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極悪辺境伯の華麗なるメイド  作者: かしわしろ
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カブの港6

「とうちゃーく!」

山を下ってすぐ、カブの港へ辿り着いたレイリンは大声でそう叫んだ。その目立つ行動と、メイド服という目立つ服装のせいか周囲の人々の視線を一気に集める。しかし、そのような視線を気にする様子もなく道なりに走り出し、潮の香りが濃くなる方へと向かっていく。


ざ……ざざ……、という海水が重なり合ってなる音が空気中に広がっていた。呼吸をするたびに今まで嗅いだことがないへんな匂いが鼻腔をくすぐり、レイリンは少し顔をしかめる。


「綺麗……。」

しかしそんな匂いもすぐになれ、広大な海という存在に目を奪われる。青色と聞いていた海の色は、多くの太陽の光を反射して少し白いなと感じていた。


「……興奮してここまで来ちゃったけど、戻らないと。」

もう少しこの景色を見ていたかったが、無理やり視線を引き剥がし、今来た道を戻ろうとする。


「はぁ、はぁ……早すぎ……。」

「まあ、レイリンだからね。」

そこには息切れをしたクレアと、それを労うように肩に手を置くオリビアの姿があった。


「えっ?どうしてここに?」

自由気ままにカブの港内を移動してレイリン自身もわからない場所に来たのに、どうして2人がこの場所に来られたのかが不思議に思った。


「これ。」

するとクレアはメイド服の隠しポケットから黒い石を取り出した。


「あ、記憶磁石。」

そういえば自分もこの石を持っていたと思い出し、レイリンはカバンから記憶磁石を取り出す。クレアはそれを辿ってここに来たのだ。クレアはオリビアから記憶磁石を受け取ると、自分の持っているものに強い力でくっつけた。


「見て!海だよ!」

レイリンは2人と合流するという目的を達成したということで、すぐに再び海に視線を海に向ける。


「見えてるから。」

オリビアが淡々と答えるが、その目は大きく見開かれ、キラキラとした瞳でその景色を見ていた。


「後で入ってみる?」

「入れるの!?」

クレアの提案にレイリンが食い入るように答えた。


「入れるよ。有毒成分とか混ざってないし……んー、でも明日の朝の方がいいかもね。もうすぐ空が赤くなるし。」

「えぇー!」

時刻はもうすぐ夕方。これから冒険者ギルドへ向かい今回の目的を果たすとなると、外はすでに暗くなっていることだろう。


「夜でもいいじゃん!」

「夜はダメ。危ないから。あと暗くてそんなに楽しくないよ?」

「う……わかった……。」

危ないと言っても危険度A+を超えるような魔物が出現するというわけではない。一般の人々にとっては夜の海というのは十分危険なのだが、見習いたちにとっては特に命の危険もなく海に入ることはできるだろう。しかし夜の海には万が一がある。例えどれだけ魔法が使えようとも目に見えない、想像もつかない危険が潜んでいるのが夜の海だと、クレアは考えていた。


「じゃ、早く冒険者ギルドに行くよ。」

「はーい」

そう言ってクレアを戦闘に3人は冒険者ギルドへと移動し初めた。


「へぇー、ここが冒険者ギルドなんだね。」

木造の巨大な建物の大きな扉を前にレイリンが感嘆の声をもらす。グルンレイド領には冒険者ギルドがない。王国にはあるが、レイリンが幼少の頃はそこに行く機会などもなかった。


「じゃ、入ろう。」

子供のメイドが3人。冒険者ギルドの扉から中に入ると次々と視線が集まってくる。


「おいおい、どうしたお嬢ちゃんたち。迷子か?」

1人の男が近づいてきて、3人を前にそのように話しかけ始めた。


「いえ、カブの港のギルドマスター、ラキウス様に用事があって参りました。」

「ラキウスさんに用事?はっはっは!こんな子供に構ってられるほどラキウスさんも暇じゃねぇよ。ほら、帰りな。」

そう言いながらクレアの頭を掴んで外へ出そうとするが、頭に触れた瞬間、オリビアの剣がその男の手首に置かれた。


「あ?剣士ごっこか?」

オリビアの持っているほどの剣は、この歳の少女が片手で持てるものではない。オリビアは常時筋力強化を行い本物の剣を持っているのだが、男はオリビアが持っている剣が偽物だと思ったのか、オリビアを馬鹿にするようにそう言った。


「剣を下げて、オリビアちゃん。」

「でも……。」

クレアの声色の違いを感じ取ったのが、すぐにオリビアは剣を下げる。


「へっ、びびったか。んじゃ、すぐに帰……」

「手を退けていただけますか?」

「ん?なんか言った……」

「手を退けていただけますか?」

「そんなこと……あぁ、わかった。」

いつもよりもトーンの低いクレアの声にオリビアは若干の恐怖を覚えた。そしてさっきまで喧嘩腰だった男の態度が急変し、クレアの指示に従う。手が離れた瞬間に、クレアは髪についた汚れを払い、整える。


「おいおい、どうしたんだよグレンデ!」

周囲にいた冒険者が態度が急変した男、グレンデに向かってそう声を投げかけた。


「こんなガキ、早く追い返しちまえよ!」

グレンデはクレアの精神魔法、シンクロナイズで精神を支配されていた。今やクレアの命令には全て従う存在となってしまった。


「……どうするクレアちゃん?全員大人しくさせてからギルドマスター探す?」

周囲の反応を見たレイリンが、クレアに耳打ちする。


「絶対ダメだけど全員黙らせちゃおうかな。」

クレアもちょっとキレ気味にそう答える。


「お、お待ちくださいー!!」

遠くから女が走ってきたかと思うと、ドテッとクレアたちの目の前で派手に転んだ。それと同時にかけていた黒縁メガネがクレアの足元に転がった。


「あっ、メガネ。」

クレアはそれを拾い上げると、珍しいものを見るようにそれを眺めた。これはグルンレイド領で作られているもので、あまり外に出回っている印象はなかったからだ。


「あ、ありがとうございます。」

女は立ち上がり、クレアからメガネを受け取って耳にかけた。


「シドリーちゃんー、この子供達は知り合い?」

「まさか子供!?」

「嘘!シドニーちゃんフリーだって……」

「どうなんだー!」

周囲の冒険者が叫び出した。


「ち、違いますー!この子達は、グルンレイドのメイドさんたちです!」

今度はグルンレイドのメイドという単語に驚いてざわつくが、それを気にしないで再びクレアとの会話を始めた。


「ようこそお越しくださいました。ラキウスさんはこちらです。」

そういって3人を別室へと案内する。その間の周囲のざわつきは大きくなるばかりで、クレアはこの場所があまり好きにはなれないなと感じた。



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