偶像創造 6
電力が通っておらず動いていない改札口を通り抜け外へと出る。
「何だこいつ」
車両が止まっている乗り場には、数体の人型の木の塊がグネグネと動きながらウーノンに迫っているのが見えた。
よく見れば鍬や鎌を持った案山子の様で銃撃を受け服や藁の体に無数の穴を開けながら左右に体を揺らし迫っている。
「よけろベニユキ!」
戦いながらもベニユキが現れたことに気が付いたウーノンが叫ぶ。
咄嗟に来た道を戻ると気配もなく鍬がベニユキのいた場所に振り下ろされた。
銃を向けるとそこには撃ち抜かれ穴だらけになった色褪せたバケツを被った案山子。
「人形だけじゃないのか」
案山子の武器を破壊し銃床で穴だらけになった頭を殴ると白い煙を吐いてバラバラに崩れた。
停止している車両の向こう側にマルティンと数名の姿が見え、同じくその方向に案山子が何本も体を揺らしながら武器を振り回しているのが見える。
「意外と脆いか、でも武器が怖いな」
銃撃より打撃が有効だとわかると鍬や鋤などの農具の部分を破壊を優先し残った本体に殴りかかった。
その後なんとか対処でき散らかったゴミを見ながら息を切らせたマルティンが屋内へと戻っていく。
「無事かいテンメイ」
「……何とか」
ベニユキは彼を追いかけながらウーノンと残りのメンバーを連れて建物の中へと戻った。
「私ら、鉄を集めに来たんじゃないの……? こんなの聞いてないよ……」
「敵は機械の類じゃないぞ、鉄を集めるのにこんな所じゃいつまでたっても帰れないぞ」
テンメイとマルティンが話していて、アンバーは目を覚ましたガーネットとともにいまだに気を失っているエレオノーラを支えて立ち上がり、皆と合流し落ち着きなく建物内を見回している。
ウーノンや襲撃を受けたほかの生存者が建物をもう一度隅々まで調べに移動した。
「また人が減ってきたな……生きて帰れるのか」
轟音が響き建物が揺れる。
精神的に限界がテンメイが銃を捨て頭を抱えて座り込む。
「もういや……」
手を差し伸べたマルティンの腕を振り払う。
「誰かいないか! 応援を頼む!」
グリフィンの声が薄い壁の向こうから聞こえ同時に銃撃音が響き渡り悲鳴と怒声が交じり合う。
別の個所からも銃声が聞こえてきた。
周囲の安全を確保するため他の建物に移動していたアインたちと思われる銃声で、表での戦闘が本格化し始めたことを知り慌てて表を見る。
「対戦車のロケットを撃ったのか、今度は何が来た?」
町の方から白い人影と赤い色の何かが向かってきていた。
数は先ほどよりも増えていてぞろぞろと数十人ほどに見える。
「大勢で来たか」
「さっきの白いのとあれは何だろう、なんか靄がかかってよく見えない。紅白って縁起がいいとかなんとか聞くけど、あれを見てそうは思えないね」
ふと気が付けばベニユキたちが屋内で戦っている間に空は白み、薄く雲がかかったような空になっていた。
薄い膜の向こうの太陽の光は明るいが照らされて浮かび上がる影は薄くなる。
近づいてきてわかってくる赤い影の正体、それは人と同じ背丈の何かの人形。
「何だあれ、土人形?」
「うげっ、なんか歴史の授業で見たことある。あれだろ、あれ王様の墓に一緒に埋める人型の人形。日本とか中国でよくやるやつ」
「外出るかい?」
「いいや、気を失ってるエレオノーラや怯えるガーネットたちを連れていくのは危険だろ」
「そうだね、テンメイもいる。さすがに彼女も限界だ」
向かってくる人形をボーッと見ているわけにもいかず銃撃を始める。
グリフィンとの合流をしようとも考えたが大勢を連れていくのは戦い辛そうであるのと、気を失っているエレオノーラや怯えるテンメイやガーネットを連れて外に出るのが危険だと判断してその場に残って壁に空いた穴から外をうかがう。
グリフィンらが戦い白い影は霧散するが赤い影は銃弾を受けても倒れず、人形は周囲の白い靄を顔に空いた穴から吸い込んでいるようだった。
「白い靄が邪魔で当たっているかどうかわからないな、でも壊れてないような気がする」
「どんどん向かってくるね、もう一回爆発するする奴撃たないかな」
そう言っている間にシュルルと音を立てて赤い人影に向かって白い尾を引きロケットが飛んでいく。
轟音と土煙が広がり道いっぱいに広がった赤い人影が見えなくなる。
風も微風でゆっくりと晴れていく土煙の中から赤い人影が歩いてくるのが見えた。
「ほんとに土人形かあれ?」
「道以外からも来てるぞ」
町の家々の壁を倒してさらに赤い人形が増える。
赤い人影の先頭は街を出て駐車場の前に道を横断し始めた。
駐車場に入ればもうロープウエイ乗り場は目の前。
「逃げながら戦うか?」
「このままだとここまで進軍してくる」
道路を横断しきると赤い人影がはっきりと見えてきた。
同じ方の両手両足を同時に動かし進んできている。
「不気味な人形だね」
「幽霊ってこんな集団行動するんだなって関心すらしてきたよ」
迫ってくることでより詳細に見えてくる人形たちの姿。
一つの頭一対の腕と足を持った人を模した塊。
ただそれだけで、のっぺりとした造形で気持ち程度に目と口が穴を開けられている。
子供の作った粘土の人形のようにも見えるが、見えてきた赤い人形はどれも同じ形。
「不気味の谷現象ってあったよね、お手伝いロボットとかの人に近づけにしたときの」
「言いたいのはわかる」
銃弾が命中し火花を散るのを確認すると空になった弾倉を変えながら尋ねた。
「マルティン、あの人形銃弾を火花散らして弾いたぞ? あれって……よ」
「錆びた鉄だとでも言いたげだね……」
三発目のロケット弾が放たれまた轟音と土煙が上がる。
そしてグリフィンがこの辺一帯にいる全員に聞こえるように叫んだ。
「山に下がれ、撤退だ! 向こうは鉄の塊の様で対処できない。ここにいては囲まれる」
指示を聞いてすぐに戦闘を中断し建物を出る。
山を下ってきて疲れているはずの皆の逃げる足は速かった。




