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8.異世界生活65日目パート2

 照朝の月 星の日 天気:晴れ


 どうも葉加藤(はかとう)久太(きゅうた)です。


 俺とユランは始まりの街チャレンジタウンを出てモンスターがのさばるフィールドに出ていた。


 そこには犬に似たモンスターや巨大なネズミのモンスター、変なくちばしをもった鳥のモンスターが我が物顔で生息していた。


 レベルは始まりの街付近に生息しているとのことで高くてもレベル10かそこらであった。


 今の俺はレベル14と他のモンスターたちと比べて高かったので、万が一攻撃を食らってもすぐに倒される心配はなかった。


 しかし、初めてモンスターと対面していることで、俺は情けないことに恐怖に足がすくんでいた。


 道中、俺の腰が引けた姿にユランがニヤニヤと笑みを浮かべて笑っていた。


「キュウタさん? ビビってますか?」


「び、ビビッてないしっ! 怖くなんかないもんね!!」


 嘘だった。


 本当はめっちゃ怖い。


 前世も動物は苦手だったのだ。


 猫や犬も苦手だったのに、いきなりモンスターと対面したところで苦手が治るはずもなく、ただただ怖かった。


「ふっふっふ! まあ私のそばに入れば怪我せずクエストを成功できますよ。だからあまり離れて行動しないでくださいね?」


「し、仕方ないな……」


 仕方なくなんかなかった。


 めっちゃありがたかった。


 俺はユランの背後1メートル圏内から離れないように維持しようと、ただただユランの背中だけを見ていた。


「さあ、あと少しですよ」


 ユランが指差して向かう場所は、山だった。


 山間に住み着く一匹のグラウンドラゴンの討伐が今回のクエストであった。


「本当に倒せるんだよな? 俺は一緒にいるだけでいいんだよな?」


「そうですよ。作戦通りに動いてくれれば何も問題なんか起きせんから」


 言ってユランは先を警戒せずにどんどん山道を登っていく。


 ユランはレベル58というのもあって身に着けている装備はそれなりに良い物らしい。


 対する俺は全て初期装備である。


 グラウンドラゴンの攻撃を一度でも食らえば命は助からないだろう。


 だが、ユランはクエストに向かう前にはっきり言った。


『キュウタさんに指一本触れさせやしませんよ』


 自信満々に言う彼女に押され、俺は一緒にクエストに行くことを渋々了承したのだった。


「ストップです。目標がいました」


 ユランが手で制しつつ、身をかがめたので俺もそれに倣う。


 草木に隠れながら前を見ると、山間の開けた場所にどデカいドラゴンがいた。


 一本角を額に掲げ、全身が赤茶色の鱗で覆われた巨大なグラウンドラゴンがそこにいた。


