道真之祠廟 一
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。
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最寄りのコインパーキングに車を止め、太鼓橋を渡り、私達は社務所へ向かう。
しかし、橋を渡った先にある桜門の前には、既に宮司の須能と巫女の二人が立っていた。
まだ約束の時間の一五分前だが、いつから待っていたのだだろうか。
「すみません、お待たせしてしまいましたか?」
私が謝罪すると、須能はにこやかに手を振り笑った。
「いえいえ、私が姫様にお会いできるのが、楽しみで待ちきれなかっただけです。では、参りましょう」
桜門をくぐり、私達は本殿がある境内に入る。夜になり空気が澄んで、より厳かに感じる。
石畳を進み、仮殿に皆で二礼二拍手一礼をしてから、仮殿の裏手に回る。
改修用に本殿を覆っているシートをくぐり、私達は本殿の敷地内に入る。
巫女の一人が、懐中電灯を頼りに、改修工事用のライトを点灯させた。
私達は、向拝で再度二礼二拍手一礼してから外陣に入る。
内部の改修は、あらかた済んでいるのか、大きな工事跡などは見られなかった。
神前に立ち、改めて意識を集中させる。なるほど、確かに奥から強烈な霊相を感じ取ることができる。
あと、もう一つ何か別の霊相があるように感じる。これが道真の呪怨の霊相か?
とりあえず確認しないと話は進まないと、早速咲耶を呼ぶことにした。
「では咲耶を呼ぶので、皆さん少し下がってください。私も霊相を開放するので一応注意しておいてください」
私はそう言って、眼鏡を外して懐にしまう。皆が距離を取るのを確認してから咲耶を呼んだ。
音もなく、私の隣に咲耶が姿を現す。桜の描かれた扇子を開き、踊るようにくるりと回るように周囲を仰いだ。
その瞬間周囲に桜の甘い香りが周囲を満たす。何のための行為なのかはわからないが、まぁ好きにさせておこう。
燐が敬意そ示し膝をつくと、霞と久井家の二人も同じように膝をつき頭を垂れた。
宮司である須能と巫女は、正座し両手をついて深く頭を下げた。
「木花咲耶姫命様。私、当宮の当代宮司を務めております須能悟でございます。お目に掛かる機会お与えいただき、大変有りたく存じます。当宮御神体の祠廟の勘査を頂けるとのこと、深く感謝を申し上げます」
頭を下げたままの皆を見てから、咲耶は扇子と閉じて口を開いた。
「皆、面をあげなさい」
咲耶の言葉に、皆が頭をあげた。霞と巫女達は、ただぽかんと口を開けていた。
まぁ無理もない話だ、歴史の教科書にも出てくるような神様が、実際に眼の前に現れたのだ。
燐と久井家の二人、そして宮司の須能は真剣な面持ちで咲耶を見つめていた。
咲耶は、改めて周囲を見渡してから口を開いた。
「須能、ここは良い社ですね。大切に引き継いで行きなさい」
「はい。勿体ないお言葉でございます」
須能がそう応えると、咲耶は少し頷いてから神前へと向かい歩き出した。
「じゃあ、まかせたで咲耶」
「確認するだけです。すぐに終わります」
そう言うと、スッと彼女は姿を消した、。
まぁ、確かに祠廟の状態を確認するだけやし、そう時間はかからないか。
問題は、当の祠廟に影響が発生していた場合の対処やな。
──それから十数分が経った。
しばらくの間、静寂の社内で咲耶を待っていたが、彼女はいつまで経っても戻らなかった。
咲耶に何かあったのだろうか? 皆の顔にも不安の色が浮かびはじめていた。
その時、水が白虎の姿で咲耶を乗せて姿を現した。背に横たわる咲耶はひどく憔悴しているように見える。
「水っ!? 何があったんやっ!?」
私は水に駆け寄り、背に横たわる咲耶を抱き寄せた。
彼女自身の霊相に異常は感じられないが、全身に異様な霊相が絡みついている。
──なんやこれ? 鬼の霊相とも違う。感じたことがない霊相やな。
「咲様に呼ばれた時には、既にこの状態だったわ。その霊相はおそらく呪怨の類よ。それより静夜、祠廟周辺にすでに罠が張られているわ。基礎部分に最近設置された呪術式が張られているの」
この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。
当作品は、初めての執筆作品となります。
当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。
ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。
これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。
ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。




