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この世とあの世の生活

この世とあの世の生活〜第15話〜

作者: 福紙

現世の朝にも慣れてきた。閻魔大王は現世と地獄の新聞紙を読み、白刃(しらは)はその後新聞紙を読み、こん助と杏慈(あんじ)はタブレットでネットサーフィンを楽しんでいた。と、閻魔大王は現世の新聞紙を持つと中からチラシが出てきた。そこに目が止まったのは、家電製品のチラシだった。


「ぬ?てれび?」


「テレビですね。そう言えばこの部屋にテレビがついてないですねぇ」


とこん助が反応した。


「ここで死んだ奴から家具などそのままもらったが…てれびと言うものがなかったか…して、こん助、てれびと言うもの…」


浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)みたいなモノです」


「なるほど」


こん助も説明に慣れてきた。すると閻魔大王は立ち上がった。


「ならば、そのてれびとやらを買いに行くぞ!!」


「その前にお裁きしてからです」


と白刃が言った。閻魔大王は鬼の形相で、


「この時期は多忙であるから嫌だ!!」


と叫ぶ。しかし杏慈の龍の下半身に巻かれて、鋭い鱗が刺さりながら地獄へ帰った。


この時期は(ぼん)が近いため、地獄も多忙になる。盆に帰省が許される亡者などの管理があるからだ。


「そろそろ盆だ!くれぐれも魂の回収、執行中の亡者の管理に取りこぼしなどないように!特に牛頭(ごず)馬頭(めず)!貴様らだ!!」


「「はいいいいー!!いってきますー!!」」


牛頭と馬頭は地獄送り名簿を片手に慌てて出て行った。喝を入れて閻魔大王は立ち上がった。


「現世に行くぞ!こん助!白刃!杏慈!」


と閻魔大王は家電製品のチラシを握りしめていた。


現世に来た閻魔大王一行ら。こん助は子供に化け、杏慈は閻魔大王に人間にしてもらった。アパートから近くの家電量販店に着いたあの世の者たちは度肝を抜かれた。はっきり言って見た事もない物ばかりである。こん助のタブレット以外にたくさんの電気製品がある。アパートには家具だけあって電気製品がない。


「な、何だ…この賑やかなところは…」


「僕がタブレット買った時も賑やかでしたよー」


「ぅお?!何だ?!(ねずみ)か?!」


白刃の足元に丸い形をした電気製品が当たった。杏慈はそれを持ち上げて、その表面に書いてある説明を見た。


「…自動掃除機?」


「あ、それは自動でゴミやホコリを取ってくれる電気製品です」


「え?!(ほうき)と塵取りいらないの?!」


「現世では掃除機と言うのでゴミやホコリを掃除するんです」


とこん助に言われると、杏慈が目を輝かせた。


「閻魔様!これ、欲しいです!!」


「却下だ」


「ええ?!何でー!!?」


と杏慈が言うと、閻魔大王はその製品の試運転場所を指差した。


「あんなのが部屋の中をちょこまか動かれてはたまらん!!」


「ちぇー。さぁ、仲間の元へお帰り…」


と杏慈は頰を膨らませてその自動掃除機を手放した。家電量販店は他にもたくさんある。パソコンにオモチャ、ゲーム機。そして目玉はテレビである。


「しかし、閻魔様。何故そんなにてれびとやらに興味をお持ちで?」


と白刃が尋ねると、閻魔大王は笑った。


愚問(ぐもん)よ、白刃。てれびは現世の情報源!新聞紙でも情報は得られるが、今起きた事を知る事は難しい!だから、てれびで最新の現世の情報を得るのだ!!…とこん助が教えてくれた」


「はぁ…そうですか」


「あと番組と言うのがあって、劇など見られるそうだ」


と閻魔大王はワクワクしながらテレビコーナーへやって来た。たくさんの画面があり、人や自然などが映っている。


「薄っぺらい箱の中に人がいる!」


お決まりの台詞を杏慈が言った。


「ふ…杏慈よ、幼稚だな…。私は浄玻璃鏡で見慣れているからな…!」


「あれは亡者の生前の行いが映し出されるだけじゃないですか…」


とこん助は呟き、ふとあるテレビ画面を見た。そこには二足歩行で立っている狐のような動物と、巨大な黒い龍の一部が映っていた。


「??」


こん助はそれに向かって動くと狐のような動物が同じ動きをする。と、杏慈がこん助を覗き込む。


「どうしたの?こんす…」


「ぎゃああああああーー!!」


こん助は叫んだ。そのテレビ画面に黒く恐ろしい龍が映った。中の狐のような動物も同じ動きをする。


「どうした?こん助よ」


閻魔大王と白刃が来ると、そのテレビには閻魔大王と白い狐が映っていた。


「閻魔様ああー!!現世に真実を映す鏡が売ってます!!」


とこん助はそのテレビ画面を指差した。


「ぬぅ?!こんな物を人間が作っただと?!あり得ん!」


閻魔大王はそのままだが、他の者は人間に化けているため、テレビ画面には本当の姿が映っている。彼らが驚いているのは、ビデオカメラが映し出している画面であった。よくよく考えれば、前回見ていた動画もビデオカメラよって撮影され、幽霊が映っていた。それと同じ原理で本当の姿が映ってしまっている。


「てれびは真実も映し出すと言うのか?しかし、何故人間がそのような物を…!?」


「わー!私、映りきってない〜!」


「当たり前だろ!何尺あると思ってるんだ?!」


まだ彼らはビデオカメラの存在に気づいていない。と店員が近づいて来た。


「お客様、何かお探しでしょうか?」


「ぬぉう?!店員よ!あれは何だ?!」


と閻魔大王が画面を指差すと、こん助、白刃、杏慈は後ろに逃げる。今は閻魔大王と店員しか映っていない。


「あぁ、こちらのビデオカメラで映した物を流しております」


「び、びでおかめら?!それが真実を映し出すのか?!」


「こちらは最新型でとてもクリアに…おや?」


と店員がそのビデオカメラを手に取って閻魔大王に向けると、後ろに狐と龍が映ってる。


「え?ええ?え?」


と店員は目をパチクリさせる。閻魔大王はハッと気づき、


「そ、そうか!うむ!また来る!」


とこん助に合図を出して足早にその場去った。ポカーンと店員は何が起きたかわからず、呆然としていた。地獄の者たちは店を飛び出して走ってアパートに向かう。


「てれびはしばらくお預けだ!あのびでおかめらと言う物は大変な物だ!人間が持ってはならぬ!!」


「僕たちの姿を映すなんて…!!」


「誰かの知恵か?!」


「恥ずかしいー!私の元の姿映ってたー!」


閻魔大王は即刻地獄に戻り、緊急の会議を開いた。


ビデオカメラは人間の目に見えない物も映し出してしまうのだろうか…。

何だか最後は怖い動画のナレーションみたくなってしまった…。テレビコーナーに設置しているビデオカメラにいつも驚く中の人。

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