「どうするんだ? こっから攻撃するのか?」


 俺はユランの隣に並んでドラゴンに視線を向けながら聞いた。


「チッチッチ! そんなに慌てる必要はありません。まずは様子見です」


 ユランは指を立てて左右に振りながら、落ち着いた素振りで説明する。


「モンスター討伐で重要なことはまずそのモンスターの生態を知ることです。どんな能力や習性を持っているか、それを知るところからがモンスター討伐の始まりです」


「お、おう。頼もしいな。ユランが頼りがいある冒険者に初めて見えた」


「ちょっと!? 今まで私のことをどんな風に思ってたんですか!?」


 俺の言葉に頬を膨らませ怒るユラン。


「人の家に無理やり押し掛けては被害妄想で騒音被害を及ぼす無駄にプライドの高い扱い辛い自称英雄さん(笑)」


「人をダメ人間みたいに言わないでくださいっ!!」


 ユランは涙目になりながら言った。


 図星を突かれたからか声が若干裏返っていた。


 まあ俺も毎日のんびりダラダラしているからダメ人間という部類では同じであるが…………。


「すまんすまん。ちょっと言い過ぎた。頼りにしているから、しっかりやってくれユラン」


 俺が謝ると鼻をすすりながら「わかればいいんです」とユランは言った。


「話を戻します。今回の作戦は私が契約している守護精霊たちの中で一番強力な子を召喚します」


 ユランは真面目な顔で作戦の概要を改めて説明し始めた。


「召喚して少しすると私は強烈な睡魔に襲われてしまいます。グラウンドラゴン自体は精霊が倒してくれるので私が寝たら事後処理をお願いします」


「わかった」


 俺は返事して事後処理の内容を思い出す。


 まずモンスターを討伐したら、そのモンスターの身体の一部を剥ぎ取り「転送の布」と呼ばれるマジックアイテムで包んでギルドへ送る。


 それを受け取ったギルド側が人を出して倒されたモンスターの確認と死体処理を行ってくれる。


 モンスターの種類によっては死体処理やギルドへの連絡など対応が変わる場合があるらしいが、大抵は同じように転送の布を使ったやり方らしい。


「ギルドから人が来るまで遺体を保全しないといけないんだよな?」


「そうです。他のモンスターが食べようとしたり、素材の一部を剥ぎ取ろうと盗みを働く馬鹿もいます。まあ今回守るのは守護精霊(うちの子)がやりますので、そこまで警戒する必要はないですよ」


 俺が聞くとユランが丁寧に教えてくれた。


「モンスターを倒すのに時間がかかる場合、私は眠りこけて動けなくなります。その間も守護精霊は戦ってくれるのでいいですが、『転送の布』は()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()。守護精霊が使うわけにはいかないのでそれをキュウタさんにお願いしたいです」


