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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
序章
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プロローグ3

「……ん?」


 その時、マウスカーソルの近くにあった「依頼掲示板」のオブジェクトに見慣れないアイコンが付いている事に気がついた。


「なにこれ?」


 今まではこんな所にアイコンが表示される事は無かったはずだ。

 普段からよく使う機能なので、それは間違いない。


 ランクに応じて様々な依頼を受けられる、このゲームのメインコンテンツの一つ、依頼掲示板。

 何かの仕様変更や機能追加があれば運営からアナウンスがあるはずだし、これは一体??


「もしかして、未発見の隠しイベントとか?いや、流石にそれはないか」


 このゲームが発表されてから既に数年が経っている。

 流石にその間、誰にも発見されなかったなんて事は、まずあり得ない。

 でも、ランクSになった事で、あるいは神剣を作った事で発生する、イベントやクエストか何かだったりする可能性は……。

 絶対にないとは言い切れない。

 いや、ここの運営ならそれくらいやりかねない。


 とは言え、私は今日でこのゲームは引退なので、あったとしても受ける事はないけれど、どんなものかはとても気になる。


 私はそんな好奇心に駆られ、その見慣れないアイコンにゆっくりカーソルを合わせてみた。



【限定クエスト:ランクS裏依頼書】


 

 !!


 あった!やっぱりあった!!


 私は、そのまま躊躇する事なくその項目をクリックし、依頼内容を表示させる。



 クエスト名:神級鍛治師

 依頼内容:時空ヲ越ヱ、魂ヲ繋ギ、世界ヲ救ヱ。

 鍛冶ランク:S

 依頼者:???



「え?何これ??」


 先程までの私のテンションは瞬時に失せ、私は何処か気味の悪さを感じていた。


 初めて見るアイコンに、明らかに怪しさ満点な依頼書。

 依頼者が不明というのがその怪しさに拍車をかけている。



『依頼受諾 是/否 』

 

 

 間髪入れずに表示される選択画面。

 こんな表記も初めて見る。

 通常ならば、「依頼を受けますか? Yes/No」って感じの確認ダイアログだったはず。


 依頼内容を読んでもさっぱりわからないその依頼に、私は少しの不安を感じながらも、それでも好奇心が湧き上がった。

 眠気ですっかり働かなくなった思考も手伝い、私はそのまま「是」のボタンを選択していた。



 ———プツンッ。



 その瞬間、画面の全ての光や音が消え、さらには部屋中の視界の全てが真っ暗になった。


「え!なに?!停電?ブレーカーが落ちた!?」


 私は突然の状況に驚き周りを見回すが、何処を見ても真っ暗だった。

 しかも、窓から見えていたはずの月の明かりや、街灯の明かりさえも、全て一切が消えていた。


「え?」


 流石にこれはおかしいと感じた私は、思わず椅子から立ち上がり、その直後、突然の浮遊感に襲われた。


「なになに!?何がどうなってるの!?って、う、うあぁ……」


 まるで、自分の体が宙に浮いているかの様に全身の力が抜けて行き、力を込めれば込めるほど、その力は外に抜けて行く。

 そんな無重力の様な状態で、周りは完全な暗闇。

 もはや上下左右の方向感覚すらも失い、私は何も出来ずにそのまま宙を漂っている様な感覚のまま、やがて意識を手放してしまった。




 ◆



「うう……、ここ……は?」


 気が付くと、そこは真っ白な世界だった。


 朧げだった意識は次第に少しずつ覚醒し、意識が戻るにつれて、先程までの不思議な出来事を思い出す。


「ええっと……たしか……」


 私があのゲームの中で謎のクエストに触れた時、突然、全ての明かりが消えて無くなり、無重力の暗闇に襲われた。

 そしてそのまま体の自由を失ったあと、気付けば意識を失っていたのだ。


「一体何だったのよ、あれは……。って、え??ここドコ?もしかして……夢の……中?」


 まるで思考が追いつかないながらも、ゆっくりと体を起こして辺りを見回す。

 まだ目が慣れていないせいか、それともまだ意識が覚醒しきっていないせいか、そこは、周り一面何もない、ただただ真っ白の世界だった。


「……いや、これは夢じゃない?」


 どうしてかはわからない。

 だけど、これは絶対に夢ではない。それだけは断言できた。

 これが夢ならあの現実もきっと夢だ、そう思えるくらいには、目に映るもの、肌で感じるもの全てが、あまりにも現実だった。


「一体……何が起こってるの……」


 ゲームをしていて突然真っ暗になったと思ったら、気を失い、気が付けば今度は真っ白な世界。

 何が起きているのか全く意味がわからない。


 しかし、辺りが真っ白な世界ではあるが、あの暗闇の時とは違い、上下左右の感覚や体の自由はちゃんとある。

 体の自由がきくようになった事により、ここに来てようやく、私は多少の落ち着きを取り戻し始めていた。

 そして再度、周りを見渡しながら状況を探る。


 すると、一面の白い世界はゆっくりと色を取り戻して行き、まるで霧が晴れるように徐々に視界が広がって行った。

 しかし、そこにはおよそ信じられないような景色が、私の目に飛び込んで来た。




「え……ここ……空の……上!?」



 私は、空の上にいた。





 視線を落とすと、どこまでも続く広大な大地。

 視線を遠くに飛ばせば、青く澄んだ空と、どこまでも続く地平線。


 それは圧倒的な光景だった。

 まるで、いつかテレビで見たサバンナの空撮映像のような、そんな、とても雄大な景色だった。


「なに、これ……」


 私はその圧倒的な光景に言葉を失い、唖然としながらもその景色に見とれていた。


 とてもありえない状況に、一周回って逆に落ち着きを取り戻し始めた私は、遠くに広がる地平線からまっすぐ縦に伸びて来る、大きな道があることに気が付いた。


 それが気になった私は、その道をゆっくり目で追い、その先にあるものを見つけた私は、思わず小さく声を漏らした。


「え……」


 その道の先にあったのは、大きな城塞都市だった。


 外壁で囲まれた、西欧風の大都市。


 その大都市は、中央に大きな城があり、その城を囲うように4つの大きな建物がある。


「この配置ってまさか……。それに、あれは……」


 城の周りに配置された4つの建物のうちの一つ、それは、私がよく知っている物にとても酷似していた。


「商業ギルド会館……」


 そう、この建物は私がゲームの中で毎日のように利用していた、商業ギルド会館。


 そして、この城塞都市内の建物の配置は、ゲームのカントリーマップの配置そのものだった。


「ちょ、もしかして、ここって……」


 そこまで言って、私は小さく息を呑んだ。


 違う、と否定したいのに、一つの答えにしか辿り着けない。



「まさかここ……、ゲームの、中?」


読んでいただきありがとうございます。

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