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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
2章 --時計針止まるアークエンジェル--
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暗い暗い闇の底 7

 

 地下全体に響き渡るような空気が揺れるほどの咆哮が収まり帰って来る静寂。

 そして静かに聞こえてくる無数の足音。

 咆哮に呆けていた皆は足音を聞いてライトと武器を構えて待ち構えている皆にマルティンが叫ぶ。


「急げ、この近くの部屋だ」


 怪物の死体を跨いで通路を進み白い銃を向け部屋を探した。

 白い銃の緑色の点滅が消え完全に点灯する。


「ここだ!」

「早く早く、だんだんこっち来てる! 音が大きくなってきてる」


 聞こえてくる足音に焦りを感じたブラットフォードが扉へと手を伸ばす。


「鍵がかかってる、開かないぞ!」

「錆びてるんじゃないのか!?」

「どっちでもいい、離れて!」


 無言で前に出てきたキュリルがバットを振りかぶり思いっきり扉を叩く。

 扉は拉げ部屋の奥へと転がっていきなだれ込むようにベニユキたちは部屋の中へと飛び込んだ。


「なんでみんな入ってくるの!」

「目的のものは?」


 部屋に置かれていたのは何台もの大きな箱。

 一つ一つが大人一人分の大きさがあり白い銃はその一つに反応していた。


「えぇ……モノリスっていうだっけ」

「これを持ち帰るのか?」

「重そう、ですね……」



 皆でその黒い物体を囲みキュリルの掛け声でマルティン、ベニユキ、テオ、ブラットフォードが箱を持ち上げる。


「四人でもいけなくもないか?」

「でも四人、戦えなくなるな」


「俺らが戦いから離れるのはよくないんじゃないか?」

「まぁそうだな。誰かに変わってもらうか」


 箱を一度降ろすとブラットフォードが皆に尋ねた。


「ほかの誰かと変わるか。戦いたくない奴、誰か、時間がない素早く」


 その問いにガーネットたち数人が手を上げベニユキたちに変わって箱を運ぶ役割を受け持った。

 ガーネットとエレオノーラを含めた六名で箱を持ち、それを見たベニユキがマルティンと頷き合う。


「これならいけるか。よし、帰ろうか。こんなとこから出てうまいものが食いたい」

「足元も不安定で長時間運んでもらうのは難しい、エレベーターの階段で別の誰かに変わるべきだよね」


「そうだった、よくわからない大きな怪物がいるだろあれにも注意しないとな」

「言われなくたってわかってるさ」


 黒い箱をしっかりと持たせたことを確認しベニユキはライトのついた銃を構えて静かに待っていたウーノンに尋ねる。


「準備ができた帰れる、敵は?」

「足音は聞こえる、待ち伏せているんだろう」


「なら強行突破か」

「手榴弾を投げる、爆発させたらそれを合図に行こう」


 ウーノンがテオやブラットフォードが持っていた手榴弾を預かり部屋の外通路の左右に投げる。

 それを合図にキュリルとテオ、マルティンが飛びだす。


「急ぐぞ! しっかりついてこいよ輸送隊! それを壊したらどうなるのかわからないんだからな!」

「はい!」


 遅れてベニユキとブラットフォードが部屋を出る。

 銃声が響きた通路の左右にライトに照らされ白い怪物の姿が白い体に赤いまだら模様をつけて闇の中に消えていく。


「追い払えているな、このまま進むぞ!」

「倒した怪物が倒れている、転ぶなよ!」

「足元見えないんですから無理です!」

「転がっている奴は私がバットで弾き飛ばす」


 白い怪物の死骸を踏み越え来た道を引き返す。


「もうすぐ階段だ」

「囲まれたからってパニック起こして我先に逃げようとするなよ、そういうやつは必ず報いを受ける」


 階段にまでやってくると白い怪物は姿を消し銃声が鳴りやむ。


「引いたか、やっぱ知性があるんだろうね」

「ネズミと同じように後から付け回されるか?」


「かもね、でも今回は銃が効く相手だよ」

「そうだな、それだけで十分助かるな」


 一段一段とゆっくり時間をかけて階段を下る黒い箱を担いだエレオノーラたちが降りてくるのを待つ。


「いないな、足音も聞こえなくなった。銃の脅威を知って完全に諦めたか?」

「安心はできない、ここに入ったときも言ったけど隠れるところが多いからね。それに相手はネズミより賢そうだ」


 入口に並ぶ武器のような物を見てテオが尋ねる。


「どうするこれ! 持って帰るのか!」

「余裕があれば!」


 何人かが武器を持ち帰ろうと手を伸ばす。

 モノリスの運搬していたエレオノーラたちと速度を合わせて一同は建物を出て再び開けた閉鎖空間に出た。

 駐車場のような空間の先に開いた門がありその門の前には白い怪物たちが待ち構えていた。


「撃て!」


 まだ怪物たちとは距離もあるにもかかわらず、暗闇で蠢く白い影たちが波となって動き出す前に誰かが叫び皆が同時に銃撃を開始し広い空間に銃声が鳴り響く。

 怪物たちは無謀にも突撃してくることはなく戦闘車両などを盾に隠れ銃撃から身を守る。


「みんな上!」


 キュリルの声に振り返れば建物の壁に張り付くようにして白い怪物が迫ってきていた。

 光が上を向くと車両の隠れていた怪物たちが姿勢を低くして二本の脚で立って向かってくる。


「よく気が付いたな!」

「息の音が聞こえたの!」


 壁から落ちてくるのに交じって生きている怪物が銃を撃つ何人かに飛び掛かり、転倒させそのまま腕でつかんでベニユキたちが箱を持って出てきた建物の中へと消えていく。


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