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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe^2  作者: かしわしろ
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ムムツの谷底4

「ここがメルテさんの言っていた街ですわね。」

街が見えた時に、3人は地上へと降り立つ。平野と森が広がっているような大自然の中にぽつんとある街だが、思いほのか栄えているように感じられる。王国までのアクセスは最悪だが、北にある共和国との国交の面では案外ちょうど良い場所なのだろう。


「街の名前はミド・レセアっていうんだね。」

ミド・レセアでは様々な店が並べられているが、特に目立っているのは魔道具の店だろう。魔法を使えない人でも、その道具を使用することで擬似的に魔法を使用することができるという優れものだが、基本的に値がはる。貴族はどは趣味やコレクションとして魔道具を購入したりするが、一般的は人は料理に使用する火を起こすためや水を凍らせ氷を作るためなど、生活に利用する目的で購入することが多い。


「今回は宿とかは取らないから、食べ物だけ。」

「だけど……出店か……。」

「私も店内に入りたいですわ。」

確かに周囲には美味しそうな串焼き肉や、焼きパンなどが売られているが、そういうものはグルンレイド製の方が圧倒的に美味しい。せっかくだから3人はこの土地特有の食材での料理を食べてみたいようだ。


「ね、その前に魔道具見てみない?」

メルテが面倒臭そうな表情をリアに向けた。


「ね、ちょっとだけ!」

正直メルテは魔道具にはそんなに興味はない。もちろん効果が高いものや希少なものであればいいのだが、こんな出店に売っているものにはメルテの望むものはないと思っていたのだ。逆にリアはというと、どんなに効果が小さいものでも魔道具というだけで目をキラキラさせ、何かとつかいたがる(遊びたがる)傾向にあった。


「仕方ない。アナスタシアもいい?」

「もちろんいいですわ。」

グルンレイドのメイドは基本的に魔道具を使うことはない。理由は単純で、魔法が使えるからだ。炎も魔道具を使用するよりも自分で唱えた方が早いし、威力も高い。が、しかしジラルドの趣味で希少価値の高い魔道具が屋敷の中にあったり、強力な魔道具であればメイドが装備していることもある。


「いらっしゃい!お、かわいいお嬢ちゃんたち……メイド?」

王国から離れているこの街では、グルンレイドのメイドという存在は知っているが身近にいないため、このように好奇の目で見られるくらいで終わってしまう。


「こんにちは。ちょっと魔道具をみてもいいですか?」

「おぉ!みていってくれ。」

このメイド服は超高級な素材で作られているため、多くの商人は“金持ちのおつかい“なのでは?というように考えるようだ。すなわち、金をたくさん持っている上客という扱いを受けることが多い。


リアがある箱を手に取ってみる。


「それは、ほら、そのボタンを押してみな。」

言われた通りにボタンを押すとキィンという甲高い音がなり始めた。とりわけ大きい音ではないが、耳を近づけるとかなり不快な音ではある。


「これは音に魔力を乗せて、魔物を寄せ付けなくするものだ。ま、簡単にいうと魔物が嫌いな音、ってことだな。」

アナスタシアとメルテはちょっと不快な音という感じで眉を寄せるだけだったが、リアはかなり不快なようですぐに音を消した。


「ちなみに今のでどれくらいの値段ですの?」

「金貨5枚だ。」

「安いですのね。」

一般的な感覚で言うと金貨5枚は高いのだが、グルンレイドのメイドからしてみればそうでもないらしい。


「みてアナスタシアちゃん!」

次の瞬間、冷たい風がアナスタシアの首筋を撫でた。


「うひゃっ!な、なんですの!」

「ふふっ、これ!」

楕円形の箱で、これもスイッチを押すと冷たい風が放出されるようだった。こう言う魔道具は夏場によく売れる。


魔道具は動かし続けるといつかは止まってしまう。が別に魔道具自体が壊れない限りは動力源、すなわち魔石を交換することでいつまでも動かし続けることが可能だ。


「おいおい、お嬢ちゃんたち、魔力をつかいすぎないでくれよ?」

「す、すみません……。でも動かしたいし……あ、これで好きなだけ動かしていいですか?」

そう言ってリアはカバンからいくつかの魔石を取り出す。


「魔石……しかもこんなに!?まあ、これほど貰えるんなら好きに使っていいけどよ……。」

魔石の基本的な入手方法は、先ほど3人が行っていたように魔物を倒すことである。ゴブリンなどの弱い魔物よりも、強い魔物を倒した時に入手できる魔石の方が大きさも、内包されている魔力密度も違う。もちろん大きくて密度が高い方が価値がある。


「ところでグルンレイド領にも魔道具はありましたわよね。」

「うん。」

リアが食い入るように魔道具をみているそばで、アナスタシアがメルテに尋ねた。


「基本的にご主人様のコレクションだけど。」

一つ聖金貨数枚(数千万円)で取引されるような希少な魔道具が至る所に飾られている。さらにコレクションルームではもはやお金で買えないほどの伝説の魔道具がいくつもあるという噂だ。


「一番身近なものだと……ヴィオラさんの装備している“時計仕掛けの髪飾り“、かな」

「あれ、かっこいいですわよね!」

プラチナで作られたかのように輝いている美しい見た目、そしてその内部には極小の金属類が精密に嵌め込まれている。この魔道具には魔石をはめる部分などはなく、本人の魔力を直接流し込むことで動作するものとなっていた。


「確か、魔力伝導率が1.1~1.3倍になる、とかでしたわよね?」

「そう。でも大事なのはそこじゃない。」

体内の魔力伝導率が上がれば上がるほど、少ない魔力で魔法を唱えることができる。体内にある魔力は休息を取れば回復するが、戦闘中にそんなことはできない。少ない魔力量で強い魔法を唱えられるに越したことはないのだ。


「時計仕掛けの髪飾りの一番の特徴は、時空間に左右されないと言うところ。」

「そうでしたわ……。私たちの実力ではその本当の凄さを知るまで辿り着きませんからね。」

魔法には時間魔法や空間魔法というものが存在する。それらは一般的にこの世には存在しない空想上の魔法として捉えられているが、グルンレイドのメイドは息をするように使用する。


例えば時空間魔法の一つ『タイムストップ』を使用した場合、周囲は時間停止空間となり、全ての動きが“止まって見えるほどに遅くなる“。その空間では全ての動作に負荷がかかり、親指を一秒かけて右に1cm動かすだけでも莫大な魔力を消費してしまうことになる。これはその空間と自分の体の魔力伝導率が大幅に低下(0.001~0.01倍程度)している状態ともいえる。


「私はまだ時間停止空間では意識を保つことだけで精一杯、ピクリとも動けませんわ……」

「私は一分くらいかけて一歩進めるようになった。」

「すごいですわね!」

しかし時計仕掛けの髪飾りが動作していれば、時空間に関係なく、たとえ0.001倍であっても1.1倍へと強制的に書き換えられ、時間が止まっている空間でもいつものように飛び跳ねることができるし、魔法も使用することができる、というわけだ。


「ああいうのも売っているのかしら?」

「まさか。絶対売ってない。」

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