駒を育てる 3
武器の並ぶ箱の横に置いてあった大きな筒状の武器を見る。
「これってさぁ、戦車攻撃するやつじゃないかい? 本当に戦争でも始められそうな……私らは何をさせられているんだい?」
「説明するって言っていたが、そこはいまだに謎だ。ただ見たこともないような怪物と戦わされる」
「怪物?」
「ああ、怪物だ」
「どんなやつなのかな?」
「いろんな姿をしていた」
あやふやな答えにアンバーは諦めたように軽く笑うとガーネットの手を引く。
「やっぱり今日はおとなしく従うとするよ。それじゃあこの上に上がろうかガーネット、みんなを待たせているみたいだ」
ベニユキとエレオノーラは替えの弾倉を多く持ち舞台の上に上がる。
『お待たせいたしました、それでは降下を開始します。今から向かう外の世界については降下をしながら話そうと思います。エレベーターが動き出しますので近くの手すりにつかまって揺れに気を付けてください』
全員が集合したことにミカが感謝をのべると、すぐにエレベーターの四方を支える太い鎖がジャラジャラと音を立てエレベーターは降下を始めた。
『本日、皆様が向かっていただく場所は思想侵攻の世界。人の生活圏に奇妙は金属のオブジェが設置されている世界です。人らしき姿が確認されていますが接触することはお勧めできません。脅威度は今までと違いやや高めとなっております』
空中にホログラムの画像を映し出す。
田舎を思わせる遠くまで広がる大きな田畑。
白い服を着ていて手袋や白い布で顔や手など徹底的に肌を隠した人影。
金属でできた三階建ての建物ほどある異様な存在感を放つ人型の像。
『重要なお願いがあります。外の世界では決して物を飲み食いしないでください、皆さまの命にかかわりますから』
彼女がそう言い終わるとホログラムは消え外の明かりが差し込む。
到着するとベニユキたちはすぐにエレベーターを降りる。
ウーノンやアインが周囲の様子を見に走りに行くのが見え、テンメイやブラットフォード達が体を動かし準備体操をして気合を入れていた。
「さて守りながら生きて帰るだろうか」
「昨日も一昨日も無事に帰れましたしできますよベニユキさん!」
「グリフィンらは大怪我したし無事って言えないだろ」
「でも、生きて帰れれば」
アンバーたち何度も生還できなかったものや入れ替わりで入ってきたものたちが不思議そうに空中に浮かぶエレベーターの出口を見ていた。
エレベーターの通路を使って箱舟からオートマトンが降り立つ。
「どうやらルールは昨日と一緒みたいだな」
「金属を見つけて白い銃で知らせる、ですね」
エレオノーラにアンバーたちを任せてベニユキはグリフィンのもとへと向かった。
戦車と戦ったことから一人一人が背中に携行ミサイルを背負った重武装な集団。
ただの棒ではないと証明されたためかキュリルだけでなくテオはブラットフォードたちの何人かもバットを持っている。
「おはようグリフィン、今日は山の上か」
「久々に良い空気の場所に出た気がするな、ベニユキ君。さて、向こうに人工物が見える。どうやらこの場所は観光地かなにかかな、ロープウェイ乗り場のようだ」
「場所は違うけどまた兵器に追われることになるのか」
「金属を集めると言っていたが昨日とはまた違う名前を言っていた。それに画像からはないもわからなかった。今日の怪物は昨日と違うかもしれないな。鉄を集めるだけなら昨日の場所でもよいだろうに」
「俺らに戦闘経験を積ませたいようだよな」
「やれやれ、戦闘経験知なんて積ませて本当に最後はどこかと戦争でもさせる気なのだろうかね? 記憶を思い出すにつれ自分の立場を思い出し反抗的になってくるものもいるだろうに。まぁ都合の悪い記憶は返さなければいいだけの話か」
「そういえばグリフィン、記憶は戻ってきているか?」
「ああ、帰される記憶が時期がバラバラで混乱するが。妻を失いその復讐で武装警備会社を立ち上げたときのことを思い出した」
「重い話になりそうだから深くは聞かないよ」
「まぁ、何十年も昔の話をされても困るだろう。さて、するべきことに戻ろう、さっさと帰るため金属を探す。どうせ向こうからやってくるのだろうけども」
「そうだなこんな山の中にはなさそうだし、とりあえずは街にでも行ってみるか」
「ならあのロープウェイ乗り場にでも向かおうか。小さいものでもあれを回収させて少しでも早く帰るための足しにする」
グリフィンがテオやキュリルに指示を出し建物へと向かって移動を開始する。
歩き出してすぐブラットフォードが小走りで追いかけてきた。
「おはよう二人とも、今日はどうする?」
「おはようブラットフォード、我々とベニユキ君たちはとりあえずロープウエイ乗り場へと向かうところだ。みんなで一緒に行くか?」
「いいや私らは先に山を下りるよ。固まって動くのも良いが、昨日の砲撃なりなんなりでまとまり過ぎるのもよくないと考えた。爆撃されて纏めて吹き飛ばされたくないからなるべく離れて行動するよ」
「そうか、わかった。でもなるべく近くにいてくれれば戦闘に援護できるんだけど」
他のメンバーを見回すと山道を見つけたブラットフォード達は山を下って行っていく。
山を下りる彼女らの背を見届けることもなく歩き出す。
ロープウエイ乗り場の周りは小さな商店が並んでいてどれも長い間営業はされていないようで、落ち葉や蔦が窓や扉に降り積もったり強く絡んでいたりし廃れていた。
グリフィンたちについて行くマルティンたちと合流する。
「さて、また人とは出会いないか。今日はどこに出てきたんだか」
「今日は観光地かな、周囲に目立つものもないし山の形だけで何の山かがわかるほどでもボクは通ではないよ」
「まぁ、どこだとしても箱舟に戻らないといけないな」
「何の意味があるんだろうね」
ついて来ていたアンバーはすでにテンメイなどと打ち解けており今までのことを尋ね聞いていた。
反対にガーネットは警戒心が強く周囲の人間にもピリピリとした空気を放っている。
みんなが廃屋を調べている間にアンバーが双眼鏡で街の方を見て時間をつぶしていた。
「何か見えるのかアンバーさん?」
「山を見てるけど山しか見えないね」
「そうだろうな、町を見たらどうだ?」
「それもそうだ、見知らぬ動植物を見るのはなかなか楽しくてな」
「わからなくもないけど、何か居たか?」
「普通の鹿がいた」
「そうか」
頷いて納得するとアンバーは手にした双眼鏡を町へとむけた。
「何だありゃ?」
「こんどは何が見えた? クマか?」
「……あぅ、……んー、頭にずきっと来た。あれは何だろう説明が難しいね、直接見てくれ。下のロープウェイ乗り場からちょっと上の方。駐車場だったのかね? なんか変なものがあるんだ」




