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九話

ネタが…

さて皆さん。


皆さんは流れに乗せられて絶体絶命の状況に陥ったことはありますか?


例えば、会話の流れに合わせて自分が教師の悪口を言っているときに偶然、真後ろに本人がいた。とか。


例えば、上司に言われてやったことで会社に損害が出て自分のせいにされた。とか。


例えば。


未だに顔を見ていない上司にビビって気が付いたら負け戦の軍師にされた。とか。


敵は曹操から孔融まで諸侯がよってたかって十三万。


味方は主将に張遼、副将に華雄の四万。


…軍師に徐庶。


洛陽でお仕事してたらいつの間にやら黄巾の乱が収束。


更に反董卓連合まで結成されていた。


慌てて董卓様への恐怖を無視して逃げようとしたら賈駆さんが登場。


頭が真っ白になっていたら、退職を認めるかわりに手紙を最前線の止水関まで運べと言われたので運んだ。


運んでからさっさと逃げ出そうとしたら張遼さんが笑顔で『じゃあ軍師は頼んだで徐庶』とか言い始めた。


短気で有名な華雄さんの目の前で『自分、仕事辞めたんで軍師とか勘弁っス』とか言ったら余裕で斬り殺される。


ある意味では姿を見たことない董卓様より怖い。


史実で董卓様が殺された以上は負け戦は確定している。


しかし、一つ思いついたことがある。


敵軍の旗の一つの曹旗。


あれはおそらくは曹操だ。


彼女は私を欲しがっていた。


どうも彼女はレズなのだ。


彼女は美人だし、元男だから割とウェルカムだったのだが、下手に引き抜きに応じてキレた董卓様からの刺客でDEADENDとか嫌だから断っていた。


しかし、もうすぐ董卓様も殺されるはず。


張遼だってこの戦争で曹操に仕えるようになるはずだしね。


ならば、その時に曹操様に頭を下げればよい。


いずれは大陸最大級の勢力の主となる美少女の愛人ENDなら忌避感はないしな。



「ご主人様、桃香様、軍議は如何でしたか」


天の御遣いたるご主人様こと北郷一刀と桃香こと劉備玄徳の率いる劉備軍。


その筆頭武官たる関羽が軍議より帰還した主に問いかける。


私も軍議の内容は気になったが、それ以上に主達に随行してきた朱里ちゃんの様子が気になった。


他の人はわからないかも知れないが、彼女が今している顔は何かとてもマズい状況の時にするソレだ。


軍師として隠さねばならぬ内容なのか、必死に隠そうとしているのがわかる。


軍議に行くまではこんな顔ではなかった。


軍議で語られた内容が問題だったのだろう。


そう考えて主と関羽の会話に耳を澄ます。


「ふむ、先鋒ですか。袁紹に戦力を借りられるならば我等の武威を示すのにも問題はなさそうですね。他には何か?」


「ああそういえば、敵将の情報が一つ間違ってた。あの『徐』の旗は敵将の徐栄ではなくて軍師の徐庶って人らしい」


徐庶?


ああ、徐庶さんね。


水鏡女学院の同門に同じ名前の方が…。


「外見は長い黒髪の女性らしい」


…まさか?


確かに彼女の行方を知らない。


しかし、よりにもよって董卓?


数多いる諸侯の中で董卓?


「雛里ちゃん。間違いなく『あの』徐庶さんだよ」


朱里ちゃんの囁き声。


気が遠くなる。


『たった』十三万で徐庶さんが率いて頑健な要衝に籠もる四万を相手にする?


しかも自分達の指揮下の兵は袁紹さんに借りるのも含めて五千に満たない。


それで先鋒?


無理だ。


朱里ちゃんの顔も尤もだ。


敗北を予兆し対策を言えない者を軍師とは呼べない。


どうする鳳士元。


この時を逃せば我らの飛躍は無い。


何か策を…。



関羽さんの話を聞いた雛里ちゃんの顔が微妙に崩れるのがわかる。


内心は私のような絶望だろう。


『徐庶』


その名前は巷に知られてはいないが、水鏡女学院の者であれば畏怖をもって呼ぶ名だ。


彼女は盤上演習を好まず、基本的にしない。


しかしある日、たまたま彼女が乗り気になり盤上演習を私と行った。


惨敗した。


妙手と考えた数々の手は完全に見透かされ、逆に嵌められた。


雛里ちゃんも負け、二人掛かりでも勝てなかった。


勝てずに悔しがった私達は、その時に定石というものを徐庶さんから聞いた。


彼女曰わく。


『決まった状況で使用する決まった戦い方』らしい。


教わった定石の数々は恐ろしいほどに緻密であった。


彼女は先人から学んだと謙遜したが、それは嘘だ。


水鏡先生すら知らない手の数々。


徐庶さんが自分で考えたのだろう。


『数百』もの妙手を。


才で適わぬと思った。






彼女が水鏡女学院を去ってから彼女の残した物を整理した。


その中にあった竹簡。


そこに書かれていたのは水鏡先生の授業の内容のまとめ。


いや、ただ竹簡にまとめるだけならば皆がしていることだ。


驚くべきは内容のわかりやすさ。


教本にするのかと問いたいほどにわかりやすく、それでいて内容の密度も濃い。


孫子について書いてあるものなど、もはや書物だ。


竹簡の中に線を引き分割。


何らかの染料でも使ったのか大事な部分は色付き。


他にも様々な工夫が凝らされていた。


努力で適わぬと思った。





才で適わぬ。


努力も適わぬ。


ならば彼女に私は適わないのだろう。


この止水関攻め。


固い関故に策を用いるつもりだったが、上手くいくまい。


逆手にとられるが関の山。


雛里ちゃんと話し合わなければ。


このままいけば。


私達に勝ちはない。




みんなで負け犬根性でござる。


洛陽編はうまいネタが思いつかないから今後の回想シーンにするかも程度

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