博多錯綜 二
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、寺社仏閣などとは関係ありません。
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「功徳室長? いきなり何を?」
功徳室長から急に飛び出した、突拍子もない質問に驚き、彼を見た。
無岸も驚いたような表情を浮かべて、彼を見ていた。
「功徳室長、それは千年以上に渡り祠を守護してきた、我々三氏家の中に裏切り者が存在するということですか? 発言されたお言葉の真意をお聞かせいただきたい」
功徳室長の言葉に、明らかに憤りを感じた無岸の顔が歪む。
私も最初は驚いたが、功徳室長の表情を見ると、明らかに無岸を試しているとわかり、口を開いた。
「そうですよ。対策室の中に顕一学舎との内通者がいる懸念は以前からありました。ですが、何故守護を担っている三氏家の中に内通者がいると考えたんですか? 他言禁止されている極秘機密の情報とはいえ、大社の人間に内通者がいる可能性だってあるでしょう?」
私の言葉に、功徳室長は首を横に振った。
「確かに、統括室長のいうとおり大社の者であれば漏らすこともできたかもしれませぬ。ですが、それはありえないのです。封印した祠のことを知っているのは、当時生き残った宇野大納言浄階ただお一人だけなのですよ。資料やデータとしても存在していおりません。当時の帝にも報告していなかったそうです。そして、殉職した他の祓い屋の親族には羅刹は逃亡したと伝えられました」
──え? そうなの? そこまで機密化された情報やったんか。よく考えたら浄階って永遠のデータベースやな。
「唯一祠の話を聞くことができたのは、浄階お付きの巫女のみだそうです。ですが巫女がそれを知ったのは小室家襲撃の後になります。これらはすべて、昨夜ブリーフィング後、緊急で巽補佐を大社へ送り、宇野浄階へ質問状をお渡しして、浄階本人から直接回答を得ております」
なんと、いつの間にそんなこと調べてたんですか。蓮華君大変やったやろうな。
もしかして、あのハマーで行ったんかな? でも、今まで何度も大社は、三氏家と連絡をとっているのであれば。
大社の他の人間が、情報を知りえる事は可能なのではないだろうか?
「あの、今まで大社との連絡はどのように取っていたのですか?」
私の質問に、無岸が答えた。
「あまりにも機密な情報でしたゆえ、祠の守護に関する内容のやり取りは、術式を施した封書にて直接お渡ししてのやり取りとなっていました。我々三氏家の守柱司と宇野大納言浄階以外の人間がそれを盗み見ることは不可能でしょう」
なるほど、そうなると功徳室長の言う通り、祠の情報を漏らす事ができるのは、必然的に限られる。
それは、小室家、早川家、久井家の三氏家のみとなる。無岸もことの真意に気がついたのか、顔を顰める。
「お疑いになる理由の真意は理解致しました。ですが、久井家にそのような裏切り者がいるとは考えられません。誰かを疑えとおっしゃるのであれば、生き残った小室家の次男坊くらいでしょう。無論、我ら早川家は潔白でございます」
その言葉を聞いた功徳室長は、頷いて私を見て口を開いた。
「では、行きましょうか。統括室長」
早川家を出て我々は、今夜宿泊するホテルまで向かっていた。功徳室長は、再び対策室へ戻っている。
ホテルでチェックインを済ませて、一七時半まで各自休憩することとなった。
シングルルームのセミダブルのベットに座って大きく息をついた。
「咲耶」
「なんですか?」
シワ一つ無いベッドの上に、咲耶が姿を現した。
博多に着いたあたりから、咲耶が見ていることはなんとなくわかっていた。
「早川家で、なにか感じることとかあった? 俺から見たら至極真っ当な祓い屋一族って感じやったけど」
私の疑問に、咲耶は窓を見ながら答えた。
「特に何も言うことはありません。早川一族として真っ当に役目を果たしているのではないですか。あの当主のいうとおり、疑うなら小室家の次男なのかもしれませんね」
やっぱりそうなるのか。現在当の次男は博多区内のビジネスホテルで対策室の監視付きで生活している。
一度彼にも直接あって、詳しい話を聞くべきやな。時計を確認すると一七時に迫っている。
「咲耶、なんか買ってきてほしいものとかあるか? 店には連れてってやれんけど、なんか食い物かってくるで」
「そうですね……じゃあ、一蘭」
「自分わざと言ってるやろ。てかテレビの影響受けすぎや。一蘭の棒ラーメンでええか?」
「じゃあ、めんべい」
めんべいってなんや? スマホを取り出し検索する。
どうやら、福岡県の明太子メーカーが製造しているおせんべいらしい。
なんでこんなん知ってるんや。俺より博多詳しいんちゃうか?
「わかった。みやげもんの店見つけたら買っとくわ」
「いろいろな味があるそうなので、全部買ってきなさい」
そう言うと、咲耶はスッとベットの上から姿を消した。
時刻が一七時半となり、私はホテルのロビーのラウンジへ向かった。
そこには、燐と霞。そして功徳室長と巽補佐がソファに腰を掛けて待機していた。
「お待たせしました。では、久井家との会食に向かいましょうか。水炊き、おいしいといいですね」
この度は、当作品をお読み頂きありがとうございます。花月夜と申します。
当作品は、初めての執筆作品となります。
当方執筆に関して、完全な素人な為、至らない点が数多くあると思います。
ですが、書き始めたからには、皆様に読んでよかったと思って頂けるような作品にして行きたいです。
これからも、随時更新して参りますので応援いただけると幸いです。
ありがとうございました。今後とも応援よろしくお願い致します。




