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メイドだって戦闘職です  作者: カエデ
二章
71/111

生産職達の戦い《鍛冶部門》

(ミュー視点)


 さてさて、僕の元には一体どんな鍛冶師が集まったのか。

 そう思って、少し楽しみにしながら扉を開けたんだけど……。


「へっ、そんな作りもんの筋肉ダルマがなんなんだよ!」

「はんっ、俺様の筋肉は実際に鍛えられた本物の美なんだよ!」


 少し扉を開けば中からは言い争っている2人の声がする。

 言い争っているのは、片方はすごい細身な長身の男で、もう片方は山のような筋肉をした、こっちも長身の男、それで何で争ってるのか内容を少し扉の外で聞いてるけど、お互いに自分の方が鍛冶師には似合っているとかいないとかで言い争っているらしい。

 今から試験するのに、どうしてこうも空気が悪い状態からのスタートになるのかなぁ……。


 止める気もなくただただ周りで見ている人達は我関せず。ため息がこぼれてしかたがないよ。だけど言っていても試験は始められないし、行くしかないか。


「はいはいそこまで、もう試験を始めたいからその辺にして〜」

「なんだテメェ?」

「邪魔しないで貰えるかな?」


 そんなふうに、止めに入った僕にまで突っかかってくる2人だけど、ここで引く訳にも行かないから、僕が今回の試験官であることを伝える。


「僕は試験管だ、参加する気がないなら帰ってもいいよ」

「ぶっ、あははははは!お前が試験管だァ?」

「君が?冗談が好きなのかな?」


 ほぅ、流石の僕でもそれは許せないよ、小さいから?女だから?ああそうさ!そんな事は散々言われてきたよ、他の鍛冶師のプレイヤー達とも上手く馴染めずに一人腕を磨き続けて……。

 それで今はこのギルドの、この工房の責任者を任されているんだ。僕が弱気でいれば、ここの皆が舐められる。

 僕だけならそれは別にいいけどさ……そのせいでここの皆まで下に見られるのは許せないよ。

 僕は最近打ち上げだある一本の剣を、アイテムボックスから片手に取り出して、それを重力に逆らわずにそのまま刀身を床に打ち立てる。


 床の石畳とぶつかって甲高い音を立てるその刀身は、薄らと黄色い光を放っていた。


「はぁ、文句があるなら……この位の剣を打てるようになってから言ってくれるかな?これでもこのギルドの鍛冶を任されてるんだ。試験も受けないで落とされたいならそういえ!」


 そう言ってその場は静かになり、言い争いをしていた2人も、一瞬で静かになり、続いて僕の打ち立てた剣を見て、その性能を確認したのか驚いた顔をして再び黙る。

 僕が今打ち立てたのは、ラムネ達がよく使っていたらしい、ゴーレムの洞窟で手に入れたらしい魔鉱石と、そのゴーレムの核になっていた地属性の魔力が宿った魔石を使って作成した、いわゆる魔剣と言うやつで、その性能はこんな感じだ。



地の魔剣 レア度5 武器 品質A+

攻撃力:300 重量:50 耐久値:500

·地属性魔法、消費魔力軽減(大)

長い間濃い魔力に晒され続け、魔鉱石のゴーレムと化した鉄の巨人(アイアンゴーレム)その強力な地属性の宿る核によって、装備者が地属性の魔法を使える様になる魔剣。



 少し前の話になるけど、この剣を作ろうと思ったのは、ライムからなんか変なアイテムを僕や他の皆が貰った時から、ステータスが異常な伸び方する様になってからかな。

 後で聞けば最初のイベントで、要らないほど交換しちゃったから信頼出来る仲間にだけ渡すって事で考えてるらしい、それにもう交換のリストには乗ってないみたいだから手には入らないだろうとも言ってたね。

 まぁそんな貴重な物を貰ってしまったんだ、僕もその期待には答えないとね。

 因みにそのおかげで僕も戦闘が普通に出来るようにはなったけど、鍛冶師として鉄を打って物を作る方が楽しいからね。結局はあまり戦闘はしていない。


「さて、分かってもらえたみたいだし、早速試験を始めようか」


 そう言って順に工房に案内して、その作業風景を見せてもらったけど、皆打ち始めたら真剣で、一生懸命に取り組んでるのは見てて嬉しい。


「お、おめぇなかなかやるじゃねぇか」

「そっちこそ、それ、かなり良い出来じゃないか」


 どうやらさっき言い争いしてた2人は、既に作業が終わったみたいで、互いに出来上がった作品を見せあっている。

 するとこっちに近づいてきて、出来上がった物を2人が店に来る。


「どうだ坊主、俺様のこの大剣は、良い出来だろ?」

「僕の片手剣もなかなかだろ?」

「……」

「どうしたんだ?坊主」


 いきなり黙り込んだ僕に2人は顔を見合わせて首を傾げるが、そんな事はどうだっていい、僕は……僕は………。


「僕は女だ!坊主じゃない!」

「「は?」」


 僕が女だと主張すると、自分の作った武器たちを落としそうになりながら、まだ理解出来ていないと言った感じで固まったままの2人は、次の瞬間にはハッと我に返ったように慌てて頭を下げてきた。


「すっ、すまねぇ嬢ちゃん」

「僕も気が回らなかった。すまない」

「いや別にそこまではいいけどさ」


 そうこうしている間に、殆どの人達が終わったみたいだから、今回の試験の結果を発表することにした。


「今回は、全員採用します」

「「ええええええ!?」」


 いきなり全員を採用するという僕の言葉に皆して驚く訳だけど、別にこの結果は予想していなかった訳じゃないんだよね。

 生産は適当にやって出来るものじゃない、だから予めこうなる事も考えて、この鍛冶部門は特に採用人数に制限を付けてはいなかった。

 それこそ今後の人員不足も考えれば、この段階から信頼出来る職人達を確保してしまうのが手っ取り早い。

 という事で、今回は全員を採用、そして今後は馬車馬のようになるかは知らないけど、あれこれ頑張ってもらわないとね。


「という事で採用なんだけど、うちに所属するのかは皆に任せるね」

「どういう事だ?」


 いまいち理解出来ていない人も居るから説明すると、今後鍛冶師を専門にするギルドだって立ってくるはずだけど、それでもうちに所属したいかどうか、採用はしたけどその後の判断はおまかせ、現実での就職活動みたいになっているのはリズさんの発案でこうなった。


「という訳、どうする?」

「そんな事ァ決まってる」

「僕達はこのギルドでお世話にならせてもらうよ」


 2人に続くようにまた一人一人と続いて行き、結局全員がギルドに入ることになった。


 これで鍛冶部門の試験は終了っと。

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