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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
1章 --永久を繰り返すアルカアンヘル--
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天を目指す植物群 2

 

『今この場にいる皆さまは、私、ミカが選んだ戦闘員としてしばらくの間行動を共にし私の指示に従ってもらいます。その間は衣食住の提供や健康の管理を私が行いますのでご安心を。なお私の指示に対する違反や無視が続く場合はその限りではありませんのでお願いします』


 前と同じ様なことをいうミカの説明中、手を挙げてグリフィンが尋ねる。


「質問いいかな?」


 完全に暗転し自分の手元すら見えない状態だったが、ミカはすぐに気が付き話を止めた。


『はい、どうぞグリフィンさん。質問を聞きましょう』

「ここにいる中に見覚えのある人間がいるようだが、彼らは死んだのではないのかな?」


『はい、皆さまの体は遺伝子情報をもとにクローニングによって作られております。そのため怪我や病気で戦線を離脱することはありませんご安心を。協力してもらう人材にも限りがありますから、同じ人に同じ記憶を持たせて何度でも箱舟のために働いてもらいます』

「昨日と同じメンツなのだとしたら、この場にタリュウ君がいないようだが」


『ああ、はい。完全に同じメンバーというわけではございません。煉獄腐肉の世界で逃げ出したものや他者に危害を加えた人は、今後の作業に支障が出ると判断して蘇生の候補から外してあります』

「そうか、なるほど理解した。彼には荷が勝ち過ぎた、可哀そうなことをしてしまったな」


『それでは、前にどうぞ。戦闘が起きる可能性がありますので、どうぞこちらで用意した武器をお持ちください』


 施設が明るくなり戸惑いながらも舞台の前に用意された武器の乗った箱の前へと集まる一同。

 部隊の前に用意された武器と食料の並んだ箱、白い銃とは別の武器が並んでいた。

 それを見て生き残ったベニユキたちは驚く。


「これは……」


 前に集まり武器を目にしたベニユキのつぶやきにミカはすぐに答える。


『グリフィンさんたちが命がけで持ち帰っていただいたデータをもとに量産された武器でございます。今回皆様に向かっていただく世界はこの間の場所より危険度が上がっておりますのでしっかりとした準備を』


 並んでいる大きな茶色い突撃銃と黒い機関銃、

 予備の弾倉もずらりと並べてあり、白い拳銃が並べられている時より物々しくなっていた。

 マルティンとベニユキは茶色い突撃銃を手にとる。


「これって、あれだよな昨日グリフィンたちが撃っていたやつ」

「だね、全員分用意されてる。弾もこんなに、1日にで用意したのか、寝てる間に?」


 種類がいくつかあり形によって装弾されている弾も変わる弾倉。

 リュックやポーチが用意されベニユキたちの近くの武器の入った箱をあさるグリフィンやアインたちは、真っ先に茶色い銃を持ち状態を確認する。


「あの白い銃よりは攻撃力はある、最初からこれを持てば昨日みたいにはならないよな?」

「白い銃にもメリットはある。軽く音が小さい、狭いところでも取り回しも効く。予備として持っていくのもありだろう。最悪自決用にも使えるからな」

「じけつっ……!」


「見ただろう人が化け物になった姿を。ああ生きたままなりたくなければ、という意味だ」


 バットを手に取り白い銃に手を伸ばしたキュリルが自決という言葉にピクリと反応した。


「あの、グリフィン。やっぱりこの銃は持っていた方がいいでしょうか?」

「人ではないものと戦わされどういう死に方をするかわからない以上、それは持っていた方がいいとは思うがねキュリル君、楽に死ねるとは限らないからな」


 拳銃だけで最初の回収物を手に入れてきた生存者組は、飛躍的な装備の充実ぶりに複雑な表情で武器を眺める。

 まだ事態を理解していないエレオノーラを連れテンメイが説明すた。


「ほら、エレオノーラ。自分を守る武器」

「私、こんなことしたくないです。お家に帰りたい」


「私もだよ、でもここからは出られない。あいつの言うことを聞くしかないの」

「だって、これって人を殺す奴ですよね。私普通に暮らしてきて、こんなのわからないです」


「逃げたらどうなるかわからない。今だけでいいからゆうことを聞こう、ね? 持っておくだけでいい、使うかどうかは後で決めようよエレオノーラ」

「はい……」


 白い拳銃と扱いのわからない茶色い突撃銃などの、武器を持つと舞台の上に上がった。

 怪物の腕が落ちていた跡などなくきれいに掃除されたエレベーター。

 ウーノンとアインの二人は黒い機関銃を持ち残りは茶色の突撃銃を背負う。


『よかった皆さん来てくれて』


 銀色の髪をなびかせてミカは嬉しそうにいう。


『準備はよろしいですか? それでは降下を開始します、外の世界については降下をしながら話そうと思います。それでは動き出しますので揺れに気を付けてください』


 ジャラジャラと太い鎖が音を立てて武装した30人の乗った床が下へと向かって降下していく。

 エレオノーラはテンメイに尋ねる。


「どこへ連れていかれるのでしょう?」

「またあの怪物と戦うのか……夢には出なかったけど、思い出すだけで鳥肌が立つ」


「……きっと痛い、ですよね」

「痛いじゃすまないよ、それにあなたは……」


 降下するエレベーターの真ん中に立つホログラムは、自分の周囲に宙に浮くモニターに何枚もの画像を表示させた。


 緑に囲まれた森の中にいくつもの小さな車の玩具が落ちている。

 よく見れば気に飲み込まれているのは建物、鬱蒼と茂る大きな巨木に電柱より長く伸びた草などの写真。

 まるで小人用の模型か何かを思わせる光景。


『皆様がこれから向かう世界は、私が命名した天上樹木の世界。この世界では文明はすでに消滅したようで多くの緑にあふれています。とても空気が澄んでおり閉鎖された今の箱舟より快適だと思われます』

「世界?」

「場所が昨日と違うじゃないか」


『はい、集めていただく物が違いますので』


 ミカの周りに移された画像を見た何人かが集まってどよめく。


『重要なお願いがあります。外の世界では決して物を飲み食いしないでください、命にかかわりますから』


 エレベーターは外の世界に出る。

 一気に入ってくる外の空気、湿っぽく澄んだ空気。

 昨日の戦いを生き残った7名は強烈な臭いを覚悟していたが、流れてきた臭いは腐臭に似た臭いではなく草木の青臭い臭い。

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