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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
序章
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プロローグ1


  高く鋭い、金属音。


 これまでに私が何度も耳にして来た、金属と金属が打ち合う、独特な音の色。


 私の好きな、とても聴き慣れた、いつもの音だ。


 それは、モニターの左右に置かれた、少し小さめのスピーカーから鳴り響いていた。


 “カーン!カーン!カーン!“


 その音に合わせるように、画面の中では赤い髪の猫耳少女が、何度も槌を振り下ろす。


 『鍛治師エト』


私が手加減なしで育て上げた、ステータスフルカンストの最強キャラ。


 そんな私の廃キャラが、今もこの画面の中で何度も槌を振り下ろしていた。


 “——カン——カン”


 —————キン!!!


 仕上げのひと叩きの金属音が、部屋に大きく鳴り響く。


 すると、画面上に「コンプリート!」の文字が現れ、それと同時に、完成した武器の詳細が表示される。


 武器名:覇斬の剣

 攻撃力:774

 耐久力:507

 武器ランク:A++

 生産者:エト


「え……」


 画面に表示された詳細ウィンドウを見て、私は思わず声を漏らした。


 ランクA++のダブルハイクオリティ品。


 いわゆる会心の出来というやつだ。

 その会心の出来の中でもさらに会心の出来の物がダブルハイクオリティ。

 もちろん、その能力値は通常の物よりもずっと高い。


「ランクA++とか、かなり久々に作ったかも。しかも攻撃力700オーバーとか、普通におかしい。何気に過去一の出来だよ」


 当然、鍛治スキルを初めとした、様々なスキルをカンストしている私にとって、ハイクオリティ品が出来ること自体はさほど珍しい事ではない。

 だが、このタイミングでまさかのダブルハイクオリティ品。

 しかも異常に高いその性能値。


「引退を決めた最後のこの日に、まさかこんなとんでもない物が出来ちゃうなんて……」


 私は思わず、小さくそう言葉をこぼした。


 


 ――目の前の画面に映っているのは、MMORPG「エターナルワールド オンライン」の世界。


 ある時突然ネットで話題になり、それ以来、凄い勢いでプレイヤーの数を増やしている超有名オンラインゲーム。


 かく言う私もその面白さに魅入られ、今日で最後と決めたこの日も、こんな遅い時間までゲームに没頭してしまっていた。

 


「よりにもよって、最後にこんな……。こういう時って、わりと同じことが続いたりするんだよね……」


 完成した剣の詳細を眺めながら、私はボソリとそう呟く。


 そう。これまでの傾向として、私の鍛治には波がある。

 ダメな時はとにかくダメだが、いい時は割と連続していい結果が続く。


「今日なら、いけるかも……」


 私はそう呟きながら、壁の時計を確認した。


「本当の最後の最後に、あともう一本だけなら……」


 時間はすでに深夜の1時。


 私はもう一つ、武器を作ることにした。


 ◆


 今から生産する武器は、先程作った「覇斬の剣」よりもかなり難易度の高い武器。


 ランクSの神級武器【神剣エターナル】


 このゲームが始まって以来、まだ作成に成功した人がいない、最高難易度の神剣だ。


 そもそも本当に実装されているのかすら疑われているほどの幻の武器であり、神剣のレシピの素材は、ほとんどがランクSモンスターから超低確率で獲得できる素材であり、その数も種類も多岐に渡る。

 さらには一定以上の鍛治スキルと、特定の条件をクリアしている事が必要で、その成功率も恐ろしく低いらしい。


 全ての生産品の中でも、ぶっちぎりで難易度が高く、鍛治師にとっては憧れの存在であるとともに、ほとんどのプレイヤーが諦めてしまうほどの鬼畜仕様であった。


 そんな事を考えていると、だんだんと不安になってきた。

 明らかに無謀な挑戦だ。

 しかし、このタイミングを逃すと、神剣にチャレンジする機会はもう来ない。

 むしろ、これは引退直前にやって来た絶好のタイミングとも言える。


 せっかくみんなで集めてくれたこの素材。


 倉庫を開けたら神剣が!? これ以上のサプライズはないはずだ。


 まあ、そんな上手くいくわけは無いんだろうけど。


「……よし」


 私は大きく息を吐き、画面をじっと見つめながら、思い切ってマウスを動かし、神剣の作成を開始した。


 ”カーン!カーン!カーン!”


 金属を叩く音がスピーカーから部屋中に鳴り響く。


 私の脳裏に失敗した時の光景がチラつきながらも、必死に心を落ち着けてマウスを動かす。


 神剣をつくるために必死に集めた希少素材……。

 ギルドのメンバー全員が、たくさん苦労して集めた素材。


 私は、失敗するかもしれないという不安に心が押しつぶされそうになりながらも、画面の中で剣を打つ自分から目を背けずに、最後のアイコンをクリックした。


 ピロン!


 

 と、その時。今までに聞いたことのない効果音がスピーカーから発せられた。


「え、も、もしかして、失敗……した??」


 私が思わずそう呟いたその瞬間。


  “キーーーン!”


 仕上げのひと叩きと共に大きな音が鳴り響き、同時にゲーム画面が真っ白に埋め尽くされた。


「うっ!眩しいっ!な、なんなの!?」


 突然の光に私は思わず目を背けてしまい、そして、恐る恐る画面の方に向きなおると、

 そこにはいつものゲーム画面と共に、真ん中に大きく「コンプリート!」の文字の表示されていた。


「え?!え?!?!」


 そしてその文字はすぐに消え、画面には完成した武器の詳細ウィンドウが表示された。


 武器名:神剣エターナル


 攻撃力:6361


 耐久力:3809


 武器ランク:S


 生産者:エト


「!?」


 思わず言葉を失った。


 私はほぼ放心状態となりながらも、時間をかけてゆっくりと状況を整理する。


「まさか……でき……た?」




【実績解除:裏クエスト『神級鍛治師』】


【条件を確認】


【ユニークイベントを開始します……】


見て下さってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お疲れ様です! ゆっくり読ませてくださいまし~♪
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