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博多夜談 一

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。

もし、面白いと感じて頂ければ、ページ下部にある《投票!!》のクリックへのご協力お願いいたします。



 我々は、ホテルを出て待機していたタクシーに乗り込んだ。

 タクシーは十分ほどで、指定された店に到着した。


 店内に入り、蓮華が出迎えた店員に予約していた名を伝える。

 店員に案内され、店内の奥にすすみ、個室になっている部屋の扉を開いた。


 室内は、掘りごたつ状態の座敷になっていた。室内にいた二名の男女が立ち上がる。

 私も室内に入り、待機していた二名の内年長と思われる男性の前に立った。

 他の各々の隊員達も、座布団の隣に立った。


「栄神静夜殿、遠路はるばるご足労頂き誠にありがとうございます。私、久井流結界術当主・久井砂陣(ひさいさじん)と申します。隣は師範の久井壬子(ひさいじんし)、私の娘でございます」


 砂陣に紹介された壬子が、深く頭を下げた。


「久井壬子と申します。栄神静夜様、お会いできて光栄です。これからどうぞ宜しくお願い致します」


 年齢的に三十代前半と思われる女性が頭を上げる。

 それぞれの挨拶に対し、私は敬礼でそれに応えた。


「栄神静夜です。本日はよろしくお願いします」


 皆が座布団に腰を下ろし、飲み物を準備して乾杯する。

 料理はコース形式になっているようで、先付と刺身が運ばれてくる。


 いきなり本題に入ることはなく、砂陣と壬子が気軽に皆に話しかけて、他愛のない話題を振っている。

 私もそれに応えながら、酒と食を進めてゆく。メインの水炊きが運ばれてきた。


「静夜殿、既に早川家とはお会いになられました伺っております。無岸氏から結界の管理に関してはお聞きになりましたでしょうか?」


 壬子が、ようやく本題を切り出してきた。


「ええ、それぞれの氏家から二名守柱司を選出して、六本の柱を守護しているんですよね? それを全体的に管理しているのが久井家と聞いています。間違いありませんか?」


 私は、早川家で無岸から聞いた、結界の管理方法について、認識に間違いがないか確認した。

 壬子は、にこりと微笑み頷いて答えた。


「はい、その認識で問題ございません。全体の管理と申しましても、やっている事は、六本の柱の術式をつなぎ合わせて結界を生成しているにすぎません。ですが、これがシンプルで一番堅牢で強力なんです」


 なるほど、要はそれぞれの柱は、霊相を供給するためのアンテナ兼バッテリーなのだろう。

 それを、結界師である久井家が、それぞれのアンテナ同士を結びつけて結界化しているということだ。

 言われてみれば、確かにシンプルだ。シンプルゆえに強力だと言う壬子の言葉も頷ける。


「それで、小室家が守護していた柱はどうなんですか? すぐに効力を失うことはないと聞いていますが」

「はい、本日も午前中に柱が埋められている地点を確認してまいりましたが、確実にゆっくりと弱まっています」


 そう言うと、壬子は顔を曇らせた。それだけで悠長にしてられないことがひしひしと伝わってくる。

 私は、もう一つの話題に話を切り替えた。


「小室家に代わる祓い屋の選定はどうなりましたか? 順調に決まりそうですか?」


 私の言葉に、砂陣が口を開いた。


「そちらの件でしたら順調に進んでおります。現在は大社の主導で、九州の大家の祓い屋の当主達と協議選定を進めており、問題がなければ、今週中には決定するかと」


 さすがに極秘の機密情報とはいえ、新たな氏家を選定するにあたってある程度の情報開示は避けられない。

 大家の祓い屋の当主には、太宰府天満宮の現在の状況を、伝えざるを得ないのだろう。


「わかりました。ありがとうございます。新たな氏家が決定次第柱を掘り出す予定ですか?」


 壬子が隣にきてグラスにビールを酌してくれる。ありがたくそれを頂き、私は彼女に質問した。


「そうなりますね。ですが工事の許可申請や準備期間を考えると、小室家の柱の効力の維持は難しいかもしれません。ですので、一時的にではございますが、小室家の管理していた柱を除き、早川家と私共の柱のみで結界を再構築し、さらに上から久井家の大型結界術式での補強を検討している状況です」


「そうですか。補強に関してこちらでお手伝いできることがあれば言ってください。関西から白井家の結界師が同行しています。祠の確認は咲耶が行います」


 その言葉に、壬子はビール瓶を隣に置いて、両手をつき深く頭を下げた。


「はい。木花咲耶姫命様の御神力に心からの感謝致します。白井家の協力も、これ以上に心強いものはございません。あっ、そういえば霞殿への酌がまだでした。すこし行ってまいります」


 そう言うと、壬子が霞の元へ向かい。ちびちびとビールと飲んでいる霞の隣に座る。

 霞はもしかしたら未成年なのかと思っていたのだが、どうやら二十歳らしい。

 壬子の酌に驚きながらも、グラスを空けてビールを注いでもらっている。


「お父様はお元気ですか? 十五年ほど前に、一度私共の道場に見学に来られたことがあるんです。あの時に手を繋いでご一緒にいたお嬢さまが霞さんですよね? 立派になられましたね。なんでも次期当主だとか」


 壬子の言葉に、顔を赤面させて首をブンブンとふる霞。そんな頭振ったら酔うで。


「は……はいっ! あの時は大変お世話になりますた。 私なんか全然立派じゃありません。背もすごい低いですし。次期当主っていうのも世襲制みたいなものですし。父さんにはまだまだ及びません」


 緊張しているせいか、ビールのペースが上がる霞。既に顔が真っ赤になっている。

 優しく微笑んで、ビールを注いであげる壬子。あんまり飲ませすぎないようにね。

 私は、燐がよそってくれた水炊きをいただきながら、少しぬるくなった芋焼酎のお湯割りを喉に注ぎ込んだ。



「しかし、この水炊きめちゃくちゃうまいな。水炊きの概念変わったかもしれん」


この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。

当作品は、初めての執筆作品となります。

当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。

ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。

これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。

ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。


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