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道真之祠廟 二

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

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「咲耶様があそこまで憔悴なさるなんて……一体何があったのですか……」


 そう呟く燐の言葉に、皆が緊張した面持ちで私と咲耶を見る。

 呪術式? まさか顕一学舎の学員が、事前に罠を張っていたのか?


 人の姿に戻った水が、咲耶に霊相を送っているのを見ながら、私は咲耶を強く抱きしめる。

 抱える彼女を改めて見ると、どうやら意識はあるようだった。私と目が会った。


「咲耶、大丈夫か? 何があったんや? しゃべれるか?」


 私がそう言うと、彼女は悔しげに顔を顰めてから、ゆっくりと立ち上がった。

 私から少し距離と取ると、扇子と取り出して舞を踊り始める。

 それにより、彼女に絡みついていた呪怨の霊相が浄化されていった。


 舞を踊り終えた彼女は、糸が切れたようにぐらりと倒れこむ。

 まずいと瞬時に駆け寄り、寸のところで彼女を抱き寄せた。

 私の腕の中で咲耶は、苦笑しながら呟いた。


「私としたことが抜かりました。こんなチンケな罠に引っかかるなんて。静夜のことを言えないですね」

「そんなことはどうでもええ。それより大丈夫なんか? 霊相が足らんなら水に集めてもらうから」


 焦り動揺する私の顔を見て、咲耶は少し笑ってから私の頭を撫でた。


「問題ありません。呪怨を抑える為に、少し力を使いすぎただけです。私は自分で霊相を補給できるので、じきに落ち着きます。水、祠廟周辺の残った術式の呪怨の霊相を吸収することはできますか?」


 私に抱えられた咲耶が、水に声をかける。それに対して水は頷いた。


「はい、ですが咲様? もっと早く呼んで頂ければ、呪怨は私がすべて喰らいましたのに、なぜご自身で対応されたのですか?」


 水が怒ったように眉間にシワを寄せて、咲耶を問い詰める。

 ──ん? 水ならもっと早く対応できたってことか? それを理解していながら咲耶は己で対応したのか?

 その言葉に咲耶は、再び苦笑しながら口を開いた。


「あらかじめ貢物を献上されていましたからね。わたくしは約束は守ります」


 咲耶はそう言うと、立ち上がり衣を整える。どうやら自分で霊相を集め、幾分回復したようだ。

 彼女が言うには、かの呪術式は触れる者の霊相が高ければ高いほど、強力な呪怨が発生する仕組みらしい。

 そして、その呪怨を祠廟の内部の呪怨と共鳴させて、強制的に封印の界を破壊しようとしていたそうだ。


 それを防ぐために咲耶は、発生した呪怨を一身に惹きつけて呪怨に対抗していたらしい。

 そして、呪怨の効力がある程度弱まって来たのを確認してから、水を呼んだとのことだった。

 術式が発動した時点で水を呼んでいれば、こうはなっていなかったってことやな。頑固者め。


「で? 残りの呪怨は水が喰らうとして、その術式は放置していて問題ないんか?」

「霊体でない限り、祠廟に触れることは叶いませんから、今すぐ対処する必要はないでしょう。祠廟自体にも異変は見られませんでした。あとは結界の再構築時に相手方が手を出してこないかが問題でしょう」


 咲耶のその言葉に、久井家の二人と霞の顔が引きしまるのがわかった。


「砂陣さん、新たな結界を管理する氏家が決まるのは今週中でしたか?」

「そうですな。ですが、氏家が決まっても実際に柱を掘り出して祭事を行う必要があるので、やはり準備に時間がかかります。一時的に四紋結界に変更するしかないですな」


 砂陣がそう言うと、燐が口を開いた。


「あの、私は結界術に詳しくはないのですけど、織芒結界にはできないのですか?」


 その質問に対して、霞が答えた。


「四点の結界では、織芒結界は編むことができないんです。最低でも術の起点が五点必要なんです」


 なるほど、だからどうしても四紋結界になってしまうってことか。

 まぁ祠廟に異常は発生してないようやし、あれだけの霊相を使用した結界だ。

 耐久度は下がるとしても、四紋結界でも問題なく祠廟の封印を守ることはできるのだろう。


「相手が結界が弱まるチャンスを見逃すとは思えないわ。術の起点が五点以上必要なら、臨時でもう一点増やすことはできないのかしら?」


 ──ん? 水?


 水が砂陣に対して尋ねる。それに対して彼は首を振った。


「それができれば最善なのですが、やはり起点の構築に時間がかかります。その前に小室家の柱の効力が尽きるでしょう」


 それに対して、水がとんでもない事を口にする。



「できるわ。一時的に私の水虎を、柱として使いなさい」



この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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