硝煙煙る戦場 5
皆が振り返りネシェルを見ると彼女はそっぽを向く。
「あんまみんなで私を見ないで恥ずかしい」
「恥ずかしがり屋なんだな」
「別に、どうだっていい。早く行きましょうよ」
大きな川沿いにある港町に入る。
苔生してはいるものの最初に訪れた町と同じように、赤や黒っぽいレンガ作りの建物が並ぶ異国情緒ある廃墟の街並み。
戦闘もなくアンバーはそんな風景を楽しんでいた。
グネグネとうねっている大きな道の先に川が見え皆は真っすぐすすむ。
「交差点には気を付けろ、不意な一撃があるかもしれない」
町の中も今までと同じように静まり返り閑散としていた。
黒い人形たちが揃ったときについた足跡が、道路に無数についているくらいでこの町にも目立った汚れはない。
「そういえば、背中に背負ってたタンク爆発したな」
「確かに、ただの水なのにボフンと。冷却用の水にしてはなんか変な感じだ。そもそも蒸気云々だから動力用の水なのかもね」
「まぁあまり脅威ではないとわかったし、数がわらわら来るんだろうな」
「黒いから蟻の群れにのまれる感じになるのかな。まぁ武器がちゃんとした武器ってのがいいよね。苦しまずにとどめが刺されそう」
「本当に昨日の世界がひどかったんだな……」
「死んだときの記憶があったらそれだけで発狂しそうだけどね、本当に見ている方も地獄だった、電動ドリルが片腕に何十か所も刺さるとかスプラッターすぎだよ。うぅ、思い出しただけで背筋が……」
前を歩いていた者たちが立ち止まりベニユキたちは何があったのかを確かめるため前方を見た。
「あの黒いマネキンだ」
道の真ん中をゆっくりと歩いてくる機械の兵士の姿を見つける。
先ほど破壊したものと同じように頭と肩に黒い外の色が塗られていて、皆が銃を構えると兵士は足を止めた。
『君たちは何者だ、どこから来た。この土地の人は途絶えて等しい、大海の向こう側か?』
目の前に立つ機械が発する音声に皆が口をそろえて叫んだ。
「「喋った!!」」
目の前に立ちはがかるのは一機だけ。
武器を構えることもなく腕を組み仁王立ちをしている。
『ここへと来た目的はなんだ、我が女王に近づく理由を教えてもらおうか?』
グリフィンが相手の出方をうかがい、テオやホルテンが辺りを見回しどこかで誰かが見ていないかを探す。
銃を構えいつでも戦闘できる用意をしていたが相手に攻撃してくる様子がなかったようなので、キュリルやテオたち何人かだけが銃を構えて相手を警戒しグリフィンはその後ろで話を聞く。
「女王?」
「今までと違う感じだぞ、やばい感じがする。こいつを倒して、早く船のもとまで行こう」
道の真ん中に立つ黒い機械は微動だにせず音声を発し続けている。
『すでに君らの持つ武装については調べた。次は先ほどのように容易くはッ……』
話の途中でネシェルが長い銃身の銃を構えてその機体を撃ち抜く。
体の中央が赤く溶け背中に背負った水の入ったタンクが熱せられ急速に膨張して爆発する。
皆が驚き彼女を見ると彼女はそっぽを向いた。
「おいおい、まだ話していただろう」
「知らない、さっさと終わらせて帰ろうよ。もたもたして昨日みたいになられちゃ精神やんじゃう」
マーキングされた兵隊を倒してしまったためやむを得ずまた進みだす。
念のためほとんど溶けてはいたが倒した機体を調べるが、先ほど倒したものと同じで新たな発見はない。
「量産型の様だ、他と同じで変わったものはない。違うのは色だけの様だ」
機械を調べていたウーノンにアンバーが話しかける。
「この機械はなんか綺麗だよねぇ、別にデザイン性をほめているわけじゃぁ無いよ。ほら、錆びてないし土埃も被っていない。まるで新品の様だといいたいんだ、どこかに工場があるのかねぇ?」
「最初の一台を破壊した時にどこかで保存されていたものが、一斉に起動したのかもしれないな」
町に入ると高い建物に囲まれ町に入る前まで見えていた大きな川も見えなくなるため、船が止まっていた方向を知る為に白い銃を向けて方角を調べる。
グネグネとした大きな道の先には機械の兵隊が待ち構えており、向こうもこちらを発見し次第走り出してきた。
「来たぞ! また整列して」
「また端から薙ぎ払え!」
先ほどと同じように斬秋の兵隊たちは腕を伸ばし腕に仕込んだ針のような矢を飛ばしながら接近戦に備えて槍を構えはじめる。
町の中に入り障害物も増えたことでベニユキたちはすぐに建物の影に身を隠す。
先ほどと違う点は腰のあたりから白い煙を吐き出し始めたこと。
「なんだ?」
それは勢いよく広がりあっという間に周囲が白い煙に包まれる。
開けていた町の外と違い港町は建物で囲まれていることもあり、白い煙は建物で大きく広がることもなく限定した範囲に留まり濃い濃霧を作り出す。
「何も見えない」
「これ、毒ガス? いや違う、水か! 水蒸気!」
困惑しながらも最後に敵を見た方角に向かって銃を放つ。
タンクが爆発する音がいくつか聞こえるが白い霧は広がり続け、その場にいた全部の敵を倒したのかどうかがわからない。
さっきは銃声と遠距離戦で気が付かなかったが、向かってくる機械の兵隊は足音をほとんどさせずに歩いていた。
そのため、霧の中に適当に撃ち続けていたテオの前に不意に現れる槍の穂先。
「うぉ! なんだ!」
脳天へと向かってくる金属の刃先を隣りにいたキュリルが叩き落としへし折り、そして一歩大きく踏み込み手にしたバットを全力で振る。
しかし霧を掻くだけで槍を持っていた機械の兵士を捕らえることはできなかった。
「外した、でも近くにいる」
すぐに皆はバットや剣でドアや窓を壊して近場の建物の中に入り込み、敵も味方も識別できない濃い霧から逃れる。




