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ミニチュアの騎士

読者の皆さん、こんにちは!ファンタジー世界に転生したおバカな騎士を描いた私の新シリーズを楽しんでいただけているでしょうか?ぜひ感想をコメント欄にお寄せください。

最後に覚えているのは、炎だった。


夜明け前の赤い空の下で燃え上がる西の城壁。


鋼と煙の濁流のように街へ押し寄せる東の兵士たち。


血の臭い。


剣戟の音。


悲鳴。


俺は最後まで戦った。


鎧を貫く衝撃も、腹を伝って流れ落ちる熱も……はっきり覚えている。


そして、闇。


だからこそ、再び目を開けた瞬間、最初に浮かんだ結論は単純だった。


「捕虜になったか」


問題は――そこが俺の知るどんな牢獄よりも奇妙だったことだ。


周囲を囲むのは木の柵。視界の低い俺には高すぎるほどだった。床は異様に柔らかく、淡い色の布と、干し草に似た詰め物で覆われている。だが軍の寝台など比べ物にならないほど快適だった。


空気は暖かい。


焼きたてのパンと、湿った木の香り。


それに甘い匂いが混じっている。


錆の臭いがない。


血の臭いもない。


死の臭いもない。


それが妙に落ち着かなかった。


すぐに起き上がろうとする。


腕が数センチ持ち上がった。


震える。


その直後、体ごと勝手に横へ転がった。


柔らかい寝床の上を情けなく転がり、軽く木柵にぶつかる。


……


屈辱だ。


喋ろうとする。


「ど、どこ……だ……?」


実際に口から出たのは、


「ぁー……ぶらぁ……だぁ……」


沈黙。


固まる。


いや。


いやいやいや。


今度は軍人らしく、はっきりと言い直した。


「直ちに所属を名乗れ!」


「ぶえぇ……あがぁ……」


血の気が引いた。


その時、木の床を歩く柔らかな足音が聞こえた。


女が一人、木柵の向こうに現れる。


肩にかかるようにまとめられた金髪。


白い肌。


白と茶を基調にした軽装。


質素な、農民らしい服装だ……だが清潔だった。丁寧に手入れされている。


そして一部が異様にぴったりしていた。


かなりぴったりしている。


女は優しい笑みを浮かべながらこちらへ身をかがめ――そこで俺は、この状況で最も恐ろしい事実に気づいた。


女が巨大なのではない。


俺が小さいのだ。


とんでもなく小さい。


小さすぎる。


女は俺が目を覚ましているのを見ると、さらに柔らかな笑みを浮かべた。


「Jboao mapdfj?」


まったく知らない言語だった。


東方の方言か?


暗号か?


精神を混乱させる魔法か?


俺は戦略的に彼女の動きを観察する。


女は俺を指差し、


それから机の上の小さな器を示した。


そして微笑む。


……


おそらく、


「赤ちゃん、お腹すいたの?」


そんな意味だろう。


いや。


あり得ない。


「何を言っているのかわからん! 立場を説明しろ! それと俺をあの快適な牢屋へ戻せ!」


少なくとも、俺はそう言おうとしていた。


現実には、口から情けない音を撒き散らしながら暴れることしかできなかった。


「ぁああ! だ! ぶえ!」


女は一瞬だけ目を丸くした。


それから小さく笑う。


木柵の小さな扉を開き、俺を軽々と抱き上げた。


俺の体は、彼女の腕の中にほとんど埋もれてしまう。


そこで俺は、この状況の真の恐怖を理解した。


俺の体。


新生児そのものだった。


小さな腕。


小さな手。


力など欠片もない。


尊厳もない。


「東の連中め……!」


「敵兵を子どもに変えて洗脳するつもりか?!」


「どこまで外道なんだ貴様らは?!」


「いや待て、こいつ何を――」


思考を最後まで組み立てる前に、女は服を少し横へずらした。


そして胸元を露わにする。


……


脳が停止した。


彼女はゆっくりと俺を近づける。


本能。


純粋な本能だった。


体が勝手に動き始める。


「待て」


「待て待て」


「俺は西方守備隊の隊長で――」


数秒後、俺はあらゆる抵抗を完全に放棄していた。


……


一時的な協力関係というのも、賢明な判断かもしれない。


女は穏やかに微笑みながら、細い指で俺の頭を撫でていた。


ゆっくりと。


優しく。


まるで催眠のように。


目覚めてから初めて、暖かさを感じた。


炎の熱ではない。


血の熱でもない。


静かな熱だ。


安心できる熱。


女は俺を抱いたまま、家の中をゆっくり歩き始めた。


その時になって、ようやく周囲をよく見る余裕ができる。


小さな木造の家だった。


開け放たれた窓から朝の黄金色の光が差し込み、淡い色のカーテンを風がゆっくり揺らしている。


外からは濡れた草と土の匂い。


石造りのかまどの近くには鉄鍋が吊るされ、


天井には乾燥中の薬草が束ねられていた。


扉のそばには冷たい水を満たした桶。


何もかも質素だ。


だが、生きている。


女はこの暮らしに慣れているらしかった。片腕で俺を抱えたまま、もう片方の手で家事をこなし、軋む床を裸足で歩き回る。


時折、知らない言葉で鼻歌を歌う。


穏やかな旋律。


不思議と心地いい。


その時、玄関の扉が開いた。


男が大きな水桶を肩に担いで入ってくる。


短い茶髪。


太く筋肉質な腕。


節くれ立った手。


顔には短い髭。


力仕事に慣れた男の典型だった。


男は桶を床に下ろすと、俺を見た瞬間に満面の笑みを浮かべる。


「OIasfl ifyasn!」


「尋問官か?」


「いや……待て」


「村長かもしれん」


男は重い足音を立てながら近づき、女の腕から俺を難なく抱き上げた。


世界が回る。


文字通り。


「?!」


俺を高々と持ち上げる。


まるで重さなど存在しないかのように。


そのまま上下に揺らし始めた。


胃がひっくり返る。


「やめろ即刻!」


「子どもが死ぬだろうが――」


いや。


待て。


子どもは俺だった。


その事実を理解する前に、男は顔を近づけてきた。


そして髭を俺の頬に擦りつける。


激痛。


硬い。


攻撃的だ。


金属ブラシか何かか?


「やめろ! やめろ! やめろ! 痛い! 刺さる!」


「ぁあああ!!」


二人の大人は笑い始めた。


笑ったのだ。


まるでそれが愛らしい反応だと言わんばかりに。


それでも、俺がようやく当然の事実に辿り着くまでには、ずいぶん時間がかかった。


俺は彼らの言葉を理解できない。


体は新生児サイズまで縮んでいる。


誰も俺を捕虜扱いしない。


鎖に繋ぎもしない。


そもそも危険人物とすら思われていない。


なら――


恐ろしい可能性が脳裏をよぎった。


……


「俺は、あの戦いで死んだ……?」


体が凍りつく。


「その結果、東の農民の子どもとして生まれ変わったのか?!」


沈黙。


女は俺の意味不明な喃語に首を傾げる。


男は笑ったまま、俺の頬をむにっと押した。


そして、この場所で目覚めてからずっとそうだったように――


俺は完全に的外れだった。


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