から、一匹の狼型のモンスターが出現する。
「おう、久しぶりだなイチロー。」
喋れる狼のポチタロウ君だ。毛並みは銀色だからシルバーウルフもこんな感じなんだろう。召喚のスキル上げをしている最中に呼び出したんだが、初めて言葉を話せるモンスターが出てきたのでついつい名前を付けて仲良くなってしまった。
「久しぶり、ポチタロウ。早速だが頼みがある。この森でシルバーウルフの群れに襲われている人間のパーティーがいるらしい。そいつらを見つけ、シルバーウルフを倒すのが今回の目的だ。」
事情を話すとポチタロウは辺りを窺うしぐさを見せる。
「わかった。報酬はカレーライス、玉ねぎ抜きだ。一直線にいくから着いてこい。」
言うと同時にポチタロウが走り出し見えなくなる。
「クッ、速すぎるだろ。」
俺は熟練度が4%に上がっていた探知の範囲を広げ、ポチタロウの追跡に専念する。さらに、普段は使っていない神速のスキルをアクティブにし、遅れないように速度をあげてポチタロウの後を追う。
追跡開始から5分、かなりの速度で進んだがシルバーウルフの群れは見つけられない。しかし、追跡の途中だが固まってガタガタ震えている冒険者たちを発見する。どうやら全員それなりの傷を負っているようだ。
「大丈夫ですか?私はフンデルの冒険者でヒデキと言います。シルバーウルフの群れがいると聞いてきました。何か知っていることはありませんか?」
冒険者たちの一人が震えながら無言でポチタロウが向かった方向を指さす。やはりあっちの方向にシルバーウルフの群れがいるのか。
「ありがとうございます。もしかしてみなさんもシルバーウルフの群れに遭遇したんですか?」
無言で全員が何度も頷く、群れに遭遇したのがよほど怖かったようだ。
「わかりました。今、仲間が冒険者ギルドへ助けを呼びに行っています。撤退すれば途中で合流できるかもしれません。あと、よければこれを使ってください。」
俺は中級HP回復ポーション(高品質)を10個渡し、再びポチタロウを追って走り始める。既に探知の範囲からポチタロウが消えているため、正確な方向はわからない。ポチタロウを召喚しなおすことも考えたが、救助対象のパーティーを襲っているシルバーウルフの群れと交戦中の可能性もあるのでやめた。
後は、今走っている方向に冒険者のパーティーがいることを願うだけだ。この突発イベントを絶対クリアしてやるぜ!