「任せろ。ちゃんと送ってやる」


 ユランの言葉に俺は頷いた。


 これがユランが一人で強力なモンスターの討伐に行けなかった理由であった。


 強力な守護精霊を出すと強烈な睡魔に襲われる。


 そうなると事後処理に影響が出て、ギルドへ連絡できずにクエスト成功と認められない可能性がある。


 スムーズに行けば、すぐに転送の布を使って討伐成功の連絡ができるが、そうでないとタダ働きになるリスクがあった。


「睡魔のせいで単独だと来れなかったんだな」


 俺が言うとユランは恥ずかしそうに顔を背けた。


「……あんまりそのことには触れないでください。気にしてますから」


「わかったよ」


「それと、もう一つ」


 ユランは俺を見ると頬を赤らめながら言い辛そうにした。


「なんだよ?」


「わ、私が寝ている間に…………えっちなことはしないでくださいね?」


「するかっ!! 俺を何だと思ってんだよ!?」


 心外であった。


 ユランに手を出そうと思ったことは一度もなかった。


 同じ家に住むことになってからというもの、ユランが女性という立場で嫌がることがないように配慮していたのに。


「ったく、そんなに心配なら宿屋だったり別の場所で寝泊まりすればいいだろ? ユランの稼ぎなら幽霊ハウスで暮らす必要もないだろうに」


 俺が呆れて言うとユランは慌てて反論する。


「し、仕方ないじゃないですか!? こんなに可愛い女の子なんですよ!! 自分の身は自分で守らないといけないんです!! 警戒して当然でしょ!?」


 切実なのだろう。


 ユランの言葉には重みがあるように感じた。


「まあ女子が男と同じ生活空間で自分の身を守ろうとするのはわかる。けど騒音を出して人の安眠を妨害するような身の守り方は勘弁してほしい」


 俺も安眠妨害に関しては切実な思いで嫌だった。


 それを口にするとユランはシュンとして落ち込む。


「す、すみません。キュウタさんがそうするとは思いませんが、万が一を思うと心配で心配で……すみません」


 ユランはそう言って頭を下げた。


 その様子に俺はこれ以上言うのも気が引けたので話を戻そうと思った。


「まあいいよ。手を出すつもりもないしちゃんとギルドには連絡する。ユランにはあのドラゴンの討伐を任せるから、あとのことは俺と守護精霊に任せてくれ」


 俺が言うとユランは頷いてグラウンドラゴンを見た。


 ここからがクエストのスタートだった。




 ーーー




「凄いなぁ」


 俺は目の前の光景に感嘆した。


 グラウンドラゴンは既に息絶えてその身体を地面に置いていた。


 その周りには俺と眠っているユランと、彼女が召喚した守護精霊”セイレーン”がいた。


「キュウタさん。この子の代わりにギルドへの連絡をお願いします」


 セイレーンが言った。


 美女の上半身に魚の下半身を持つ人魚のセイレーンは、地面に足(魚の尾)をつけることなく、空中に浮いていた。


 礼儀正しい性格らしく、丁寧にお辞儀する姿はどこか幻想的に見えた。


「わかりました。周囲の警戒とユランをお願いします」


 俺は敬語でセイレーンに言った。


 ユランがセイレーンを召喚したときからその美貌に俺は惹かれていた。


 ユランも美人だと思うが、セイレーンのほうが俺の好みだった。


 そのため言葉を交わそうとすると緊張して敬語になってしまった。


(うろこ)で良いよな?」


 俺は言いつつ、恐る恐るグラウンドラゴンの肌に触れる。


「硬いなぁ。うわっ!? ここ生暖かいな……。今まで生きてたもんな」


 俺は持っていた剥ぎ取りようのナイフでグラウンドラゴンの一部である鱗を剥がす。


「ふふ。大丈夫ですか?」


「あっ、はい! 大丈夫です! ありがとうございます!!」


 セイレーンに心配され、すこし気恥ずかしくなりつつも剥ぎ取り作業は順調に終わった。


「えーっと、これを布で包めばいいんだよな」


 俺は懐から転送の布を取り出す。


 地面に広げて中央にグラウンドラゴンの鱗を置く。

 

 そしてそれを包むようにして最後に結んだ。


「これでいいのかな?」


 そのまま離れて放置すると、布は突然光り出してその姿を消した。


 一瞬の出来事だった。


「凄えなぁ。こうやってギルドに行くんだな」


 俺はギルドへの連絡を終えると、セイレーンとユランの場所まで戻る。


「終わりました。あとはギルドから人が来ると思うんでそれまで待っていましょう」


「はい。わかりました」


 俺の言葉にセイレーンは笑顔で応えてユランを見た。


 よだれを垂らし、安心しきった顔で寝ているユランは間抜けな姿であった。


「セイレーンさん、めっちゃ強いんですね。俺見ててびっくりしましたよ」


 俺は待っている間、セイレーンさんと話そうと声をかける。

 

 グラウンドラゴンとの戦いぶりは圧巻して強かった。(詳細は省く)


「ふふ。そうですか? そう言ってもらえると嬉しいですね」


 セイレーンの微笑(ほほえ)む顔に俺は無茶苦茶ドキドキした。


 凄い綺麗だ。

 

 声も可愛いし心臓の鼓動が止まらんわ。


 これが恋か。恋なのか?


