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第九話 決闘

「氷属性のやつ可哀想だよな」


「しゃあねぇよ。初心者殺しが一番嫌いなタイプだろ」


 ギルド内は大盛り上がりだった。


 酒を片手に笑う冒険者たち。


 ヤジ。


 歓声。


 完全に見世物だ。


 決闘場の中央に立つ俺とソフィアを囲むように、大勢の冒険者が集まっている。


 そして。


「では両者、定位置に」


 受付嬢が緊張した声で告げた。


「これより――」


 一瞬静まり返る。


「初心者殺しことソフィア・グレース」


「新人、神白たくまの決闘を始めます!」


 カンッ――!!


 開始の鐘が鳴った。


 その瞬間。


 ソフィアが真っ直ぐ俺を見た。


 青い瞳。


 冷たい声。


「私はあなたみたいな人を何人も見てきました」


 ギルド内が静まる。


「不遇属性になって、それでも諦めきれず冒険者になる者」


「……」


「でも、その人たちは全員死んだ」


 ソフィアは剣を構えた。


「あなたもどうせ同じ」


「あなたは舐めてるのよ。この世界を」


 その言葉を聞いた瞬間。


 俺の中で何かが冷たく軋んだ。


「……お前は」


 気づけば口が動いていた。


「帝国軍に殺されかけたことあんのか?」


「……え?」


 ソフィアが目を見開く。


 俺は淡々と続けた。


「何も知らない世界に急に呼び出されて」


「弱いからって殺されかけたことあんのかって聞いてんだよ」


 周囲の冒険者たちが黙る。


 さっきまで騒いでいた空気が、一気に消えた。


「たった属性が氷だっただけでだ」


 胸の奥が冷たく痛む。


 思い出したくもない。


 あの日。


 見下した目。


 笑い声。


 殺意。


「この世界を舐めてる?」


 俺はソフィアを睨む。


「お前は知ってるのか?」


「この属性持った奴がどれだけしんどいか」


「お前に分かるのか?」


「……っ」


 ソフィアが黙った。


 初めて言葉に詰まったように。


 俺はゆっくり構える。


「来いよ」


 冷たい声が漏れる。


「俺に、この世界がどんなもんか見せてみろよ」


 その瞬間だった。


 ピキッ――。


 俺の両腕が凍り始める。


「なっ……!?」


 ソフィアが目を見開く。


 白い冷気がギルド全体へ広がっていく。


 床が凍る。


 受付の水晶に霜が張る。


 そして。


「お、おい……酒が……」


 冒険者の持っていた酒瓶。


 その中身が一瞬で凍りついていた。


 ギルド内が完全に静まり返る。


 凍った氷が俺の腕を覆い尽くす。


 そして現れた。


 青白く輝く巨大な氷の籠手。


 元の腕の倍以上ある、異形の武装。


 ――氷獄籠手フロスト・ガント


「なんだよ……あれ……」


 誰かが震えた声を漏らした。


 だが。


「っ……!!」


 ソフィアは悔しそうに剣を突き出す。


 その瞬間。


 ボォォォッ――!!


 剣が炎に包まれた。


 燃え上がる炎は巨大だった。


「さすがに氷属性が火に勝てるわけねぇだろ!」


「そうだよなぁ!!」


 周囲から声が飛ぶ。


 そしてソフィアが動いた。


「はあぁぁぁっ!!」


 炎の玉を放ちながら、一気に距離を詰めてくる。


 速い。


 だが。


 俺は腕を横へ振った。


 次の瞬間。


 空中に巨大な氷柱が出現する――。


――続く。

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