太宰府天満宮 三
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。
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菅公歴史館を後にした私達は、社務所へ向かった。
社務所の出入り口に入ると、一人の巫女が出迎えてくれる。
壬子が、久井家の久井壬子と名乗り、宮司との面会の旨を伝えた。
既に話は、通っているのだろう。すぐに巫女は私達を応接用の客間へ通してくれた。
しばらくすると、「失礼致します」という声と共に客間のふすまの戸が引かれた。
私達は立ち上がり、宮司が敷居を跨ぎ、私達の前に立つのを待った。
「お待たせ致しました。私、太宰府天満宮の当代宮司を務めております、須能悟と申します」
「栄神静夜です。統括鬼霊対策室、統括室長を任じられています。本日はお時間を頂きありがとうございます」
宮司が頭を下げる。それに対して私は敬礼でそれに応えた。
「どうぞお掛けください」と、彼は座布団を示した。少し頭を下げて、私達は座布団に腰を下ろした。
「本日ご来宮頂いたのは、御神体の祠廟の調査についてでございましたね? 壬子さんはお久しぶりですね。前々回の大祭以来ですか?」
宮司が私の隣に座る壬子に声をかける。壬子は頷き、微笑んだ。
「はい、大変ご無沙汰しております。父上がいつもお世話になっています。本日は鬼霊対策室からのご挨拶と、祠廟の調査をするにあたっての最終確認で参りました。基本的な事項の了承確認は既に済んでいると当主より聞いています」
壬子の言葉に、少し間をあけて宮司は頷いた。
──ん? なんか少し間があったな。完全には同意できていないのか?
「はい、調査に関しては、条件付きではありますが、全て了承しています。条件は、本殿内部に立ち入る場合、外陣までとすること。そして、当宮の巫女を二名調査に同行させること。条件に間違いはありませんね?」
壬子は頷いた。同行者がいるのか。そうなると、咲耶は表には出せそうにないな。
その時、宮司はため息をついて、やれやれと苦笑いする。一体どうしたのだろうか?
「しかし、砂陣殿も人が悪いですね。まさか御神体の祠廟に、羅刹鬼が一緒に封印されていることを今まで黙っていたなんて。長い付き合いですのにね。そちらにも事情があったのでしょうが、昨日砂陣殿に白状された時はさすがに憤慨致しました」
──えっ? 宮司はもう羅刹の存在を知っているのか? 昨日? 会食のあとに久井家の当主がこちらに来たのか?
「砂陣殿が昨夜突然訪れましてね。面会の約束は明日のはずだったので、奇妙には感じたのですが、まさかの内容で、はじめは信じる事ができませんでした。ですが、小室家の襲撃事件の真相を聞き、疑うことをやめました。小室家が壊滅したことにより、九州中の大家の祓い屋がこの結界の真実を共有することになるため、もう当宮に隠しておくことは難しいと判断したそうです」
「そうなのですか……父からは何も聞いておりませんでした……」
宮司の言葉に驚愕する壬子。なぜ娘である壬子には伝えなかったんだ?
「砂陣殿は壬子殿にいらぬプレッシャーを与えたくなかったのではないでしょうか。本日私から伝え聞くことになるとわかっていたでしょうから。あの方らしい判断ですね」
なるほど。すでに真実を伝えていると壬子が知れば、憤慨している宮司と面会すると思い緊張させてしまう。
それを避けるために、あえて伝えなかったってことなのだろう。まだまだ子供扱いやな。
「栄神静夜様。砂陣殿よりお聞きしました。何でも木花咲耶姫命様と契約をお結びになられておいでだと。そして、今夜御神様自ら祠廟の状態を確認していただけると、これは真でしょうか?」
私をみて宮司は、真剣な表情で尋ねた。
そうか、砂陣は神道の神職者に咲耶の存在を明示することで、信用を勝ち取ったのか。
どうりで、すでに憤慨が収まっているわけだ。
「はい、間違いありません。栄神流は彼女が作ったようなものですから。今夜彼女が祠廟を調べることも間違いありません。もしお疑いになるのであれば、今夜ご同行いただければ証明できます」
そう答えると、宮司は改めて大きく息を吐いた。何か緊張が解けたように見える。
「神道を歩む者として、日本の豊穣を司る神にお目にかかりたく存じます。同行させていただきます」
この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。
当作品は、初めての執筆作品となります。
当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。
ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。
これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。
ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。




