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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
2章 --時計針止まるアークエンジェル--
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偶像創造 5

予約投稿の日時を間違えました。

 

 攻撃を受け建物の中の白い影は消える。

 何人かはどこに何がいたかわからず不安な表情をして各々武器を構えたまま周囲を見回す。


「さて、死んだかどうかわからないが誰が見に行く?」

「よく見えなかったけど今の人っぽくなかったか?」


「そう見えたな。ここにきて普通の人間が相手だというのなら俺は悪人か。では、次何かが出てきたら両手を上げて挨拶してきてくれ。特にベニユキ君が言っていた怪物などに」


 エレオノーラが叫ぶ。


「白い人影です! あれです私が山で見たのは!」


 彼女はグリフィンが銃撃した町の建物の方を指さす。

 そこには頭の先からつま先まで白い布で覆われた六つの人影の姿。

 ゆっくり歩くように移動し向かってくるのが見え、一同はロープウエイ乗り場の建物を影にしようと一度身をかくす。


「手には武器を持っていないみたいです?」

「服の中に仕込んでいるのかもしれないだろう。義手義足に小型の銃を仕込むなんてよくある手だ」


 ウーノンとマルティンが他に数人連れて建物の中やその周囲に敵がいないかを探しに行く。


「どこのよくある手何ですか?」

「そういう話はあとにしよう。ひとまず、敵の対処が先決だ。敵に見えないというのなら手を振ってフレンドリーにあいさつでもするか?」


「いいえ、何か怖いです」

「なら、今日が初めてを繰り返している者たちの保護をしてもらえるかな」


 血の気の引いた顔で勢いよく首を振るとエレオノーラはガーネットたちの方へと逃げるように離れていく。

 ベニユキはゆっくりと歩くように歩いて向かってくる白い影に武器を向け様子を見る。


「俺が指示を出すまで攻撃は控えてくれ、確認したいことがある。むろん向こうが攻撃してくれば反撃して構わない。自分の命が大事だ」


 グリフィンのチームが前に出て白い影に狙いをつけ、残りが彼らの近くで引け越し気味で銃を構えた。

 武器を向けられても白い人影は止まることなくゆっくりと前進し続け、バットを持ち白い人影を見ていたキュリルが耳打ちする。


「彼らの足元を見てください、浮いています」


 よほど注視しないと気が付かないが、白い影は拳一つ分ほどわずかに地面から離れ浮いていた。

 それでも影は歩くように足を動かしている。


「今回は幽霊と戦うのかな、やれやれ……なんでもありだな」

「ですね。相手が幽霊なら武器は通用しますかね」


 警戒状態のままキュリルはテオの元へと戻っていく。

 入れ替わりに建物の影から向かってくる白い影を見ていたベニユキがやってきて尋ねる。


「どうして撃たない?」

「向こうは武器を持っていないのかわからないが反撃はしてきていない。ならばもう少しこちらに引き付け倒したとき何かしらの情報を手に入れようとな」


 銃撃音が聞こえ始めグリフィンとベニユキが音の方へと振り返る。


「勝手に撃ち始めたか」

「どうするんだ?」


「戦うに決まっているよ、始まったんだからな」


 壁沿いに歩き建物の角へと向かい様子をうかがう。

 白い人影は攻撃を受けて白い靄になり風に吹かれて揺らいで消えていっていてそれを見たグリフィンらが首を傾げた。


「消えた、どうなってるんだ」

「今回は幽霊と戦わされているらしい」


「幽霊……ホログラムとかではなくてか?」

「実態がないんだかわからないが撃つと霧となって四散する、倒した気がせん」


 ベニユキが尋ねるとグリフィンの背後で大きな銃撃音が聞こえ、振り返れば外壁の内側から散弾銃が撃たれた跡が残っている。


「屋内で何かあったか」

「危うく俺の頭が吹き飛ぶところだったな。俺はここを守る、ベニユキ君は悪いが下手に撃つと薄い壁を抜け味方に当たると忠告してきてくれ」


 二度目の射撃音が聞こえベニユキは小走りで建物の中に入る。

 ロープウエイ乗り場は大きな建物で、建物二階相当の天井の高さがあり、食堂に売店に乗車券売り場、乗り込み口などが入っていた。


 部屋に入ってすぐに部屋の真ん中に立って銃を構えるテンメイの姿を見つける。

 彼女が狙っているのはロープウエイ乗り場のお土産売り場で売られていたであろうぬいぐるみが小刻みに揺れながら動いていた。


「なんだよこれ」


 彼女の射撃でズタズタに引き裂かれると、人形は細かくちぎれた綿を散らして床に落ちる。

 ベニユキの問いに少し間をおいて瞼に涙を溜め渇いた声でテンメイが答える。


「私が、聞きたいよ」

「他のみんなは?」


 息を切らせ無言でテンメイが顎で指す。

 商品棚の間でガーネットとエレオノーラが気を失っており、二人を抱えてアンバーが息を切らしている。

 奥の部屋からも銃撃音が聞こえマルティンが大声で指示を出しているのが聞こえてきた。


「この人形はここにあったやつか?」


 答えたのはテンメイではなく気を失った二人を開放するアンバーの方。

 彼女はエレオノーラの持っていた銃を持ち二人を抱きかかえて床に座り込んでいた。

 彼女も戦ったようで近くには銃撃で吹き飛ばされた人形がいくつか転がっている。


「私らがここに入って外が見える窓の方へと移動して、そこでバリケードのようなものを立てようってなったんだ。そしたら動かそうとした陳列棚から人形が飛び出てきてね、この騒ぎさ。力が強くてね、向こうで一人首を捻じられた」


 銃声は続いておりテンメイはその場を動こうとしない。


「棚の角に気を付けて、あと床にいるとは限らないから下だけを見ないように」


 アンバーの助言に発券機の台やパンフレットの置いてある棚などからも距離を取る。

 そしてベニユキはロープウエイ乗り場の車両乗り場への扉へと向かった。


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