傀儡 二
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。
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「それはどういう意味や? まさか自害したやつが、鬼混殭屍に取り憑いて使役したって言うんか?」
術式の起点に自害した? 意味が理解できない。あまりに命を軽視しすぎている。
鬼を操る為に、いちいち命をかけていたら、まさに命がいくらあっても足らないだろう。
私の言葉に、白は再び首を横に振った。
「いえ、訂正致します。これはわたくしの推測になってしまうのですが、自害した者はあくまで自害し、術式の起点として、己の霊相を三体の鬼混殭屍に捧げたに過ぎないでしょう。いわば、あの者は生贄だと思います。鬼を操っていた者は、別にいた可能性があります。証拠として、姿は確認できていませんが、自害した者の周辺に、いくつかの足跡が確認できました。鬼混殭屍の材料となった土も、あの藪のものでしょう。不自然な穴が掘られていました」
──生贄? 別に犯人がいる?
白の推測の言葉に、私は強烈な寒気を感じながら、隣に立つ咲耶を見た。
彼女は黙ったまま、桜門の前に横たわる土塊を凝視していた。
落ちた首がこちらを睨んでいるように見えて、私は首から目を逸らした。
「けど、それやと鬼混殭屍を作るたびに、生贄が必要になるってことにならへんか? あまりにもコストと見合わへんやろ? 人ひとりの命使ってんやで? 生贄いうても、そんなポンポン用意することなんてできひんやろ?」
私の言葉に、咲耶が大きく息を吐いた。
「それができるから、学舎は私達に鬼を差し向けたのでしょう。白、その自害した者の風貌は?」
「はい。至って一般的な、五十代から六十代の男性に見えました。強いて言うのであれば、服装は年齢の割に質素で古びているように感じました」
己の自害を前に、質素で古びた服装か。もしかして、金銭的に余裕のない多重債務者などを利用したのか?
家族を抱える者なら、多額の金銭の報酬を約束されれば、交渉に応じる者が現れても不思議じゃないのか?
それが、薬物で苦しまずに逝けると唆されれば尚更か。それでも、明らかに人間の所業を越えてるな。
そもそも、霊相を持ち合わせている一般人って珍しいんやけどな。
「ひとまず、一旦社務所へ向かいましょう。遺体を確認して、警察へ通報しないと」
私達は絵馬堂の前を通り、社務所へ入った。迎えた久井家の二人と宮司に、起こったことを報告する。
実際に自害した者を確認するため、白が先導し、須能と壬子が天開稲荷へ向かった。
数分後、砂陣のスマホが鳴った。それと同時に、先導していた白が目の前に現れた。
どうやら、須能と壬子が現場に到着すると、既に遺体はなかったらしい。一足遅く処分されたか。
白と紅に再度周囲を警戒させたが、怪しい存在は見当たらなかった。
明らかに連携が取れている。一筋縄ではいかない相手だとは理解しているが、やはり何枚も上手か。
一旦警察への通報は諦めて、桜門の前にある土塊を回収する。
燐に名古屋にある鬼霊技術研究所へ、この土塊を送ってもらうように指示する。
この土を少しでも解析することができれば、天網で探索することも可能になるかもしれない。
皆で巫女の用意した大きなビニール袋に、土塊を入れて段ボールへ詰め込み、ガムテープで封をする。
夜間ではあったが、宮の得意先の運送会社と連絡がつき、至急段ボールを回収し、研究所へ送ってもらった。
話し合った結果、明日早急に六芒結界を編み直すこととなり、皆一度解散することとなった。
私達は壬子の車に乗り込み、ホテルへ戻った。エントランスからロビーへ入る。
もう時間も遅い為、ラウンジに人影もない。受付にも男性が一人立っているだけだった。
その受付の男性が私達に気づくと、こちらへ駆け寄ってきた。
「あの、一三〇二号室の柿本司様でしょうか? 貴方様宛にお手紙が届いております」
この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。
当作品は、初めての執筆作品となります。
当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。
ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。
これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。
ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。