「けど、それは私だけの力ではありません。この子のおかげでもありますよ」


 セイレーンは言いつつ、ユランに近付くと顔にかかった髪を指で優しく払う。


 愛おしそうという言葉が似合う仕草でユランを見る彼女の顔は慈愛に満ちていた。


「……召喚術ですよね? 俺、詳しくないから仕組みがわからないですけど、ユランがセイレーンさんの力を強くしているんですか?」


 俺はセイレーンが強い理由を聞こうとしたら、彼女は笑ってそれを否定した。


「そうじゃなくて、私がもし強そうに見えるならそれはこの子を守りたいって思っているからです。ユランのためなら私はどんな敵でも退けようと戦えますから」


 セイレーンはそこまで言うと、真面目な顔つきで俺を見た。


「キュウタさん。これからもこの子と仲良くしてあげてください」


「……唐突ですね。どうしたんですか? いきなりそんなことを」


 真剣なセイレーン言葉に俺は訝し気な気持ちで聞いた。


 すると彼女は悲しそうな顔で話し始める。


「先の魔王軍との戦いでこの子と仲の良い友達が何人も亡くなりました。本人は表に出しませんが、本当は寂しい気持ちで一杯のはずです」


「…………」


 セイレーンに言われて俺は黙ったまま寝ているユランを見た。


「この子は明るく振る舞ってますが、それが心配なんです。我慢してるから」


 知らなかった。


 ユランが魔王軍と戦っていたのは聞いていたが、ユランから詳しく話してもらったことはなかった。


 隠していたのだろうか?


「それに……キュウタさんは信頼できる人だと、あの子の守護精霊たちはみんな話しています。私も含めて」


 セイレーンは俺を見て言った。


「こんな世界だから、人によっては睡魔で倒れたあの子に乱暴を働こうとした人も過去にはいます。安心して身を任せられる友達があの子には必要なんです」


「そうか。だからあんなに必死になって、ニコチンを呼び出したりしてたのか……」


 俺はユランの言動とその動機の中身を始めて知った。


 セイレーンの言葉は濁されているが、口には出しづらい経験も多いのだろう。


「最近のあの子は明るい様子で、あなたと過ごすのを楽しそうに話してくれます。今は魔王軍との前線からも離れて気持ちが楽になったのもあるでしょう。どうかこの子と……ユランとこれからも友達でいてあげてください」


 お願いしますとセイレーンは頭を下げてくる。


 その姿は娘を思う母親のように見えた。


「まあ、何かの縁で同じ幽霊ハウスに暮らすことになったんで、一緒にいる間は仲良くはしますよ」


 俺はそう言って、空を見た。


 浮浪者の友達でもある三人組もそうだが、辛い経験をしてチャレンジタウンにやってきた人が結構多い。


 俺は前世もそうだが、そこまで苦労して生きてはこなかった。


 他のみんなと比べると、それこそ人生イージーモードと言っても過言じゃない。(それでもバイク事故で死んだわけだが)


 そんな俺が彼らと一緒にのんびりと暮らすこの世界は、来てみて案外悪いものではなかったと改めて思う。


 特別という文字のない俺の異世界転生は彼らと共にのんびりとだけど、確かにここで生きて笑っていける。


 そんな気がしていた。


 遠くを見ると、空から何かがこちらに向かってやってきていた。


 それは見覚えのある生き物だった。


 ギルドで飼育されているグリフォンという生き物である。


 その背には人が(またが)っている姿が確認できた。


 恐らくギルドの使いの人だろう。


 俺はその人にわかるように大きく腕を広げて声を出した。


「こっちで~す!!」


 その声がグリフォンの搭乗者に届くまで、約一分ほどかかるのであった。




 ここまでお読みいただきありがとうございました。


 この作品は作者の試験的な意味合いで作成した物語になります。


 プロットもキャラクターも設定も作らずに勢いだけでどこまで書けるのか。


 一日に最大どこまで文字数を書けるのか。


 これに反応してくださる方がどのくらいいるのかといった確認の意味合いで執筆しました。


 途中から、エタろうと思って別作品を書いていましたが、PVペーパービューで閲覧してくださる方がいてくださったために、キリの良いところまで書こうと思いました。


 検索履歴からも外したのに見てくださる方がいて嬉しかったです。


 ありがとうございます。


 文章も途中から書き方を日記風から、普通の会話文に変えたため、読みづらかったと思います。


 申し訳ございません。


 名もなき読者の方へこの場を以てお礼を申し上げます。


 本当に嬉しかったです。


 ありがとうございました。


(ネタバレになりますが、子供の正体は女神マリアンの父が姿を変えたものです。彼は未来を見通せる人なので魔王討伐に向けた布石としてあの幽霊ハウスに必要な人材をそろえようと動いていました。女神アリアンがあまりにも不甲斐ないからと父親としてお節介を焼いた形になりますね)

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