第一話 修学旅行に行けなかった俺、なぜか異世界に召喚される
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修学旅行当日。
クラスLINEは朝から通知が止まらなかった。
『集合したー!』
『バス広ww』
『朝霧寝坊しかけてて草』
楽しそうなメッセージが、次々とスマホ画面を流れていく。
その画面を布団の中で眺めながら、俺――神白たくまは小さくため息を吐いた。
「……俺も行きたかったな」
額に乗せた冷却シートはもうぬるい。
熱は三十八度後半。完全にアウトだった。
よりによって修学旅行当日に熱を出すとか、どんな不運だよ。
「はぁ……」
スマホには、クラスメイトたちが楽しそうに写真を送り合う様子が映っている。
駅弁。バス。観光パンフレット。
全部、俺には関係ない。
「神様なんていねぇな……」
そう呟いて、スマホをベッドに放り投げた。
「くっそ……行きたかった……」
修学旅行なんて、一生に一回しかないのに。
思わず咳が漏れる。
「ゴホッ、ゴホッ……っ」
最悪だ。
「……もういい。ふて寝だふて寝」
俺は布団を頭まで被った。
一方その頃。
修学旅行先へ向かう大型バスの中では。
「いや〜楽しみだな修学旅行!」
テンション高く声を上げたのは森田かずなり。
クラスでもかなりうるさい陽キャだ。
「まぁ、たくまが来れなくなったのは悲しいけど」
「そうだね……神白くん大丈夫かな」
少し心配そうに窓の外を見るのは朝霧みお。
優しくて面倒見が良く、クラスでも人気の女子だ。
「朝霧、大丈夫だって。たくまにいっぱい自慢してやればいいんだよ」
「サイテー森田くん。たくっちかわいそう。みおそう思うよね〜?」
ニヤニヤ笑いながら話に入ってきたのは土田かんな。
軽いノリで人をからかうタイプだ。
「そういうかんなも、ちょっと神白くんに自慢したそうな顔してるけど」
「がち? バレちゃった?w」
「お前らなぁ!」
森田は豪快に笑った。
「でも俺らの友情は消えねぇぜ!」
「はいはい」
「俺、森田かずなり! 朝霧みお! 神白たくま! 土田かんな! 俺らの友情は世界一! まさに心の友ってやつだな!」
「うわ〜、たくっちいたら絶対こう言うよ」
かんながたくまの声真似をする。
『お前と仲良くすんのは高校までだ。それ以降は連絡すらしねぇ』
「悲しいこと言うなよ!」
「でも本当に言いそう」
「そうだね」
笑い声がバスに広がる。
その時だった。
ゴトッ。
「……ん?」
バスが妙に揺れた。
「なんだ今の」
「めっちゃ揺れたくない?」
次の瞬間。
バス全体が、怪しい白い光に包まれた。
「え――」
誰かの声が途切れる。
視界が、真っ白に染まった。
――〇〇高校修学旅行生徒、集団失踪。
「……ん?」
気がつくと、真っ白な空間に立っていた。
「どこだここ……夢?」
周囲には何もない。
ただ、白い。
静かすぎるほど静かだった。
すると。
「ごめんなさい」
声が聞こえた。
振り返る。
そこには、一人の女性が立っていた。
長い銀髪。
透き通るような白い肌。
どこか悲しそうな瞳。
「あなたには、本来――」
「え?」
「……ごめんなさい。あなたにできるのは、これくらいなの」
意味が分からない。
だが、その女性は本当に申し訳なさそうな顔をしていた。
「ちょ、待っ――」
その瞬間。
視界が再び白く弾けた。
「神白くん! 起きて!」
「……ん?」
聞き慣れた声に目を開ける。
最初に見えたのは――朝霧みおの顔だった。
「……は?」
「よかった〜! 起きた!」
「なんで朝霧が俺ん家に……?」
「お前何言ってんだよ」
隣には森田。
さらにかんなまでいる。
「え、なんでお前ら……」
そこでようやく気づく。
俺、布団に包まれたままだ。
そして周囲は――俺の部屋じゃない。
豪華な大広間。
赤い絨毯。
兵士。
玉座。
「……え?」
「ぷっ」
誰かが吹き出した。
「布団ごと来てんだけどwww」
「だっさw」
「修学旅行来れなかったからって寝たまま異世界来るやつ初めて見たわ」
「うるせぇ!!」
顔が熱くなる。
いや元から熱あるけど!
そんな俺たちを見下ろすように、玉座の男が口を開いた。
「歓迎しよう、異世界の勇者たちよ」
重厚な声。
豪華な王冠を被った男。
「我が名はバンガス・レ・アヘレス。アヘレス帝国国王である」
王は笑っていた。
だがその目は、どこか人を値踏みしているようだった。
「突然の召喚に戸惑っているだろう。だが安心したまえ。君たちはこの世界を救う存在だ」
世界を救う?
意味が分からない。
「この世界には五つの大迷宮――ダンジョンが存在する」
王は静かに続けた。
「ダンジョンは百年に一度暴走し、中の魔物が地上へ溢れ出す」
周囲の空気が少し重くなる。
「SS級モンスターによって、過去には国が滅びたこともある」
そして王は俺たちを見渡した。
「ゆえに我が国は、暴走の一〜二年前に勇者召喚を行う」
「勇者……」
「この世界では属性こそが力の全て」
すると兵士たちが水晶を運んできた。
「属性には格がある」
王は指を折りながら説明する。
「光、雷、火、水、風、土、氷」
最後だけ、明らかに声色が変わった。
「上位属性ほど強力。そして氷は最弱――ハズレ属性だ」
ざわつくクラスメイトたち。
「さらに例外として、“神聖属性”が存在する」
王の目が細くなる。
「神聖属性は、極めて稀な特別属性だ」
そして始まった属性鑑定。
「土田かんな」
「は、はい!」
水晶が輝く。
「……神聖属性!」
大広間がどよめいた。
「おお……!」
「神聖だと!?」
王の顔に笑みが浮かぶ。
「素晴らしい!」
続いて。
「朝霧みお」
「……雷属性!」
「森田かずなり」
「光属性!」
一気に空気が華やぐ。
「すげぇ!」
「勇者じゃん!」
「さすが森田!」
三人はあっという間に注目の的になった。
そして。
「最後。神白たくま」
俺はゆっくり前に出る。
水晶に触れた。
青白い光。
嫌な静けさ。
「……氷属性」
一瞬で空気が変わった。
「うわ、マジか」
「ハズレじゃん」
「終わったな」
クスクスと笑い声が広がる。
さらに。
「修学旅行来れなかった上にハズレ属性とか、逆に才能だろ」
クラスの陰キャ男子がニヤつきながら言った。
「足引っ張んなよ?」
「……っ」
「おい」
森田が睨む。
「そういうのやめろって」
「神白くん大丈夫?」
「たくっち気にすんなって」
三人が庇ってくれる。
でも。
玉座の王は露骨にため息を吐いた。
「……氷か」
隣の執事も冷たい目を向けてくる。
「戦力外ですな」
その言葉が、胸に刺さった。
「……」
悔しい。
でも反論できない。
その時だった。
視界に、突然文字が浮かんだ。
《加護を確認しました》
「……は?」
俺にしか見えていない。
《神授加護》
《魔力永続成長》
《属性変換速度上昇》
《属性看破》
「なんだ……これ?」
俺は呆然と、その文字を見つめていた。




