19.お嬢様の野望
さて、主の腕輪の説明はこれで良いとして、厄介なのが従の腕輪なんだよなぁ。こっちも透明だった宝石の一つがピンク色になっている。レベルアップごとに同じように進化するなら、相当なチートな腕輪だな。
鑑定
従の腕輪 Lv2
→主の腕輪と対になる腕輪
主の腕輪に連動してレベルが上がり、能力が進化する。
主の腕輪の装備者に直接的な危害を加えられなくなる。
主の腕輪にMP回復量の一割を献上する。
スキルを一つ主の腕輪装備者と共有できる(Lv2)。
共有可能スキル
・体術Lv12
・剣術Lv12
・槍術Lv12
・弓術Lv12
・斧術Lv12
・盗聴Lv12
・瞑想Lv12
・毒耐性Lv12
・MP回復Lv12
・HP回復Lv12
・ハイドLv12
・ステルスLv12
・魅了耐性Lv12
Lv10が上限っぽい世界でLv12とか。共有もどんな感じになるのかわからんし。けど、バレた時のことを考えると話すしかないよなぁ。とりあえず害が無さそうな瞑想でも共有してみるか。
なんて考えてたら腕輪の宝石の色が一つピンクから青に変化した。
鑑定
従の腕輪 Lv2
→主の腕輪と対になる腕輪
主の腕輪に連動してレベルが上がり、能力が進化する。
主の腕輪の装備者に直接的な危害を加えられなくなる。
主の腕輪にMP回復量の一割を献上する。
主の腕輪の装備者に瞑想Lv12を共有(Lv2)。
おっと、ヘルメス様に言う前に共有されてしまった。だが、この状態でヘルメス様を鑑定しても瞑想Lv12は見当たらないな。どうやら周囲にバレる危険性は低そうだ。
「ヘルメス様、従の腕輪もレベルアップし能力が進化したようです。」
「従の腕輪も進化したのですか?主従の腕輪は効果の弱い外れ古代の遺物と言われていたので、主の腕輪が進化したことも、正直なところまだ信じられないのですが。」
まぁ、普通なら従の腕輪装備者からMP一割吸い取るのと、直接的な危害を加えられなくなるだけの腕輪だからな。間接的になら危害を加えられる時点で、腕輪の使いどころがかなり限られてしまう。
「そうですね。私のMP回復の速度が早かったので、腕輪の真の力を引き出せたようです。」
「イチロウ様はそんなに高レベルなのですか?スキルのMP回復がLv10でも秒間20しか回復しないはずです。スキル以外ですと平均してレベルの一割が秒間のMP回復量と言われています。失礼ですが、イチロウ様がそこまでとは思えないのですが…」
まぁ、ヘルメス様には簡単に背後取られちゃったからね。そう思われるのも仕方が無い。ここらへんは実践経験が皆無なのが原因なんだろう。
「ヘルメス様、私は瞑想スキルのレベルが高いので、MP回復速度が早いんです。今回の従の腕輪の進化で瞑想Lv12をヘルメス様も使えるようになったはずなので、試していただけますか?」
「え?瞑想Lv12?Lv2では無くて?本当に私が瞑想スキルを使えるように…?あ、本当に使えるみたい。鑑定、鑑定しなくちゃ。」
ヘルメス様がいきなり部屋を出ていこうとするので、急いで俺は引き止める。
「ヘルメス様。私も鑑定しましたが、共有されたスキルは鑑定では見えないようです。」
「え?ではどうやって確認すれば?」
「MPの回復速度が約20倍になるので、瞑想スキルの使用前後でMPを確認すればわかると思います。」
「確かに、そこまで回復量が早いなら感覚でもわかるはずですね。今大体半分くらいだから、いつもなら5分位で全快。では、瞑想いきます!」
瞑想の為に目を閉じたヘルメス様。数十秒後、ヘルメス様の目がクワッと開かれ言葉が溢れ出す。
「こ、これは!あっと言う間にMPが全快に!信じられない!伝説級のポーションに必要なだけの浪漫コンクリート!さらに無尽蔵のMPを持つイチロウ様!そして腕輪のおかげで私もMP使い放題!私の価値が変わる!政略結婚で見知らぬオッサンに嫁ぐ私の人生が変わる!これはもう手放す訳にはいかないわ。イチロウ様の性格は…今の所おかしな所は無いし、外見も中の上ってところね。十分妥協の範囲内だわ。上手く話をつければこの街で子爵位で独立することも可能よね。逃さないためにもできる限り早く婚約を。いえ、既成事実を作って一気に結婚まで…」
「あ、あの、ヘルメス様?」
心の声がダダ漏れですよ?
「はい、イチロウ様。式はいつにしますか?」
大変!ヘルメスお嬢様が暴走してる!