新たな見習いメイド7
グルンレイドの屋敷に戻ってきたメルテ、リア、アナスタシアの3人は早速ジラルドへ報告をしにいこうとしていたが、
『3人が無事に帰還したことはすでにご主人様に伝えております。まずは体と身なりを綺麗にしてから報告を。』
と、イザベラに止められていた。
「確かにこんな汚れた姿をご主人様に見せたくはありませんわね。」
「匂いだってお世辞にもいいとは言えないし。」
「じゃ、早くお風呂いこー!」
走ってはいけないとされている廊下をダッシュして着替えをとりに自分たちの部屋へと向かっていると、見かけない顔ぶれと出会った。
「……メイド服。銀色のバッジ。」
メルテがそう呟くと、相手側もその場に止まる。
「私たちが来たときは、見習いは私たちだけだったから……新人?」
リアの問いに新しいメイドたちが答えた。
「お初にお目にかかります。この度新たにグルンレイドのメイドの一員となりますクレアと申します。」
「オリビアです。」
「レイリンと言います。」
ここにきて数日だというのに3人はグルンレイドの礼が様になっていた。そこに自分の魔力を少ししか乗せることはできていなかったが、それでもこの3人が凡人ではないということがわかる。
「初めまして。私は見習いのメルテ。同じ見習い同士だし、敬語は使わなくていいから。」
「アナスタシアですわ。」
「リアです。よろしく!」
そうとだけ伝えると、メルテ、リア、アナスタシアは自室へと走っていった。本当はもっと新人のことを知りたかったようだが、ご主人様の元へ早くいき調査結果を伝えることを優先したようだ。
「新しいメイドかー」
「後輩ですわよ!」
「多分同期だと思うけど。」
お風呂の準備をしている最中も、お風呂に入っている時も3人は新しいメイドの話題でもちきりだった。
「最初はこの屋敷で過ごすだけでも大変だからね。」
リアの言葉にメルテとアナスタシアが頷く。その理由は多々あるが、その一つは至る所に飾られている絵画のせいだ。
「アーティファルトの絵画。」
「そう!今でも近づけない絵とかいっぱいあるし。」
ジラルドは美しい絵画も集めており、その中でもアーティファルトという芸術家が描く絵が気に入っているようだった。その絵の中には見ただけで死を迎えるといったような恐ろしいものも数おおく存在する。
「私たちも最初は本館1階と宿舎1階くらいしか移動を許可されませんでしたわよね?」
「あの3人も多分そうだよ。」
移動を制限されたとしても本館1階には食堂や大浴場、謁見の間といった主要な施設が集まっているので生活の面で困ることない。そして見習いたちの部屋は宿舎の1階なのでこちらも問題はない。
「そういえば私たちの部屋にも一つあるよね。」
「“虚無を拾う老人“という題名でしたわ。近くにいると魔力伝導率が低下するとカルメラさんがいっていましたが……。」
「そうだね、今となってはそんなに気にならないね。」
アーティファルトの絵画の効果はさまざまなものがある。しかしその多くは人にとってはデメリットとなるもので、好んで買うものなどジラルド以外には存在しなかった。
「絵は上手だよね、絵は。」
「絵は……そうですわね。」
実物を完璧なまでに模写できている絵から、跳躍感溢れる絵まで様々なジャンルの絵があるが不思議と人を惹きつけるものがあるようだ。
そんなことを話しながら3人はお風呂に入り、身なりを整えるとジラルドのものとへと向かっていった。




