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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
2章 --時計針止まるアークエンジェル--
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追跡者 3

 オートマトンが箱舟へと戻っていくのを見て、ベニユキたちはエレベーターの前に集まる。

 エレベーターはオートマトンを乗せて上がっていったあとで空中に浮かぶ箱舟の入口を見上げた。

 振り返れば先ほどの赤く光る剣を持って迫ってくる人影が二つ。


「向かってきている!」


 追手に銃を撃つと車両の陰に隠れて銃を撃ち応戦してくる。


「牽制は長くは持たないぞ」

「急いで、早く降りてきて」


 周囲に乗り捨てられた車両は数少ない。

 それでもなんとか隠れられる場所に皆で身を寄せ攻撃を耐え忍ぶ。

 襲撃者の誰かが水に足を踏み入れたのかベニユキたちかと関係ない場所で水路から白い魚が飛び出してくるのが見える。

 怪物の相手に気を取られベニユキたちに向かっての銃撃が弱まった。


「怪物に襲われている」

「そのまま全滅しないかな」


 箱舟の入口から鎖の音が響きエレベーターが降りてくる。

 それを見てベニユキたちは盾にしている小さな車から離れエレベーターへと向かって一目散に走りだした。

 追手はまだ水中からの襲撃に対処している最中で銃撃はすくない。

 皆少しでも軽く走りやすいように持っていた銃や弾倉など荷物になりそうな重たいものを捨てていく。


「降りてきた!」

「走れ、走れ!」


 体に数発の被弾をし血を流しながらもベニユキはエレベータへと向かう。

 エレベーターが地面の下り折りたたまれていた手すりが起き上がる前に皆が飛び乗った。


 水中からの怪物を倒したか撃退したのか降りてきたえれべーったーに向かう姿を見られたのかベニユキたちに向かっての追手の攻撃が再び始まる。

 走って向かってくる何本もの赤い帯を引くの残像を纏った剣が見え、追い返すための武器を持たないものたちは足を滑らせながらもエレベーターへと向かって走った。


「早く上げて!」


 我先にとエレベーターに飛び乗ったテンメイが叫ぶ。

 近くにあった車両をキュリルがバットで思い切り殴り車両が追手の方へと転がっていく。

 皆が乗って少し遅れて鎖が巻き取られはじめエレベーターが地面を離れる。


「はやくはやく!」


 追ってからの銃撃が一層強くなり床に伏せた。

 外の景色が見えなくなり完全に世界から離れたとわかると顔を上げ大きく息を吐いた。

 肩を押さえるマルティンは起き上がりその場に座る。


「最後のあいつらは何だったんだよ……」

「明らかに他の化け物の動きじゃなかったね、銃の扱いにも慣れてるみたいだったし」


「撃たれたところ大丈夫か」

「ああ、痛むけど弾は抜けていったみたいだ。口径も小さく手当すればすぐ血も止まるかな」


「ここまで戻って来て死ぬなんて笑えないしな」

「あの距離で口径の小さな弾が体を抜けるってのはどうなんだろうね」


「連射していたし硬い怪物とか倒しやすそうだよな」

「奪うなんて芸当できないだろう」


「それもそうか」

「ところでベニユキ君こそ怪我は? 血が出ているようだが」


「かすったのが何か所かあるけど、骨や内臓に達するような深い傷はない」

「お互い今日もなんとか戻ってきたか」


 ベニユキたちのそばでどこかで銃弾に被弾したエレオノーラが指を飛ばされた手を押さえながら大きく息を吐く。


「ははは、助かった。イテテ」

「エレオノーラ! その指、銃弾が当たったのか」


「大丈夫です、ほら明日には」

「まぁそうだけど、止血とか悪化しないように治療はしておいた方がいい」


「はい、そうですね。この手だと難しいので手伝ってくれますか? あ、大怪我した人いないか見てきます。大量出血は危険ですから。ベニユキさんの傷を見せてください」

「自分の心配も」


 礼拝所まで上がってくると怪我人はすぐに自分の部屋へと帰っていく。

 最後の銃撃で傷を負った負傷者が多く皆が真っすぐ部屋へと戻っていき無事だったのはテンメイとキュリルの二人だけ。


『皆さんお疲れ様です。この後の予定はございません、食事をしくつろぎごゆっくりお休みください』


 聞こえてくるミカの声にベニユキが尋ねた。


「待ってくれ、俺たちを銃で撃ってきたのは何だったんだ? あの世界に人間か?」

『明日もまたお願いします』


 それだけ言うとミカは沈黙し尋ねても返事は帰ってこない。

 足元を見れば黒い泥の足跡と皆が流した血がエレベーター全体を赤黒く染めている。

 ベニユキも舞台を降り自分の部屋へと向かおうと知ると後ろからブラットフォードに声をかけられた。


「なぁ、ベニユキ君。これをどうしたらいいかわかるか?」


 ブラットフォードがベニユキに見せる。

 赤く光ってはいなかったが追手が持っていたあの剣のような物。


「どうしたんだそれ?」

「キュリルが倒した奴のを私が拾った、どさくさだったが。持ってきたは良いがどうしたらいいのかわからなくて」


「それならその辺においておけば掃除ロボットが回収していってくれる。解析して明日には新しい武器として並ぶかもな」

「そうか、なら持ってきてよかった。このへんにでも置いて行こう」


 長椅子の上に剣を置き彼女はそのまま廊下を目指し進む。

 二人の目の前を掃除用ドローンが四台ほど通り過ぎていく。


「ブラットフォードも休むのか」

「ああ、こんな腕だし。腹が減ったが痛みの方が辛い、歩けるうちにへやにもどるよ」


 切り落とされた腕を見せブラットフォードとベニユキは礼拝堂から出ていった。


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