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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
2章 --時計針止まるアークエンジェル--
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暗い暗い闇の底 6

 箱舟から持ってきた白い銃が緑色に点滅し示す先に建物が見えてくる。

 天井に達するほどの巨大な扉とその周囲にある無数のバリケード、それと二人乗りの車よりずっと大きな廃棄された戦闘車両が並ぶ。


「これまた初日みたいなバリケードの跡……、建物の中で戦闘になりそうだ」

「車両の中を漁るよ、何か武器があるかも」


 扉は大きく開け放たれており奥に周囲の住宅とは違う何かの施設のような建物が見える。

 背後にはいまだに巨大ネズミの気配があり物音が聞こえていた。

 天井に人の髑髏の置かれた車両の中を見る。

 すでに中身を持ち去られた車内は荒らされた跡があり、積もった埃以外めぼしいものはない。


「狼みたいに追いかけて消耗させ気を緩めたときに襲ってくるか」

「つぶしに向かおうとしても向こうは散りじりに逃げるだろうな。袋小路に追い込めれば違うんだろうが土地勘もないし」


「武器とかになりそうなものはない。というか機械部品も抜き取られてるな、結構前に」

「外れか、人も多かっただろうし使えるものはここの最後の住人達に持ち去られてたか」


「さて、準備はいいか? この先建物内の狭い通路内で、この悪趣味ないたずらをした化け物と戦うことになる」

「パニック起こして味方を撃つなよ! 不意な攻撃でも冷静に狙って撃て」


 門を通り過ぎると敷地内は誇りに埋まった無数のゴミが散らばっており進むたびにバリバリと音がして何かを踏み砕く。


「枯れ木みたいな何かを踏んでます、歩きづらい躓く」

「朽ちたバリケード? いや櫓か何か立ってたのが時間がたって崩れたのかも、何だろう」

「あんまり考えずに進めテンメイ、エレオノーラ。足元じゃなくて先と天井を警戒するんだ」


 敷地内に止められている装甲車を見てテオが呟く。

 人か何かの攻撃を想定していたのか建物の窓には鉄の柵が取り付けられている。

 一同は建物に入った。


「奥に檻が見えるな。イスとテーブルもある、留置場だったのか?」

「あるいは刑務所か、にしては武器が物騒だな」


 建物の中は狭くなりライトで照らされる空間もずっと狭くなり物陰が多く光の届かない死角が増えた。


「狭いな」

「それに物が邪魔で視野が狭い、奇襲される可能性が大きいな」


「施設の明かりもつけられないのか?」

「無理だろう、人が放置してどれだけ時間がたっているのやら」


 ブラットフォードが振り返り後ろからネズミが追ってきていないかを確認し建物へと入る。

 ロビーには武器のような物が並んでいた。

 壁にかけられている大きく重たい銃のような物、それとそのそばに置いてある肩掛けのひもが付いた小型のエンジンのような物。

 ベニユキがテオに尋ねる。


「火炎放射器か?」

「だったら、燃料タンクが置いてあるんじゃないか? 火炎放射器だったとして地下で使っていいものでもないだろ」


「ならガス兵器でもないよな」

「ガス兵器って」


「前に相手をしたことがあったな、手足にチューブを伸ばして無色無臭のガスをばら撒いてた」

「そうなのか」


 皆が武器のような物に集まりライトで照らして調べる。


「小型の発電機にも見える。病院とかで使っている発電機をもっと小さくしたような」

「なら、レールガンとかか?」


「こんなコンパクトに? 流石に無理だろう、そもそも人が抱えて撃つには衝撃が強すぎる」

「持っていくか?」


「帰りでいいだろう荷物になる」

「そうだな」


 武器を調べ終えると奥へと進み始めた。

 狭い通路、四人が横並びで歩く程度の通路を一列になって進む。

 戦闘慣れしているキュリルとテオ、それにベニユキとマルティンが最前列で曲がり角の警戒をする。


「そこそこ進んだけどまだ奥があるのか。どうする敵も出てこない、別れて探すか?」

「目的地は一つだし何がいるかわからない、固まっていこう」

「私も賛成、人が多ければそれだけ明かりも多い。その分広い範囲を照らせるから」


 時折立ち止まり白い銃をあちこち向けて目的地を探す。


「近いか?」

「この上見たい、どこかに上に上がる階段がないか探さないと」


 エレベーターがありその横に非常階段があり、上の階を警戒しながら階段を上がる。

 階段を上がり切り皆が階段を上がり切るのを待ち建物内を移動し始め、テオがキュリルに尋ねた。


「この階か?」

「そうみたい、この奥。壁に穴開けていけばすぐ着くかも」


 そういってキュリルがバットを振り回す。


「建物も老朽化してる、天井が崩れてきて生き埋めになるぞ」

「冗談だよ、流石にわかる」


 白い銃は緑色に光っている。


「とまれ!」


 通路の先に立つ怪物の姿。

 大きな鼻と口を持つ二本足で立つ人型の何か。

 体のバランスがおかしく太く大きな腕に短い足、服からはみ出る全身が短い毛でおおわれている。

 目がある場所は何もなく短く体毛と同じ白い毛髪で覆われていた。

 銃撃を受けて人型は倒れ皆が倒した怪物のもとへと歩いていく。


「随分背が低いな。うぁこいつ目がないぞ!」

「青白いな、こいつはなんだほとんど人じゃないか」


 ガーネットたちが後ろから怪物を覗いていると、通路の奥の暗闇の中から叫び声のような物が通路の奥から響く。

 それに呼応するように他の場所からも叫び声のような物が響いてきた。


「何だ?」

「怪物の鳴き声か」


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